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[パク・ノジャの‘韓国、内と外’] 統一大当たり論の真の意味

登録:2014-02-18 22:39 修正:2014-02-19 01:24
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学

 政治家たちの話に過度に意味を付与することは政治学では禁物だ。政治家たちは有権者が聴きたい話をするケースが非常に多いためだ。 言葉ではなく行動を見てこそ、その政治家の路線が分かる。 オバマは‘変化’を掲げて2回も当選に成功したが、既存の民営医療保険の枠組みを打ち破ることもできない連邦健康保険改革法(オバマケアー)以外に、果たして変化したものがあるか? 韓国の場合は一層深刻で、多くの大統領公約は現実化されることもできず、現実化されることもない童話の本に過ぎない。李明博(イ・ミョンバク)の747公約中、実践に移されたことは一つでもあるか? そうだ、‘7%成長’を公約したことは実は李明博でもなく盧武鉉が最初だった。 有権者を馬鹿者扱いして現実性のない話で得票でもしてみようとする戦略次元では与党も野党も特に差は無い。

 それにもかかわらず、政治家や高級公職者の話は注意深く聴かなければならない。彼らの話の中から、彼らの世界認識のフレームが如実に見えるためだ。 そのような意味で朴槿恵(パク・クネ)の最近の‘統一大当たり論’は意味深長だ。 一面から見れば、多くの政治家たちの発言がそうであるように、ただ空虚な風説にしか聞こえない。 今の時点でいったい何の統一を言えるのか? 漸進的平和統一を語るなら、太陽政策を継続展開していた時にも行く道は果てしなかっただろう。信頼構築、経済協力、軍縮、南北韓を合わせられる過渡期的共同体の基礎を積むなどは、少なくとも数十年の期間を要するだろう。しかし、太陽政策を李明博が一方的に破棄し、朴槿恵は李明博の災難的な対北韓政策の後始末にほとんど何の努力もしていない。 今のまま進むならば、統一それ自体よりは信頼構築プロセスを再稼動させることが急務だ。

 平和統一でないなら、北韓崩壊と米国の支援を受ける韓国による吸収統一シナリオを話したのだろうか? 多くの専門家たちがすでに指摘しているように、このようなシナリオが現実化される可能性は当分極めて小さく、ひょっとして現実化される場合には‘大当たり’ではなく超大型悲劇に終わってしまうだろう。朴槿恵の周囲にいる極右ら特有の希望的思考が作用して、チャン・ソンテク粛清など北韓での一連の事態を‘支配層分裂、支配構造弱化’と誤読して、こういう話が出てきたのかもしれないが、現実は正反対だ。 チャン・ソンテク粛清が見せたものは、北韓の指導部が高位官僚による資源の私有化、すなわち現代版‘豪族’らによる官僚的‘小王国’の出現を十分に阻めるということだけだ。 すなわち、これは北韓崩壊切迫の兆しというよりは、首領主義的1人統治構図が3代に及んでも再び強化されうるという傍証であろう。すると万に一つ、北韓が本当に深刻に揺らぐならば? そして最も現実的なシナリオは、韓国による吸収統一よりは北韓の官民がむしろ更に歓迎する中国の介入であろう。そしてこの介入が韓半島を舞台にする中・米武装葛藤として拡大するならば…韓半島の歴史としては恐らく、日帝強制占領期間や韓国戦争以上の災難になるだろう。

 上で見てきたように、統一大当たり論には一片の根拠も論理性もない。 しかし韓国の経済・政治領土が北韓に拡張されなければならないという要旨のお話が、国内高位関係者たちの口から流れ出続けること自体は重要だ。‘統一大当たり’ならば、国家情報院長ナム・ジェジュンの "祖国を2015年に自由民主主義体制に統一させるために皆一緒に死のう" に比べればやや慎ましい方に属したりもする。 南韓政府の一部言動は、北韓の国家的立場を無視している感じを与え続けている。 例えば、去る韓-ロシア首脳会談で、朴槿恵がロシアと北韓の羅津(ナジン)-ハサン物流協力プロジェクトに参加するという了解覚書にサインした後には 「釜山から北韓とロシアを経て西ヨーロッパへ列車で行けるユーラシア時代」等の話が出てき始めたが、常識的に見て北韓の同意なしには、この‘ユーラシア時代’はただの空虚な夢に過ぎない。 しかし‘ユーラシア時代’を挙論する朴槿恵は、北韓を国際政治の独立的主体として認定しないように、その立場に対する関心さえほとんど見られない。‘我が方の経済領土として飲み込んでしまう’というこのような野望は、いったいどこから出るのか?

 ここで一つ、一般論的な話からしなければならない。 今、大韓民国は模範的新自由主義社会に近いが、新自由主義という経済・社会秩序は自転車と同じだ。 自転車は走り続けていないとすぐに倒れるように、新自由主義はその経済・政治領土を広げ続けることができなければすぐに利潤率の低下、過剰蓄積の危機に陥る。 本来、新自由主義の出発点は高賃金労働と製造業基盤の資本を軸にした伝統的フォーディズム モデルでの利潤率の傾向的低下であった。 1960~70年代にドイツと日本、そして韓国などのアジア新興産業国家が製造業市場に飛び込んで来る上に、最近では中国などの後発走者までが加勢して過剰生産現象が明確になり、原油などエネルギー資源が高騰するのは、かつてのような自国の高賃金労働者を主に雇用する製造業中心モデルがもはや収益を上げられないということを意味する。

 そこで資本が捜し出した突破口は、まさに国内での新自由主義的雇用秩序への転換と国外への拡張、そして金融部門への転換などの三頭立て馬車だ。荒っぽく言えば、中国など低賃金国家に攻め込む核心部と準核心部の資本が、そこで価格の安い消費財を作り、国内で非正規職に転換され事実上実際の所得が下がった相当数の労働者たちがその価格の安い消費財を購入することにより、実質的所得低下を実感しにくくする戦略だ。また、同時に金融業に切り替える核心部資本は、絶えず周辺部投資を通じて超過利潤を模索して、その利潤の一部が税金に当てられ、実質的に貧しくなった大多数の自国民の基礎福祉費用として使われることによって彼らの不満を和らげる、それこそが新自由主義時代の国家と資本の生存方式だ。 一言で言えば‘拡張しなければ死ぬ’ということだ。

 この法則にしたがって、去る25年間 日本と韓国を除く殆ど全ての核心部・準核心部の主要国家らは、彼らが政治力まで行使して現地政権を通じて該当国家の資本に必要な政策を容易に執行させられる一種の新自由主義版新植民地を確保してきた。 例えば米国には、その政府が米国の話を概してよく聞き、その輸出の80%が米国に行き、その海外投資流入の約50%を米国が担当するメキシコがある。 また、1億1000万人程度のメキシコ総人口の約10%に該当する数のメキシコの人々が、米国内で移民者として最も辛く危険な労働に従事して、その送金によりメキシコ庶民人口の相当部分を食べさせる上で、米国に対する従属は草の根次元でも成り立っている。

 ヨーロッパ連合に加入した旧東ヨーロッパ圏の主要国家(チェコ・ポーランド・ハンガリーなど)の場合には、政治的にドイツが圧倒的に主導するヨーロッパ連合の行政機関に服属することになったし、経済的に外資依存経済の典型になってしまった。 最も製造業の発達水準が高かったチェコの場合には、経済全体での外資企業比重は1995~2009年の間に7%から42%まで上がったのだ。 ヨーロッパ全体でも比較的弱いスウェーデンの金融資本にさえも、彼らが銀行株式の約90%程度を保有し金融界を左右し、政府を思いのままに圧迫・調整できる模範的新植民地であるエストニアがある。 スウェーデンの国民総生産は大韓民国の半分にも達しないというのにだ。

 だからこそ韓国支配者としては、単純な資本の浸潤を越えて、現地政府まで思いのままに動かし、韓国資本のための特権的環境を造成できる新自由主義型新植民地が無いためにもがいているため、今後とも北韓に対する植民化の妄想に没頭せざるをえないだろう。 韓国政府が北韓に対して叫ぶ "開放、改革" は、窮極的に我が方にとってのメキシコやチェコ、エストニアになれという注文と同じことだ。 北韓民衆としても、韓国の被支配者としても、このような‘子供帝国主義’を排撃して、平等で民衆本位、北韓住民など弱者本位の統一を成し遂げることは生死がかかった問題だ。韓国資本による北韓の新植民地化は、そのすべての被害者にとって大当たりではなく苦痛だけを意味するためだ。

パク・ノジャ ノルウェー オスロ大教授・韓国学

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/624696.html 韓国語原文入力:2014/02/18 18:28
訳J.S(3625字)

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