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[寄稿]崩れゆく「管理のサムスン」

登録:2015-06-17 10:12 修正:2015-06-17 14:16
サムスンソウル病院のソン・ジェフン院長(右)と医療スタッフが7日午前、ソウル・江南区の同病院中講堂で、MERS関連の現状と対策を発表した後、謝罪している=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 サムスンに致命的な不手際があった。サムスンは中東呼吸器症候群(MERS)の管理に失敗した。サムスンソウル病院は最初に感染者を発見する成果を上げたものの、その後の拡散を防ぐ対応をできなかった。感染者のうち半数ほどがサムスンソウル病院を通して感染したと発表されている。

 サムスンは2011年にグループ戦略企画室出身の経営者をこの病院の社長に任命した。病院経営陣には様々なグループ系列会社の経営専門家たちを送りこんだ。その後、同病院では構造調整作業で効率性を高めるなど、サムスン式経営が進められた。この病院はイ・ジェヨン(サムスン電子)副会長が最近理事長に就任したサムスン生命公益財団が運営している。

 サムスンは経営権継承過程の管理でも失敗した。外国系ヘッジファンドのエリオット・マネジメントは6月4日、サムスン物産の持分7.12%を取得し、第一毛織との合併に反対すると宣言した。これに先立つ5月26日、サムスン物産と第一毛織の理事会は両社の合併を宣言した。

 二つの会社の合併によりイ・ジェヨン副会長は経営権を順調に受け継ぐものと予測されていた。複雑な循環出資関係を整理しながら、結果的にサムスン電子に対する支配権を強化できるというシナリオだった。

 この合併をマスコミは「神の一手」と評した。20年以上の歳月を通して、非上場株式の買い入れやグループ業務の一極集中により株式価値を膨らませるなど、多様な方法で進められた三世継承作業に終止符を打とうとするところだった。ところが外国系ヘッジファンドの登場で、これらすべてが失敗に終わる危機に瀕している。予想できない事態に直面したサムスンは慌てた。証券街では合併が失敗に終わるという予測まで出ている。

 予想できない事態が起きているわけだ。「管理のサムスン」だったはずではなかったか?サムスンがやれば他とはとこか違うと言われてきた。冷血漢のように仕事だけはしっかりこなす、実力ある集団ではなかったのか?だが、最も致命的な二つ、人の生命に関することと自身の経営権でサムスンは動揺している。

 MERS事態の初期、サムスンソウル病院は治外法権地域も同然だった。政府は病院名の公開も病棟封鎖もしないまま、ただ信じて任せた。三世継承過程でのサムスンも同じだ。政府も司法も国民世論も、不法であることを知りながら、結果的に継承過程に目を瞑った。「無労組経営」という法を超えた経営原則を黙認することまでした。

 そのすべての過程を貫くただ一つのキーワードは「実力」だ。病院にしてもサムスンがやればなにか違うと信じた。その上グループが経営陣まで送りこんで特別に管理するというのだから。経営権継承過程に不法性があっても、良い製品を作りたくさんお金を稼げばいいとする反論に、力なく頷いてきた。その底辺には、実力があって仕事ができればある程度の特権を与え、多少傲慢であっても我慢するという社会的情緒がある。実力と仕事の結果が倫理的欠陥を相殺できるという考え方が、韓国社会を支配してきた。

 私たちは今、そんな世相の結果を見せつけられている。サムスンにはもう実力などない。病院、大学、スマートフォン、半導体、金融、それらをみな支配できる集団の存在は可能だ。しかし、そのすべてで実力を持てる集団はないのだ。むしろ一つの領域で得た経験を他の領域に誤って適用し、問題を引き起こしてしまう。MERS事態がその事例となった。利潤最大化に最適化された意志決定基準が病気の治療に適合するはずがない。

 韓国最大の企業集団が、特権が傲慢を呼び、傲慢が無能を呼ぶ悪循環のどろ沼にはまってしまうか心配だ。いずれにしてもその代価は社会全体が払うことになる。

イ・ウォンジェ希望製作所所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-16 20:54

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/696200.html 訳Y.B

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