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マドゥロ大統領の麻薬起訴状の裏側…石油紛争がトランプ大統領の「侵攻ボタン」

登録:2026-01-05 06:45 修正:2026-01-05 07:41
石油を取り戻すとして「賠償」に繰り返し言及 
70年代の石油国有化の際、米国企業が打撃
2016年11月7日、米国共和党のドナルド・トランプ大統領候補がペンシルベニア州スクラントンで開かれた選挙遊説演説で、親指と人差し指で円を作ってみせている/ロイター・聯合ニュース

 米国のドナルド・トランプ政権は3日にベネズエラに侵攻しベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束した理由として、マドゥロ大統領が「米国に流入する麻薬密売組織の背後」にいる点と、ベネズエラが「米国の石油を盗んだ」点を挙げた。マドゥロ政権が拘束されたベネズエラの犯罪組織のメンバーを解放し米国に送り込んでいるということも、繰り返し強調した。

 この日、米国司法省が公開したマドゥロ大統領らに対する起訴状によると、同大統領は麻薬テロリズムおよび米国にコカインを密輸した陰謀の疑いが持たれている。起訴状では、この日ともに米国に移送されたマドゥロ大統領の夫人をはじめ、マドゥロ大統領の息子とベネズエラ政府高官2人、昨年米国が外国のテロ組織に指定したギャング組織「トレン・デ・アラグア」の指導者として知られている人物も共犯として名指しされている。

■マドゥロ大統領に「コカイン密輸の陰謀」容疑

 起訴状によると、マドゥロ大統領らは1999年ごろから数十年間にわたり「太陽のカルテル」などと共謀し、コカインを米国に大量に密輸することに関与した疑い、すなわち麻薬テロ共謀の容疑をかけられている。ベネズエラ政府と軍を利用して彼らを支援したことも明示されている。彼らはコカイン輸出を共謀した疑いと、これを遂行する過程で機関銃や破壊装置を用いたり、共謀したりした疑いも持たれている。

 同じ理由でトランプ政権は、昨年9月初めからカリブ海と東太平洋の公海上で麻薬を運搬していると推定される小型船舶を爆沈させ、110人以上が死亡した。トランプ政権は、太陽のカルテルなどが米国に密輸する麻薬によって多くの米国人が死亡しているとして、これらを「敵」とみなし、攻撃を正当化した。国際法違反だとする指摘が相次いだ。

 この日もトランプ大統領は記者会見で、「われわれは海から流入する97%の麻薬を除去した」として、「大部分はベネズエラというところから来ている」と述べたが、米国内では以前からこの主張の弱点が指摘されている。

米国のドナルド・トランプ大統領が3日(現地時間)、フロリダのパームビーチにあるマール・ア・ラーゴの邸宅でベネズエラに対する米軍の軍事作戦後に記者会見をしている=パームビーチ/AFP・聯合ニュース

 昨年9月の米国疾病予防管理センター(CDC)の資料によると、2023年の米国内における薬物過剰摂取による死亡者数10万5007人のうち、70%(7万383人)が合成オピオイド、特にフェンタニルを過剰摂取して死亡したとされる。コカインによる死亡は同期間中に2万9449件だった。生産地と流入経路についても、ベネズエラとの関連は薄い。米国政府はこれに先立ち、米国に流入したフェンタニルのほぼすべてがメキシコで生産され、化学物質の原料は中国が主な供給源だと明かしている。米国税関国境取締局(CBP)も、フェンタニルの約96%がメキシコ側の南部国境で摘発されたと発表した。

■コカインの90%がコロンビア産…流入経路はメキシコ

 マドゥロ大統領が数十年にわたり関与したとされるコカインの流入と生産も、ベネズエラとの関連性は高くはない。米国麻薬取締局(DEA)が2024年12月に発表したファクトシートにも、コカインはコロンビア、ペルー、ボリビアで栽培され、米国に到達するコカインの約90%はコロンビアで生産されると記されている。これも、ほとんどがメキシコ経由で流入することが明記されている。ニューヨーク・タイムズは、米国に向かうコカインの大部分がベネズエラ近海のカリブ海ではなく太平洋を通じて輸送されることを、コロンビア、米国、国連の資料を引用して報じた。ベネズエラを通じても一部のコカインが運搬されているものの、専門家らはそれも米国ではなく欧州に向かうと分析している。

 さらに起訴状には、2020年時点でベネズエラを経由して流通するコカインは年間200~250トンと記されているが、これは世界の年間コカイン流通量の10~13%程度にすぎない。一方、2018年にグアテマラを経由したコカインは1400トンと推定されている。

■錯綜する石油訴訟戦の20年

 米国がマドゥロ大統領の拉致について主張する別の主な理由は、ベネズエラが米国から奪った石油を取り戻すというものだ。

 トランプ大統領はこの日の記者会見で「製油会社が(ベネズエラに)入るだろう(…)われわれは、われわれがもっと前に返還されるべきだった石油を取り戻すだろう」と述べた。さらに繰り返し、ベネズエラから「賠償を受ける」とも述べた。ピート・ヘグセス国防長官も、この日の記者会見で「(トランプ大統領は、ベネズエラが)われわれから盗んだ石油を取り戻すことに真剣だ」と強調した。

 米国のこのような主張は、ベネズエラが1970年代に石油産業を国有化する過程で、当時ベネズエラに進出していた米国企業のエクソンおよびモービル(1999年に合併)と、1984年にシェブロンとなったガルフ・オイルなどが打撃を受けたことと関係している。ベネズエラ政府は当時、これらの企業に約10万ドルを補償すると約束したが、実施には至らなかった。その後、ウゴ・チャベス社会主義政権が2007年にベネズエラ最大の石油埋蔵地であるオリノコベルトの事業権まで国有化すると、エクソンモービルとコノコフィリップスは反発し、撤退後に国際訴訟戦に突入した。一方、ベネズエラに現在も残っている唯一の米国石油企業であるシェブロンなど、いくつかの企業は残った。

 その後、この問題は国際紛争解決・仲裁機関に移管し、国際商工会議所は2012年、エクソンモービルに9億800万ドルを、2018年にはコノコフィリップスに20億ドルの賠償金をベネズエラ国営石油会社(PDVSA)が支払うよう求める判決を下した。世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)も2014年と2019年、両社に16億ドルと87億ドルの賠償金を支払うようベネズエラ政府に要求した。米国による経済制裁や腐敗などで経済難に苦しめられたベネズエラは、現在もこの額を全額支払えていない。

 かつては一日300万~400万バレルを輸出していたベネズエラは、マドゥロ政権のもとで一日90万バレル程度を輸出していると推測されている。

キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1237917.html韓国語原文入力:2026-01-04 20:19
訳M.S

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