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[コラム]金正恩印の開放・改革の成否

登録:2015-08-31 23:56 修正:2015-09-01 07:09

 ここ数年間の南北関係を考えると8・25南北合意は突出している。朴槿恵(パク・クネ)大統領は対北朝鮮強硬論を主とする保守政権の政策基調を傷つけない限度内で柔軟性を見せた。 任期を半分越しても南北関係が梗塞している中で対外関係での選択肢を広げなければならない事情が作用したものと見られる。 さらに注目されるのは北朝鮮の意図だ。 4年近い金正恩(キム・ジョンウン)の執権期間で、対南・対外関係を全て含めても、今回ほど目につく合意を成し遂げたことはない。 この合意は状況管理と戦略的目標の追求という側面を合わせ持つ。 合意の波紋は今後の北側の選択に相当な影響を及ぼすだろう。

 北朝鮮は弱者だ。 周囲をいくら見回しても、自身より弱い勢力はいない。 その上、北側から見ればほとんどが敵対的だ。 弱者が自身のアイデンティティに影響を与え続ける強い勢力に対して対応する方法は、大きく分けて四種類ある。 第一は同化(assimilation)だ。 強者を基準として自身を合わせていくことだ。 これは弱者の戦略である場合もあるが、やむを得ずそうなる場合の方が多い。 強者は直間接的に弱者の同化を追求する傾向があるためだ。 第二は抵抗だ。 強者の影響力を排除するという明確な目標を設定し闘争することだ。 これは苦難の道になる他はなく、成功可否もまた不確実だ。 第三は妥協だ。 同化と抵抗の中間だが、ともすれば日和見主義になりかねない。 だが、よく設定された中庸はアイデンティティを維持しつつも強者との協力関係を構築できる現実的な選択でもある。

 最後には異化(dissimilation)または離脱がある。異化は強者が主導する枠組みから抜け出して、新しいアイデンティティを追求するという点で同化と正反対だ。 この試みが成功すれば離脱することになる。 異化はたいてい強者の圧迫を誘導するため抵抗を伴いやすい。 今、世界で異化の代表的な事例がイスラム国(IS)だ。北朝鮮もそれほどではないが異化路線を歩んできた。 北側の政権はこれを「ウリ(我々)式」という言葉で表現する。 北側は核開発がこの道を保障する手段だと主張している。

 小規模共同体ではない国家次元での異化は極めて難しい。 世界全体が複雑にからまった時代に、孤立の中で他の道を探すことなので抵抗より数倍も困難だ。 北朝鮮のように地政学的要衝地にある国ではなおさらだ。 時間が経つほど矛盾が積もる他はない。 現代史で最も根本的な異化事例であるソ連が、結局は体制維持に失敗したのを見ればよく分かる。 従って北側には代案が必要だ。 別の脱出口を探すことが難しい北側は、昨年から南北関係改善を執拗に追求してきた。 その結果が8・25合意だ。

 この合意はそれ自体では長続きできない。 南北交流・協力はある瞬間から国際的な対北朝鮮制裁と衝突し、核問題という障壁にぶつかる。 北側もこれを熟知している。 したがって北側が8・25合意を誠実に追求するならば、路線転換は避けられない。 妥協の道がそれだ。 これは協力の道でもある。 言い換えれば開放だ。 南北関係がさらに大きく多様な開放のテコになることだ。 開放と一式になる内部改革はすでに大きく進行されている。 最近北側に行ってきた外国人は、ほとんどが「北朝鮮の人と体制が世界の他の所と似てきている」と話す。

 北側が開放・改革を試みるのは今回が初めてではない。 金正日(キム・ジョンイル)政権時の2000年代初期には指向性がさらに明確だった。 だが、強固な既得権勢力の壁を突き抜けられずに一進一退を繰り返し、金正日が亡くなると体制まで揺らいだ。 その間に北側には市場経済を味わい外部世界に目を開いた新たな世代が形成された。 いわゆる市場世代だ。 金正恩印の開放・改革は彼らが担っている。

キム・ジソク論説委員 //ハンギョレ新聞社

 北側は今どこに、どのように、どれくらい進むべきか不安に思っている。 私たちは北側が門を一気に開いて出てくるよう支援しなければならない。 韓国にしても妥協と協力の道は常に正しくはなくとも、最も現実的な選択だ。 北側が再び門戸を閉ざせば、予想されるのは現在のイスラム国の姿だ。

キム・ジソク論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/706719.html 韓国語原文入力:2015-08-31 18:39
訳J.S(1857字)

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