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ますます危険になる世界【寄稿】

登録:2026-01-10 09:50 修正:2026-01-10 10:31
ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表
米国のベネズエラ空爆でニコラス・マドゥロ大統領とシリア・フローレス夫人が逮捕された後の4日(現地時間)、ベネズエラのカティア・ラ・マールの破壊された建物の外で2人の女性が内部の残骸を調べる人々をながめている=カティア・ラ・マール/ロイター・聯合ニュース

 2026年1月3日早朝、米国のドナルド・トランプ政権はベネズエラに侵攻し、ニコラス・マドゥロ大統領と夫人を米国本土に連行し、「政権委譲のときまでベネズエラ政府を直接運営する」と表明した。ベネズエラ最高裁は副大統領が大統領権限代行職を遂行するよう決定し、デルシー・ロドリゲス副大統領は「ベネズエラ唯一の大統領はマドゥロ大統領」だとする立場を明言した。

 この事態の今後の展開は、ベネズエラ政府と国民の抵抗の度合い、国連などの国際社会の対応、米国議会の対応と米国国民の世論により決定されるものであり、現在では予測が難しい。しかし、一つだけ明白なことがある。トランプ大統領の意図が何であれ、彼は2026年1月3日に以前とはまったく違う国際秩序の時代への扉を開けてしまったということだ。

 いまや米国政府は、ウクライナを攻撃するロシア政府を非難したり、ロシアとウクライナの休戦を仲裁したりする国際的な大義名分を失った。今後、ロシアがウクライナだけでなく欧州の他国に対して物理的な脅しを加えたとしても、米国はこれをけん制したり仲裁したりするソフトパワーを失った。そのようなことが決して起きないことを願うが、もし中国が台湾を攻撃するとしても、米国政府が国際社会の支持を得て中国をけん制する大義名分は消え去った。

 これまで米国があらゆる国際紛争に介入し、仲裁者の役割を自任できたのは、国際社会が「米国だからこそ、そのような大義名分がある」と認めていたからだ。第2次世界大戦後、米国が時には武力を用いて自国の利益を追求したとしても、国連に基づく世界の平和秩序構築に注いだ一連の努力と意志が認められたからこそ可能だった。しかし、もはやそうではない。

 これは、第2次世界大戦後に作られた国連に基づく秩序が機能停止状態に陥る可能性があることを意味する。米国もロシアも中国も、あからさまな力の行使を自制しつつ国際社会を説得できる最小限の名目を備えられるよう強制した国際システムが、もう機能しなくなったということだ。露骨な力の論理の前では、人類共同の繁栄や相互協力の価値が成立する余地のなかった国際秩序を、われわれは経験したことがある。トランプ大統領のベネズエラ侵攻は、少なくとも第2次世界大戦前の秩序への回帰か、さらに危険な世界への出発を公式化した。

 国連は主権国家の自己決定権を尊重し、集団安全保障体制のもとで世界平和を構築して維持する原理に基づく国際秩序だ。第2次世界大戦後、国連がこのような原理をいかに成功裏に実現したのかについては、さまざまな評価があり得る。米国とソ連が事実上、国際秩序の運営者として存在し、陣営内の対立を時には暴力で、時には協力して管理した冷戦体制は、はたして国連という国際秩序として見せることができるのかについても、意見の相違はある。しかし、第2次世界大戦後の国際秩序が、それ以前に比べるとはるかに少ない戦争と殺傷、より多くの豊かさと協力を作り出す基盤になったことは、データで確認可能な事実だ。

 国連体制が前提とする主権国家の自己決定権とは、その体制が民主主義体制であっても、全体主義体制であっても、体制決定権はその国の国民が持つことを意味する。ベネズエラが自国産の石油を誰に売ろうが、やはりその決定はベネズエラ政府と企業、国民が決める問題だという意味だ。たとえベネズエラの前回の大統領選挙が不正選挙だったとしても、その問題を解決する権利は、その国の国民にあるという意味だ。覇権国家が特定の国の政府を運営して資源を配分し政治までデザインする、そのような体制が、人類にとっていかに多くの戦争と殺傷、窮乏と苦痛を伴ってきたのかを、第2次世界大戦で痛烈に理解して作られた体制が、国連に基づく秩序だった。

 第2次世界大戦前までは、国際秩序はどのような理由であれ、覇権国家に「目をつけられたら死ぬ」体制だった。国際法も大義名分も必要のない力の論理の前では、理由が何かは重要ではない。このような点で、今回もトランプ大統領がなぜベネズエラを侵攻したのかについては、たいして重要ではないかもしれない。重要なのは、どのような理由であれ、覇権国家が攻撃すると決心すれば、これを制御する手段が存在しない時代に突入したということだ。より重要なのは、いまや大韓民国の政治共同体の生存と平和を維持するためには、次元の異なる高次方程式の政治と外交、国防が必要な時代になったということだ。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1238197.html韓国語原文入力:2026-01-06 07:42
訳M.S

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