登録 : 2017.02.23 01:13 修正 : 2017.02.23 06:29

 ジェームズ・マティス米国防長官は、安全保障のジレンマを理解しているだろうか。

 もとより、安全保障のジレンマは国際政治学において基本的概念だ。一国が自国と国民の安全を保障するため、軍事力を増強したにもかかわらず、安全を保障できないというジレンマを指す。なぜそのようなジレンマが生まれるのだろうか。その軍事力が防御のために使われる可能性もあるが、攻撃にも用いられるかもしれないからだ。ある国が安全保障に向けて増強した軍事力で、隣国を攻撃するとしても、それを防ぐ手段はない。結局、隣国は自らの軍事力を持って自国の安全を保障するしかない。その結果、安全保障のために軍事力を増強した国は、さらに大きな軍事力を保有した隣国と向き合うことになるのだ。軍事力で安全を保障しようとする限り、抜け出すことのできない永遠なジレンマだ。

 難解な概念ではないが、現実においてこのジレンマから抜け出すのは容易ではない。なぜだろうか。米国の国際政治学者ロバート・ジョビス氏はこのように指摘する。自分の軍事力は全面的に防御のためであって、敵国の軍事力は攻撃のためと信じれば、このジレンマは深まるばかりだと。“自分本位な”考え方を持ち続ける限り、このジレンマから抜け出せないとうことだ。

 安保問題を巡っては、特にこのような考え方が横行している。北朝鮮が今月12日に行った「北極星-2」号ミサイルの試験発射を非難するのはたやすいことだ。韓国や米国、日本からすると、明らかに危険な攻撃用兵器であるからだ。中国が1月20日に試験発射した多弾頭大陸間弾道ミサイルの「東風-5C」も、北極星-2ほど注目を浴びてはいないが、危険なのは同じだ。しかし、米国が2月8日試験発射を実施した大陸間弾道ミサイル「ミニットマン3」に対しても、14日にテストした潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」に対しても、同じような見方はしない。米国のミサイル試験に対するマスコミ報道も見られないし、これを相手側がどう受け止めるかについて質問する人は、ほとんどいない。もちろん、韓国が保有したミサイルや韓国に配備されるTHAAD(高高度防衛ミサイル)も、もっぱら“平和の使徒”として認識されている。

 米国の核ミサイルが北朝鮮にとっては脅威として認識される可能性を認知しなければ、朝鮮半島で安保ジレンマは深まるばかりだ。北朝鮮による軍事力の誇示が韓国にとって脅威と認識されるのと同様に、韓国と米国による軍事力の誇示は北朝鮮にとって脅威として受け止められるかもしれないという相対性を認めなければ、朝鮮半島は安全保障のジレンマから抜け出せない。マティス長官とハン・ミング長官が今月3日に開かれた韓米国防長官会談で、今年3月キーリゾルブ合同軍事演習を強化し、施行することにしたにもかかわらず、懸念の声が上がらないのは、そのような意味で憂わしい。

ソ・ジェジョン日本国際基督教大政治・国際関係学科教授//ハンギョレ新聞社

 安保保障のジレンマという概念を初めて提示したのは、米国政治学者のジョン・ハーツだった。彼は1950年になぜこの概念を持ち出しただろうか。彼は現実主義者だったが、「冷笑的現実主義」に対しては警告を発していた。力で全てを解決しようとしては何も解決できないという警告を。いくら軍事力を増強しても、安全は保障されないという現実に気づいてもらうためだった。しかし、徐々に彼の警告は忘れられ、安全保障のジレンマという概念だけが残った。

 その結果、永遠に不安な現実だけが残されている。韓国と米国が合同軍事演習を強化して実施すれば、韓国の安全が保障されるだろうか。安全保障のジレンマという概念がすでに答えを示しているではないか。その答えを知らない人たちのために、北朝鮮は親切にもすでに予告までしてくれた。「応分の適切な強硬対応」を取ると。軍事力の誇示に対抗する軍事力の誇示である。それによって、韓国も、米国も、北朝鮮も、安全からさらに遠ざかって行くことになるだろう。

 果たしてマティス国防長官は、安全保障のジレンマを理解しているだろうか。

ソ・ジェジョン日本国際基督教大政治・国際関係学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2017-02-22 18:23
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/783770.html 訳H.J(1790字)

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