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[社説]全将兵に特別休暇を“下賜”する大統領府

朴槿恵大統領が6日午後、盆唐ソウル大病院を訪問して8月4日に北朝鮮による非武装地帯(DMZ)地雷爆発で負傷したハ・ジェホン下士(21)を励ましている=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

朴槿恵(パク・クネ)大統領は秋夕(中秋節、9月27日)を機に副士官以下の全将兵に1泊2日の特別休暇を与えることにした。朴大統領は将兵に激励カードとともに農産物で作ったヤックァ(揚げ菓子)などの特製菓子も提供することにしたという。これについて軍の統帥権者である大統領は軍の士気高揚のために下された最も度量の大きい措置として歓迎する声も高い。しかし今回の措置は単にたたえるだけでやりすごすわけには、手段と内容の点から首をかしげたくなることが多い。

 大統領府はインターネットのホームページ「大統領府ニュース」のコーナーで、朴大統領の今回の措置を“下賜”と表現した。下賜というのは「王が臣下に、または上の者が下の者に金品をやること」を意味する言葉だ。今回の特別休暇措置に対する大統領府の本音を正確に表現した言葉である。実際に今回の決定はあるシステムや手続きが働いた結果ではなく、徹底的に朴大統領の「下賜品」として企画された思いつき行事の性格が濃厚だ。朴大統領が全将兵に与えることにした「特別休暇証」はこれをなまなまと示している。「貴下に1泊2日の特別休暇を命じます。大韓民国大統領・朴槿恵」。従来見たことも聞いたこともないこの特別休暇証は、大統領の“恩寵”を将兵に明確に刻みつけようとする仕掛けである。

 大統領が与えるという特製菓子も同様だ。特製菓子を朴大統領が私費をはたいて提供するのとは明らかに違うはずだ。結局は国民が出した税金から、表向きだけ大統領が出すわけだ。「慈愛深い父母の暖かい世話…」などと表現しており、「最高指導者」を持ち上げる北朝鮮をばかにできるものでも決してない。

 特別休暇の根拠も曖昧だ。木箱地雷事件以後、軍の将兵が高度な緊張状態から幾日も苦労したことは理解できないわけではない。しかしつぶさに確かめてみると北朝鮮の地雷挑発に対する初動の対応で軍は様々な弱点をさらけ出したという評価が強い。もし北の挑発にうまく対応したことに対する褒賞ならば、その部隊と違う部隊の将兵に差をつけるのが整合性がとれる。気前よく物品を施すことは簡単だが、ばらまきにも最小限の基準はあるべきだ。

 朴大統領の今回の措置を、あえて総選挙を前にして「軍の青年票の取り込み」だとさげすむ気はない。それでも今回の措置には正常と言えない政治的意味合いがちらついている。もっとも、合法的に票集めする政治行為ができるのは大統領が享受する特権かも知れない。しかし王朝時代を連想させる「下賜政治」を目の当たりにして愉快に思う人はほとんどいないという事だけは大統領府も知ってもらいたい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015/09/21 18:27

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/709745.html 訳T.W

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