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米・イラン3回目の交渉を前に…イランは「ベネズエラとは異なり、約束組手もない」

登録:2026-02-25 07:34 修正:2026-02-25 10:05
中東へ向かっている世界最大級の空母ジェラルド・R・フォードが23日、ギリシャのクレタ島付近に到着した/ロイター・聯合ニュース

チョン・ウィギルのグローバル・パパゴとは?

「パパゴ」は国際公用語のエスペラント語でオウムを意味します。鋭い洞察と豊富な歴史的事例で武装したチョン・ウィギル先任記者がエスペラント語でさえずるみなさんのオウムとなり、国際ニュースの行間をわかりやすく解説します。

■何が起こっているのか?

 米国とイランが戦争と外交的妥協の岐路に立たされている。今年初めにイランで発生した流血の反政府デモを契機として、米国のトランプ政権はイラン指導部に対し、政権交代を意図した軍事攻撃をほのめかして核開発プログラムの放棄を迫っている。イランも平和目的の核開発の権利にこだわりつつ、米国が攻撃すれば中東全域の米軍基地やイスラエルに報復することを宣言している。今月6日から交渉を開始した両国は、26日にジュネーブで戦争と平和の分かれ道となると評される3度目の会談を行う。

Q.米国とイランの対決は、イランの1979年のイスラム革命以来続いてきた。イランの核開発も2002年以降に本格化した。昨日今日にはじまったことでもないのに、年明けから再び激化している背景は?

A.1月8日から9日にかけてピークに達し、数千人の犠牲者が出たと推定されるイラン国内の反政府デモが引き金となった。トランプ大統領はこの時、反政府勢力に「助けが向かっている」、「デモを続け、機関を占拠せよ」、「装填完了」といった公開メッセージを送り、米国の軍事的介入やイラン政権の交代をも示唆した。また、イランと取引するすべての国に対して25%の関税を課すなどの制裁も強めた。

 トランプ政権は昨年6月、ガザ戦争のさなかにイスラエルと協力してイランを攻撃し、イランの核施設を破壊する一方、一部の指導級人物も殺害した。また、イスラエルはガザ戦争を遂行する中で、中東におけるイランの代理勢力であるレバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスを大幅に弱体化させ、シリアのアサド政権が崩壊した。イラン勢力が内外で大きく萎縮している中で流血を伴う大規模な反政府デモが発生したため、トランプ政権はこれまでの宿願だったイランの核開発プログラムの中止、さらには政権交代まで追求しているのだ。トランプは、イランが2015年にオバマ政権と結んだ国際核合意「包括的共同作業計画(JCPOA)」を、政権1期目の2018年5月に一方的に破棄している。これはむしろイランの核開発能力を高めたとの批判を浴びてきた。

 イラン指導部は、流血の反政府デモには米国とイスラエルが介入しているとして、体制転覆工作とみなしている。イラン政府は、死者総数3117人のうち2427人は「軍、警察および無実の市民」であるとし、外部勢力の暴力扇動によって犠牲となったと主張している。実際に確認された軍や警察の死者も500人以上と推定されている。米国が要求する核開発プログラムの放棄は、最終的にイランの体制交代につながるという恐れが強まっている。そのためイランの指導部は、米国と交渉はするが戦争も辞さないとの立場を重ねて表明している。

Q.交渉の現時点での争点は?

A.米国はまず、イランの既存の、そして将来の核能力の完全な除去を望んでいる。関連して、何よりもトランプ政権は、JCPOAの破棄後にイランが確保した純度60%の高濃縮ウラン300~440キロの国外への運び出しを要求している。平和的核開発の権利を主張するイランは当初、この要求を一蹴していたが、濃縮ウランの半分を海外へ運び出し、残るウランの希釈、地域レベルでのウラン濃縮コンソーシアムの創設への参加も逆提案する可能性があるとされる。また、国際原子力機関(IAEA)の査察の強化も容認するとの立場だ。

 米国は医療目的などの「象徴的核濃縮」の許可は合意しうると報道されている。しかし米国の共和党強硬派とイスラエルは、イランが「核濃縮の放棄」とともに「弾道ミサイルの射程制限」、「域内の代理勢力の支援中止」をすべて受け入れないなら、イランを攻撃すべきだとトランプに迫っている。

Q.では、26日からはじまる第3回交渉で妥結できなければ戦争に向かうのか。

A.イラン側は交渉の進展を示唆している。マスード・ペゼシュキアン大統領は22日にXで、「最近の交渉で実質的な提案が交わされ、前向きなシグナルがみられる」と述べた。アッバス・アラグチ外相もこの日のCBSとの会見で、「双方の懸念と利益を受け入れられる要素からなる合意案を準備中」だとして、「木曜日(26日)におそらくジュネーブで再び会う際にこれらの要素を議論し、良い合意文を準備して迅速な合意ができるだろう」と述べた。

 しかし、米国は公には交渉の進展について言及していない。これが最後の交渉だと述べつつ、妥結できなければ攻撃すると脅している。米国の交渉代表を務めるスティーブ・ウィトコフ特使とジャレッド・クシュナー氏はFOXニュースの会見で、イランに許される唯一の状態は「ゼロ濃縮」だとの指針を大統領から受け取っていると明かした。

 トランプは数日以内に「信号用(目標設定型)空爆」をイランに加え、それでも核合意が成立しなければ今年後半に政権を標的とした大規模な空爆を実施することを考えているという。ニューヨーク・タイムズが22日に報じた。すなわち、革命防衛隊や核施設を標的とする1回目の攻撃を昨年6月のようにおこなってから、2回目の大規模攻撃を実施するという二重攻撃の構想だ。交渉を前に交渉力を高めるため、繰り返し攻撃を示唆する最大限の圧迫作戦を駆使しているのだ。

Q.米国はイランを攻撃できるのか。攻撃したらどうなるのか。

A.トランプは連日、軍事攻撃をほのめかしているが、ホワイトハウスと国防総省は慎重な立場どころか反対の立場を取っている。

 18日、ホワイトハウスの状況室でイラン攻撃が議論されるとともに国家安全保障会議、内部対象のブリーフィングなどが行われ、統合参謀本部のダン・ケイン議長ら米軍の指導部はイランに対する長期作戦シナリオの危険性を繰り返し指摘したという。ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなどが一斉に報じた。軍部は、米軍と同盟軍の死傷者発生▽米国と同盟国の迎撃ミサイルなどの防空網の枯渇と弱体化▽米国の軍事力の過剰展開による対中戦力の空白などを懸念。統合参謀本部と国防総省は「これはベネズエラとは異なり、長くて高くつく戦争になる可能性がある」として「短くてクリーンな戦争はない」と警告した。

 ホワイトハウスの補佐官たちも、今年11月の中間選挙を前にした軍事的対決の政治的リスクを指摘しつつ、有権者の最大の関心事である経済と生活費の問題に集中するよう訴えている。ロイター通信が21日に報じた。ロイターによると、ホワイトハウスのある補佐官は、トランプは好戦的な発言を繰り返しているものの、政権内ではイランへの攻撃の強行に対して「統一した支持はない」と語った。

 米国が攻撃を強行すると、中東の米軍に対する報復や中東全域への戦争の拡大、長期戦の可能性が懸念されるからだ。イランのアラグチ外相はCBSとの会見で、「(米国の)軍事力の増強は我々を脅すことはできない」と述べ、米国が攻撃すれば「我々はこの地域の米軍基地を攻撃しなければならない」とこれまでの警告を繰り返した。

Q.イランの準備はどれくらい進んでいるか。対応はどの程度か。

A.米軍がベネズエラでニコラス・マドゥロ大統領の拉致作戦をおこなった際、ベネズエラの防空網はまったく機能しなかった。しかし、イランは中東で最大の中距離弾道ミサイル(MRBM)戦力を保有している。すでに昨年6月にイスラエルや中東の米軍基地などを攻撃している。イランは3千発以上の弾道ミサイルを保有している。うち2千発以上がイスラエルを射程内に収める中・短距離ミサイルだ。アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーンなどの米軍基地も射程圏内にある。

 中東域内のイランの代理勢力であるレバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、イラクのシーア派武装勢力、イエメンのフーシ派が再活性化する可能性があると専門家は警告している。ガザ戦争のさなかにイスラエルによって弱体化され抑えつけられてきたこれら代理勢力は、米国のイラン攻撃が活性化の大義名分ときっかけになるだろう。これらの勢力の同時的な対応は、紅海やペルシャ湾のホルムズ海峡を同時に封鎖・圧迫するなど、中東全域で対決を誘発する可能性がある。米国のある情報当局の元職員はニューヨーク・タイムズに「ベネズエラは孤島のような標的だが、イランは中東全域に広がる蔓(つる)のようなもの」だと例えた。

Q.米国とイスラエルは指導部を精密に狙って除去する斬首作戦の能力を示した。イランの指導部に対しても可能なのか。

A.1979年のイスラム革命以来40年以上維持されてきたイスラム共和国体制も、イスラムの聖職者や議会などの代議制度が結合した統治体制だ。革命防衛隊とバスィージという軍事力によって支えられている。イランの軍事力の主軸となっている革命防衛隊は最近、モザイク防衛戦略を復活させたことを明らかにしたとウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。平時の中央集権的な指揮体制を、戦時には地域や戦区ごとの指揮官が独自に命令を下せる構造に転換したということだ。米国とイスラエルによって最高指導者アリ・ハメネイら指導部が精密攻撃され殺害されても、各地域の戦力が自動的、自律的に機能する戦略だ。

 最高指導者ハメネイは、自身の暗殺に備えて最高安全保障委員会の事務局長アリ・ラリジャニに戦時運営や安全保障調整の権限を与えるとともに、指揮部の継承プランをすでに整備していると、ニューヨーク・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。ハメネイは米国との戦争での殉教を覚悟しているということだ。

 米国の元中東特使はニューヨーク・タイムズに対し、米国がイランを攻撃すれば「初日と最初の週は米国とイスラエルが主導するだろうが、その後数年はイランとその代理勢力が主導する局面になりうる」と警告した。イランとの戦争は「長く、汚く、高コストな衝突」となる可能性が高いとの結論だ。その過程でイランの体制が崩壊する可能性もあるが、代償としてリビアでのカダフィ政権の崩壊時よりもはるかに大きな混乱や内戦、無政府状態が懸念される。

Q.米国とイスラエルは昨年6月にイランを攻撃したが、イランの反撃は戦争拡大には至らなかった。今回、米国は2003年のイラク戦争以降で最大の軍事力を展開している。このような戦力を構築し、戦意を示す米国に、イランは対抗できるのか。

A.あの時とは異なる。今年初めに流血の反政府デモを経験したイラン指導部は今、体制維持に危機意識を抱いている。米国から攻撃されれば、今回はかつてとは異なり、限定的な報復攻撃にとどまらないと繰り返し明言している。実際にその可能性は高い。全力で報復することこそ内部の引き締めに有利だと考えている。

 イランは昨年6月13日にイスラエルの大規模な空爆を受け、即座に大量の弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローンでイスラエル本土に報復攻撃を加えた。またイランは、6月22日に米国がフォルド、ナタンズ、イスファハンの3つの核施設をB2爆撃機とトマホークで精密攻撃したことを受け、翌日カタールのアル・ウデイド米軍基地をミサイルで報復攻撃した。しかし、イランの報復攻撃は限定的だった。イランと米国・イスラエルとの間で戦争拡大は避けようという暗黙の了解があっため、互いの体面を保つための一種の「約束組手」だとまで言われた。イランは、2024年4月にダマスカス駐在のイランの外交公館がイスラエルによって空爆され、革命防衛隊の2人の司令官らが殺害された際、報復攻撃に先立って近隣諸国に事前に通知して備えさせた。イランは、イスラエルがテヘランを訪問中のハマスの指導者イスマイル・ハニヤを暗殺した事件などへの報復として、2024年10月にイスラエル本土をミサイル攻撃した際にも、戦争拡大を避けるため限定的な攻撃にどどめた。

 昨年6月に米国とイスラエルはイランのミサイルやドローンによる攻撃から防衛するための迎撃網を大きく消耗したうえ、軍や情報機関が攻撃を受けた。この時、米国が保有していたTHAAD(終末高高度防衛)ミサイルシステムの25%を消耗している。米国に空爆されたにもかかわらず、イランの核能力は失われておらず、イランはミサイル能力を回復し、防衛網も強化したようにみえる。

 何よりも米国は今回、イラク戦争以降に確立された「パウエル・ドクトリン」、すなわち「戦争や攻撃の際には目標と出口を明確にしておかなければならない」という原則を満たしていない。このことは、イランを攻撃した場合、イランの体制を崩壊させたとしても、第2のイラクあるいは第2のリビアを生むという大災害を引き起こしてしまうことを懸念させるものだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1246244.html韓国語原文入力:2026-02-24 10:30
訳D.K

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