韓国外交の危機を指摘する声が急速に高まっている。一朝にして国際舞台で孤児になったかのように感じられだしたのだから、無理もない。これまで北東アジアの“仲間外れ”は日本人だと思っていた。尖閣(釣魚島)の領有権などで日本と対立する中国は言うまでもなく、同盟国である米国も安倍晋三首相の修正主義歴史観に批判的だったではないか。
米国で、過去の歴史問題に対する反省を事実上韓日首脳会談の前提条件とした韓国政府の立場を、あまりよく思わない声が聞こえなかったわけではない。しかし、「米国は、私たちの味方」という大勢には支障がないように見えた。外交当局は、「過去」より「未来」に重点をを置くようにといいながら、暗に韓国に照準を合わせた米国高官らの不満が報道される度に、「真意が歪曲された」と焦点ぼかしに余念がなかった。
ところが、安倍首相が先月、日中首脳会談と日米首脳会談を相次いで実現させたことで、急に流れが変わった。習近平主席は、今回も安倍首相に「過去の歴史を直視するように」という警告の言葉を忘れなかったが、昨年11月とは異なり、冷め切った表情ではなかった。渡米した安倍首相は、慰安婦問題などについて謝罪しなかったにもかかわらず、オバマ大統領の歓待を受け、上下両院合同演説でも拍手喝采を受けた。
私たち(韓国)はどうなのか。対日「歴史連帯」まで議論されていた中国とは、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の問題で対立しており、「水も漏らさぬ最高の同盟関係」という米国からは、韓日関係の改善の圧力が高まっている。日米防衛協力指針改正で、日本は米国の盟友であることが再確認されたが、韓国は自衛隊の朝鮮半島進出の可能性を懸念する羽目になった。南北関係は依然として軍事的対立から一歩も出られない状況だ。
国家利益が様々なコードで変奏されている外交舞台で、原則だけを前面に出し柔軟性を見せられなかった結果ではないかと思う。外交は相手があってのことで、一人で勝手にできるものではない。何の現実的な代案もなく「慰安婦問題の解決なくして首脳会談なし」といった頑固な原則に埋没していては、様々な国際社会の利害関係が醸し出す高次方程式を解けないのは自明のことだ。
政府の対北朝鮮政策は、最近柔軟になった感じだ。政府は2010年の5・24措置後初めて先月27日、民間団体の対北朝鮮肥料支援を承認した。 6・15宣言15周年共同行事のための南北接触も承認され、6・15南北共同行事が7年ぶりにソウルで開かれる可能性が高まった。政府は、6カ国協議と関連しても北朝鮮に「条件のない探索的対話」を提案するなど、対話再開のハードルを下げた。
南北関係は、分断という現実の中で私たち(韓国)の外交政策の照尺とされてきた。南北関係が良くなれば、米国、日本、中国など周辺大国への頼み事も減る。南北関係が悪くなると、北朝鮮問題に外交力を消耗しなければならない。最近、米中間の選択の岐路に立たされたTHAAD配備も、米国の韓日関係改善の圧力も、結局は北朝鮮問題に集約される。だから、政府の慎重な変化を歓迎したい。
しかし、南北関係はいつも難しい。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権でも、南北関係は何回もジェットコースターに乗った。北朝鮮は、今回も6・15南北共同行事の合意直後に韓国側を脅かす突出した行動を見せた。北朝鮮は8日と9日、相次いで「南側の艦艇が西海海上境界線を侵犯した」と主張し、照準射撃を警告する通知文を送ってきた。また、潜水艦の弾道弾水中試験発射に成功を公開し、KN-01艦対艦ミサイルも発射した。北朝鮮の意図を速断はできないが、挑発の時点が妙な後味を残す。
軍事挑発にはしっかりした対応が必要である。しかし、南北関係は長期的なプロジェクトでもある。即応的に一喜一憂することではない。分断70年間で積み上げられた不信と反目の壁を突き抜けるためには、長期的かつ戦略的アプローチしかない。
韓国語原文入力:2015-05-10 18:54