「ここから中部のデイル・アルバラまで車で行くのに5000シェケル(1500ドル・約22万円)がかかり、テントを借りるにも同じ費用がかかる。手に負えない金額だ。避難に出る方法がない」
イスラエル軍が地上軍を投入したパレスチナのガザ地区最大の都市・ガザ市に残った住民アブダラさん(32)はこのように語った。「タイムズ・オブ・イスラエル」が16日付で報じた。同紙は、避難費用と物資不足、安全などの問題でイスラエル軍の無慈悲な攻撃にもかかわらず、数十万人のパレスチナ人がガザ市から離れられない状況にあると報道した。国連人道問題調整事務所(OCHA)が10日に発表した資料でも、ガザ地区から他の地域に移動するのに1200ドル(17万6千円)、障害者がいる家族は1700ドル(25万ウォン)かかるという状況が報告された。
イスラエル軍が指示した通り南に避難したが、テントと泊まる所がなく、再びガザ市に戻るケースも少なくない。今月7日、ガザ市から中部地域に避難したカリム・ジュデさんは、「(イスラエルはガザ市の住民)百万人に避難しろと言ったが、テントすら受け取ることができない」とし、「テントを張る最も小さな空間にも、月に2000シェケル(600ドル)を出せと言われた」と語った。ガザ市に残ったアナス・アラファトさんは、周辺の30世帯が南に行ったが、このうち5、6家族が再び戻ってきたと同紙に語った。OCHAは移住現場で生活空間が1人当たり平均0.5平方メートルで、国際基準上難民キャンプで提供するように定めた3.5平方メートルにはるかに及ばないと述べた。
ガザ市を離れた避難民の規模に対する推定も、イスラエル軍は37万人、国連は22万人と大きく食い違っている。
ガザ市を離れても安全ではないという点も避難をためらう理由だ。ガザ市に残ったアブダラさんは「避難は最後の手段だ。(イスラエル軍が指定した)『人道主義区域』にもハマスがいて、イスラエル軍はこれを理由にここも爆撃している」と話した。
一方、イスラエル警察はベンヤミン・ネタニヤフ首相の私邸近くで前日夜から徹夜座り込みをしていた人質家族などのデモ隊を解散させた。ハマスに人質として捕まったガイ・ギルボアダラさんの母親は、ハマスが自分の息子を地下トンネルから引きずり出し、ガザ市の地上の住宅とテントに移動させたとし、イスラエル軍のガザ市占領作戦を中断するよう要請した。
イスラエルは同日、162師団と98師団の2師団が、戦車を前面に立ててガザ市での地上作戦を展開した。ネタニヤフ首相は16日の記者会見で「ハマスが言ったように、彼らは我々の人質を人間の盾として使っている」とし、「ハマス指導者たちに避難所はないだろう」と述べた。
ネタニヤフ首相は前日、ドナルド・トランプ大統領が自分を29日にホワイトハウスに招待したと明らかにした。これが実現した場合、1月のトランプ大統領就任後4回目の首脳会談となる。ネタニヤフ首相は26日、米ニューヨークで開かれる国連総会で演説する予定だ。