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トランプ氏のグリーンランド所有、脅しではなく本気だった…「NATO終末の危機」

登録:2026-01-10 06:56 修正:2026-01-10 08:49
6日、米ワシントンD.C.のケネディセンターで開かれた共和党下院議員の年次政策会議で、ドナルド・トランプ米大統領が演説している=ワシントン/ロイター・聯合ニュース

 「トランプ大統領がグリーンランドを手に入れる意向を明らかにしたのは初めてではなく、第1次トランプ政権時代、ヨーロッパではトランプ大統領のそのような発言が嘲笑の対象だった。ところが、ベネズエラへの軍事作戦以降、もはや誰も笑えなくなった」(BBC)

 ドナルド・トランプ米大統領の「グリーンランドへの執着」がただならぬ気配を漂わせている。1期目の政権時代から虎視眈々とグリーンランドを狙ってきたトランプ大統領が、ベネズエラの大統領を拿捕(だほ)した軍事作戦直後、「グリーンランドは(米国にとって)戦略的に必要だ」(4日)と宣言したのは、意味深長な衝撃を与えた。ホワイトハウスの官僚らは、買い入れを通り越して軍事力動員も選択肢にあると発言するなど、NATO同盟国の領土を奪おうとする思惑をあらわにしている。デンマークは米国がグリーンランドを占領した場合「NATO同盟の終末」を意味すると警告した。米国が掲げた力の論理を前にして、第2次世界大戦後に構築された国際社会秩序が崩れる恐れがあるという懸念の声があがっている。

米国のJ・D・バンス副大統領は昨年3月28日、グリーンランドにある米宇宙軍所属のピトゥフィク宇宙基地を訪問した/ロイター・聯合ニュース

■北極航路の中核…地政学的戦略の要衝地

 北極海と大西洋の要衝に位置するデンマークの自治領グリーンランドは216万平方メートルの資源豊富な島だが、領土の84%が氷で覆われている。約5万6000人の住民が暮らしており、このうち90%は先住民のイヌイット系。ここには私有地という概念が存在せず、土地を売買することはできない。住民の多くは漁業で生計を立てている。グリーンランドが特別な理由は、ロシアと欧州、米国の間にあるという地政学的位置、豊富な天然資源、そして重要さが増してきた北極航路であるからだ。

 グリーンランドは北極と大西洋をつなぐ要衝に位置しており、安全保障と貿易のすべての面で重要だ。例えば、ロシアが弾道ミサイルを発射する場合、最短経路はグリーンランドと北極上空を通過する。そのため、米国は冷戦時期からグリーンランドを防衛の要衝地として活用しており、今後トランプ政権が構想するミサイル防衛体系「ゴールデンドーム」にもこの地域の監視資産が欠かせない。

 それだけでなく、グリーンランドと近隣海域には石油、ガス、レアアースなど豊富な天然資源が埋まっている。レアアースは電気自動車、風力タービン、軍需装備に欠かせない資源で、中国がレアアース産業を事実上掌握している中、米国が戦略的確保に乗り出した対象でもある。険しい自然環境と基盤施設不足、環境規制などにより開発は容易ではないが、気候の変化で北極圏の氷が溶けており、これからはよりアクセスしやすくなるとみられている。マイク・ワルツ元国家安保補佐官(現米国国連大使)は2024年1月、FOXニュースに出演した当時「グリーンランドに対するトランプの執着はレアメタルと天然資源確保のため」だと述べた。

 海上通行を妨げていた氷河が溶けはじめ、アジアと欧州をつなぐ最短海上運送路としての役割も脚光を浴びている。中国は北極航路を通じて「北極シルクロード」を開拓するという目標を掲げている。すなわち、米国、中国、ロシアいずれも北極地域をめぐる競争に飛び込んだわけだ。

グリーンランドの地政学的位置=CNN放送画面よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

■米国、すでにグリーンランドで軍事活動展開

 トランプ大統領は中国とロシアを取り上げ「国家安全保障の側面で」グリーンランドが必要だと強調するが、米国が自国防衛のためにグリーンランドを完全に所有すべき理由はない。米国はすでに1943年から運営中のピトゥフィク宇宙基地を通じてグリーンランドに駐留しているためだ。1951年の米国とデンマーク間の防衛協定によって、米国はこの基地を引き続き使用することができ、必要に応じて兵力をさらに派遣することもできる。ここには北極を通るミサイルを追跡できる第12宇宙警報飛行隊などが駐留している。

 米国とデンマーク間の防衛協定のルーツは第二次世界大戦に遡る。当時、デンマークはナチス・ドイツに占領された状態だった。故国と連絡が途絶えた状況でワシントンに駐在していたデンマーク大使が、米国とグリーンランドの防衛協定を締結した。ナチスがグリーンランドを米国への飛び石として利用するかもしれないという懸念があったためだ。ドイツ軍はすでに島の東側に小規模基地を設置していた状態だった。米軍は結局、ドイツ軍を追い出し、グリーンランドに少なくとも12カ所の軍施設を建設した。第二次世界大戦の終戦後、米国は他の基地を閉鎖したが、北極上空を越えてくるミサイルを監視できるピトゥフィク宇宙基地を残した。

■「米国、グリーンランドを手に入れるのに30分で十分」との報道も

 一方、デンマーク軍の駐留兵力は小規模だ。特殊部隊を含め、駐留しているのは数百人に過ぎない。デンマーク政府は基地施設を改善し監視を強化する方針を示したが、米国メディアの「ポリティコ」などは米軍が武力を使った場合、グリーンランドを30分以内に制圧できると報道した。

 デンマーク側は、米国があえて所有しなくても十分に戦略的利点を享受できるとし、米国の主張に当惑しているという反応だ。コペンハーゲン所在のデンマーク国際研究所のミケル・ルンゲ・オレセン上級研究員は、米経済誌「フォーチュン」のインタビューで、「グリーンランド防衛協定は非常に寛大で開放的」だとし、「米国はこの合意の下で、想像できるほぼすべての安保目標を達成できる」と述べた。デンマーク国防アナリストのピーター・エルンストベド・ラスムセン氏もニューヨーク・タイムズ紙に「軍事作戦変更時にデンマークやグリーンランドと協議しなければならないという条項は、形式的な手続きに過ぎない」とし、「デンマークに基地、飛行場、港を建設していると通知するだけで良い」と語った。もしトランプ大統領の意図が本当に安全保障の強化にあるならば、いつでも、今も直ちにその目的を果たせるという意味だ。

2025年3月11日、グリーンランドのヌーク沖に溶けた氷河が浮かんでいる。米ホワイトハウスは6日、ドナルド・トランプ米大統領がグリーンランドを手に入れるために軍事行動を含めさまざまな選択肢を検討していると述べた/AFP・聯合ニュース

■目標は所有権…同盟の欧州を狙うトランプ大統領

 欧州はウクライナとロシアの終戦計画が論議されている状況の中で、米国を刺激しうる対応は控えている様子だ。6日、6カ国だけがデンマークと共同声明を発表し、北極の安全保障は米国を含めNATO同盟国が共同で達成すべき問題であり、デンマークとグリーンランドの問題はその国で決定する問題だと主張した。欧州連合全体加盟国(27カ国)揃っての声明はまだ出ていない。また、批判が高まる中でも、トランプ大統領を直接的に非難する発言は控えている。

 一方、米国は連日、さらに断固たる発言を行っている。J・D・バンス副大統領は7日、FOXニュースのインタビューで、「もしロシアや中国が米大陸や欧州に向けて核ミサイルを発射するなら、グリーンランドはそのミサイル防衛において非常に重要な役割を果たす」とし、「欧州、特にデンマーク人がグリーンランドの安全を保障する役割を果たしてきたのかを問うなら、その答えは『そうではない』ということだ」と述べ、NATOを正面から指摘した。「トランプ大統領の発言を真剣に受け止めよ」とも警告した。トランプ大統領は8日付のニューヨーク・タイムズ紙で公開されたインタビューで、「(グリーンランドの)所有権が重要だ」と述べ、軍基地だけでは十分ではなく、グリーンランド全体を所有する意向があることを明確にした。グリーンランド獲得とNATO維持の中でどちらがより重要な優先順位かという質問に対し、トランプ大統領は明確な答弁を避けつつ、「(二つの中で一つを)選択しなければならないこともありうる」ことを示唆した。さらに「(私を止めるのに)国際法はいらない」とも述べた。

 BBCは、安全保障を米国に依存してきた状況でトランプ大統領に物申せない欧州の問題点が再び明らかになったと指摘した。ジュリアン・スミス元駐NATO米国大使は「欧州は自制を求めることを越え、非常計画を樹立しなければならない」とし、「EUを分裂させるだけでなく、NATOの存立危機になりうる状況」だと警告した。

トランプ大統領の息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏が搭乗した航空機が2025年1月7日、グリーンランドのヌークに到着している。トランプ大統領は、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の逮捕作戦の成功後、デンマークの自治領グリーンランドに対する野心を重ねて示している/AFP・聯合ニュース
チョン・ユギョン記者edge@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1238935.html韓国語原文入力:2026-01-09 17:50
訳H.J

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