「グリーンランドの防衛を強化するために、デンマークは最近『犬ぞり』1台を追加した。彼らはこれを非常に大きな行動だと考えている」(4日(現地時間)米国のドナルド・トランプ大統領発言)
トランプ政権は、米国がデンマーク領グリーンランドを占領すべき理由として「安全保障」を挙げる。ホワイトハウスは6日、キャロライン・レビット報道官名義の声明を発表し、「トランプ大統領は、グリーンランドが米国の安全保障の最優先順位にあると考えている」と明らかにした。トランプ大統領は4日、記者団に「現在のグリーンランドはロシアと中国の船舶に囲まれている」として、「デンマークは(防衛を)果たせないだろう」と述べたことがある。グリーンランドは本当に「敵性国家」の脅威にさらされているのだろうか。
まず、ロシアと中国がグリーンランド周辺で軍事プレゼンスを強めているのは事実だ。フランス紙「フィガロ」によると、デンマークの情報機関である国防情報局は、先月公開した年次安全保障現状報告書で「ロシアの原子力潜水艦の大部分が北極圏の基地に配備されている」として、「(ロシアは)この地域での現在の戦力は不十分だと判断し、再武装計画を立てている」と指摘した。ロシアは艦隊の機動性を高めるため、砕氷船も配備した。
国防情報局は、中国も同様に「この地域の海上航路と天然資源へのアプローチを望んでいる」として、中国が昨年、史上初めて北極海に砕氷船3隻を配備したことを報告書で指摘した。地球温暖化によって北極海の氷が溶けて新しい航路が開かれたことで、ロシアと中国が航路開拓などに目をつけているということだ。
デンマーク軍がグリーンランド防衛に「犬ぞり」を使用するというトランプ大統領の主張も事実だ。トランプ大統領が大統領就任前の2024年12月、グリーンランドを「購入したい」と発言すると、数時間後、デンマークはグリーンランドに「そり部隊」を2部隊追加することで対抗したことがある。
デンマーク海軍は、グリーンランドの凍土をスノーモービルや雪上バイク、軽飛行機などで偵察する「シリウス巡察隊」を運用していると、フィガロが報じた。この部隊は特殊訓練を受けた要員12人で構成され、26カ月ごとに交代し、グリーンランドで任務に当たる。
しかし、グリーンランドの安全保障は、トランプ大統領が主張するような「風前の灯火」ではないというのが、大方の意見だ。ロシアと中国が経済的利権などを狙い、北極圏全体に関心を高めているのは事実だが、グリーンランドを脅かしたり占領しようとしたりする動きはないという。フィガロは「北極は広大な地域であり、現時点ではグリーンランド周辺で、これらの国の船舶の活動が特に増加したという兆候はない」と指摘した。
グリーンランド出身でデンマークの国会議員であるアーヤ・チェムニッツ議員も「ドナルド・トランプは嘘をまき散らしている。これは強く憂慮すべきことだ」と述べた。
しかも、米国はグリーンランドを自国領にすることなく、この地域の安全保障に関与できる。米国は1951年にデンマークと防衛協定を結び、グリーンランドの空軍基地に米軍を駐留させている。英国BBCによると、冷戦時代にはこの基地に最大1万人の米軍が配置され、現在は約200人がいる。
フランス紙「ル・モンド」は社説で「(グリーンランドの安全保障が不安なのであれば)グリーンランド人の主権とデンマークとの結びつきを傷つけることなく、米国により大きな裁量権を与える方向で協定を改正すればよい」と指摘した。
デンマークも同様に、グリーンランドを防衛するための投資を増やした。デンマークはそり部隊に加え、ミサイル・重機関銃などで武装した多目的護衛艦4隻、哨戒艦3隻などをグリーンランド海域に配備した。昨年1月には18億ユーロを投じ、新型艦船3隻や長距離ドローンなどを導入することを決め、昨年10月には37億ユーロを追加投入し、緊急作戦能力を備えた北極専門部隊も創設すると発表した。
むしろ、米国がNATOの同盟国であるデンマークを攻撃するとして圧力をかけ、西側諸国の安全保障に亀裂を生じさせているという指摘もある。1949年のNATO創設後、NATO加盟国が他の加盟国を侵攻したことは一度もなかった。
これに対し、英国・フランス・ドイツ・デンマークなど欧州7カ国は6日に共同声明を出し、「極地の安全保障は、米国をはじめとする北大西洋条約機構(NATO)の同盟国の結束を通じて、集団的になされる必要がある」として、トランプ大統領に反論した。これらの国々は「グリーンランドはグリーンランド人のものだ。デンマークとグリーンランドだけが、デンマークとグリーンランドに関する問題を決めることができる」と主張した。