珍島のペンモク港は今も絶望と嘆きの海だ。セウォル号惨事の不明者数は半月間、16人のまま全く変わらなかったが、5日になって15人に減った。その上、遺体は沈没地点から40kmも離れたところで見つかった。それだけに流失した不明者は、さらにどこまで増えるだろうか。最後の不明者まで帰ってきてこそ、はじめてこの惨劇に収拾がつく。その時までセウォル号は沈没したままだ。
セウォル号とともに沈没したのは国家に対する信頼だった。数百人の乗客が目の前で海に沈んでいくのにも対応できなかった政府を見て、誰もが‘いったいこれが国家なのか’という根本的な問いを吐いた。あの衝撃のもとで惨事の責任を問うたのが今回の地方選挙だったとしても、選挙期間に入るやセウォル号は選挙の攻防と争いに埋没してしまった。選挙が終わった今、選挙を一つのみそぎ劇にして、セウォル号を忘れてはならない。セウォル号惨事で遺族と全ての国民がこうむった痛みと傷は簡単に忘れることはできないし、忘れてもならない。セウォル号惨事の原因と過程を一つ一つ糾明し、惨劇が再び繰り返されないようにすべきだ。
その出発点は国会の国政調査であろう。セウォル号沈没事故真相究明のための国会国政調査特別委は、初日の2日から与野党の歩調が乱れ、地方選挙が終わって今ようやく協調して動き始めた。10日に予定されている事前調査期間はいくらも残っていないだけに、今からでも調査と準備に万全を期して真相究明に支障が無いようにしなければならない。
特別委がすべき事ははっきりしている。不明者の家族たちがこの日の懇談会で訴えて要請したことそのままだ。何よりも特別委はなぜこのような惨事が起きたのか、聖域を失くして一つ一つ明らかにすべきだ。政治的利害得失を前面に出したり、政争などと口実を掲げて真相究明を怠れば、無関心になった政治が一層大きな不信を買うことになるだろう。被害者支援対策の整備はもちろん、真相究明の結果を反映させた国家災難体系を革新し、システムを構築することも決して疎かにはできない。セウォル号はまだ続いているのだ。