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【編集局から】統計、その空しい数字遊び/キム・ヨンベ

登録:2013-06-25 00:15 修正:2013-06-25 07:44
キム・ヨンベ経済部長

 <ハンギョレ>が「権力に踊る統計」というタイトルの企画連載物を載せ始めたのは去る18日からだった。 統計という硬い主題にもかかわらず、今回の連載物には会社内外からかなり大きな反響があった。 批判の俎上に上がった関連部署の反論があったが、国会では記事に扱われた事案を争点化しようとする動きが起きており、統計にまつわる疑わしい情況を知らせる情報提供も多数入ってきている。 会社内では、記事の内容に劣らず、日常的な取材動線を抜け出したちょっと新しい形の取材方式に対して関心を表明した人たちが多かった。

 今回の企画記事の思いつきと構想、取材と掲載までの期間は非常に長かった。 これを主導した現場の記者が経済部署に出入りする時から持っていた問題意識を長く胸の内にしまっておいたものを、日常的な紙面製作の負担から解かれた機会をつかんで経済部署担当記者と数週間にわたる協業を通して結実させたのだ。

 率直に言って、担当記者から一種の調査報道の素材として「統計の歪曲ないしは操作」を考えているという話を初めて聞いた時、それほど興味が湧きはしなかった。 現場記者として経済部署に出入りする時、失業率や分配指標などが私たちの実状をよく反映できていないようだと考えながらも、現実を数値で抽象化した統計の源泉的限界や欠陥と認識していたところであった。 我が国の品格がある程度上がり、いわゆる先進国に分類されるほどの水準にまで発展したという評価を受ける現実なのに、まさか国家の統計をひねったり嘘の統計を作ったりなどする筈があろうかという信頼も持っていた。

 結果は?  国家の統計に対して持っていた私の素朴な信頼と甘い認識の枠組みは、大きく壊れてしまったと打ち明けざるを得なくなった。 それほどに、取材結果には驚くべき事柄がたくさん捕捉されていた。 すでに報道された通り、統計庁は昨年大統領選挙日程を控えて執権勢力に不利な分配指標(家計金融福祉調査結果を通じて高所得層世帯の所得分を補正した「新ジニ係数」)を当初公表した日程通りに発表しなかったことが明らかになって強い疑いを買った。 また、韓-中自由貿易協定(FTA)締結を急ぐ政府の歩みに反対する大規模農民デモを意識して特定農産物の輸入量発表を先送りするなど、統計を権力の意向に合わせようとしたという疑いを買った事例も多数あらわになった。 天下り機関長就任に反対したある公共機関は、特定の統計資料の作成主体から外されるという笑ってすまされない事例もあった。

 統計は国家運営のインフラ(下部構造)と呼ばれる。 国家の現在の状況と発展過程を示しビジョンを設計するのに必須の情報であるという点からだ。 統計(statistics)の語源が「国家(state)と関連する情報収集」から来ているということも同じ脈絡だ。 統計は企業と個人の意思決定と戦略樹立にも重要な基礎情報と見なされる。 誤って作成されたり誤導された統計は社会全般に非常に甚大な弊害をもたらし得るということはここから容易に察することができる。

 統計庁をはじめとする諸機関で作成された一部の数値に歪曲ないし操作の痕跡が見られたからといって、国家の統計全般を信じないというわけには勿論いかないと考える。 現場で基礎統計調査に従事している人たちの 手垢にまみれた多くの統計資料は、依然として大切な国家の資産である筈だ。 ただし、“権力”に対する評価に影響を及ぼす主要な指標を日程調整等を通して有利な方向にいじくる所謂“マッサージ”作業は、いつでも行なわれ得るのだという警戒心は必要と言えよう。 合わせて、作成された統計値をマスコミなど外部で恣意的かつ偏向的に解釈することも自制されるべきだ。

キム・ヨンベ経済部長 kimyb@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/592853.html 韓国語原文入力:2013/06/23 19:12
訳A.K(1692字)

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