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日本、米国への投資5500億ドルで覚書…韓国は?

登録:2025-09-06 07:01 修正:2025-09-06 07:57
日本、依然として「ほとんどが融資と保証…変わっていない」 
米国「5500億ドル投資で合意、米国が投資先を選定」 
3500億ドルのうち実質的な負担は5%のみという韓国に青信号になるか
ハワード・ラトニック米商務長官は27日、CNBCとの会見で、韓国と日本が約束した対米投資で米国内の産業復興財源を設けると述べた=CNBC放送画面よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 韓国が米国との相互関税交渉で約束した3500億ドル(約51兆6千億円)の対米投資などはどうなるだろうか。

 米国が日本と合意した相互関税などの貿易合意を公式に履行するための大統領令に署名したことで、対米投資など韓米間の関税交渉履行に再び関心が集まっている。

 ドナルド・トランプ米大統領は4日、これまで課していた関税が15%未満の日本製品の場合、従来の関税と相互関税を合算した関税率が最大15%を超えないようにするなどの大統領令に署名した。これは、これまで相互関税などの貿易合意で日本側が主張してきた内容だ。

 両国は7月22日、米国が日本に対して発表した25%の相互関税を15%に下げるなどの貿易合意を発表した。ところが、米国側が先月7日の発効に先立ち公開した大統領令付属書には、日本の場合、従来の関税に15%の相互関税が加えられるという内容が含まれ、議論になった。日本は従来の関税を含めて15%で合意されたと強く対抗してきた。結局、米国に輸入される日本自動車を含めて15%の関税適用が決まった。

 日本が米国に約束した5500億ドル(約80兆円)の投資については、大統領令に「日本政府が米国に5500億ドルを投資することで合意した。このような投資は米国政府が(投資先を)選ぶ」と規定した。

 日本の5500億ドルの対米投資と関連して、日本側はこれまで融資と保証が含まれた金額なので、新規で発生する対米直接投資額は1〜2%に過ぎないと説明してきた。一方、米国側は5500億ドル全額が新たに発生するという式の主張を展開してきた。

 この日の大統領令の署名発表後、 赤沢亮正経済再生担当相は日本のマスコミとの会見で、5500億ドルの対米投資について「7月22日の合意はその後も変わっていない」とし「投資、融資、融資保証を上限5500億ドルで提供するというのは何も変わっていない」と再確認した。追加で投資されるのは1〜2%に過ぎないという従来の主張を守ったのだ。

 ただし、赤沢経済再生相は「投資先は米国が決める」という方針に関して、「日本は米国の特別なパートナーとして、(投資を通じて日本にも)利益になる経済安保上重要な分野のサプライチェーンを米国内に構築しようとするもの」だとし、「そのような点で、(投資先の決定に)米国政府、特にトランプ大統領の意志が強く反映されるのは当然のこと」だと説明した。

 赤沢経済再生相とハワード・ラトニック米商務長官は同日、日本の対米投資に関する了解覚書に署名した。

 NHKの報道によると、了解覚書には「経済・国家安全保障上の利益を促進するため、日本が、半導体や医薬品、重要鉱物、造船やエネルギー、AI(人工知能)といった分野で5500億ドルをアメリカに投資することが最善の利益だと認識する」という内容が含まれた。投資先は、米商務長官が議長を務める投資委員会が推薦し、大統領が選ぶことになっている。投資はトランプ大統領の任期中の2029年1月19日まで随時行われ、覚書が誠実に履行される間は両国が合意した関税率を引き上げない内容も含まれたと、NHKは報じた。投資で発生する利益については一定額を両国が50%ずつ分配した後、米国に90%、日本に10%分配する形になっているという。

 これまで交渉が最終的にまとまらなかったのは、米国側が日本に5500億ドルの投資に対する詳細を文書化することを要求したためとされている。問題はこの日公開された内容だけを見ると、依然として日本側は「直接出資金はごく一部に過ぎない」という主張する一方を、米国は「日本が米国に5500億ドルを投資することにした」という主張を繰り返し、実際の投資金をめぐる合意がどのようになされたのか不明な点にある。双方とも今と同様に、自分に有利な部分だけを浮き彫りにし、解釈の領域を残しているとみることもできる。

 これまで韓国も3500億ドルの対米投資は日本同様に融資と保証が含まれたもので、新規で追加される直接対米投資額は5%程度だと主張してきた。だが、米国側は3500億ドル全額を自分たちが決定できると主張し、李在明(イ・ジェミョン)大統領の最近の米国訪問を控えて大きな争点になった。

 これに先立ち、ラトニック米商務長官は8月27日、CNBCとのインタビューで、産業復興の財源調達案について、「国富ファンドはない。米国人の税金を投入するわけではない」とし、「日本の資金、韓国の資金、そして他の国々の資金で国家経済安保基金が作られる」と述べた。さらに「彼らは米国のインフラ構築のために私たちに資金を提供する」と述べた。

 韓国が約束した3500億ドルと日本が約束した5500億ドルの対米投資で、産業復興の財源を調達すると明らかにしたのだ。対米投資額の資金の使途と運用方式などを米国に一任する事実上の「白紙小切手」を要求したということだ。このため、李在明大統領の訪米前後の韓国と米国の貿易交渉は膠着状態に陥った。

 対米投資をめぐり韓国と同じ立場である日本が了解覚書という形でひとまず峠を越えたわけだが、韓国も同様の結果が得られるものとみられる。韓国は3500億ドル規模の「金融パッケージ」のほとんどが融資と保証で構成され、直接投資は5%未満だと説明してきた。また、造船1500億ドルを含め、半導体やAIなど戦略産業支援に使われると説明してきた。造船分野の1500億ドルを除いた2000億ドルの投資ファンドの大半が、株主資本投資(Equity・企業に資金を出資し、対価として株式を取得すること)よりは融資(Loan)、保証(Guarantee)ということだ。

 欧州連合(EU)も27日、米国との相互関税交渉で6000億ドル(約88兆円)の対米投資を明らかにしたが、この資金は全面的に企業など民間分野の投資だとし、EUが強制できないと説明してきた。日本とEUともに米国に示した投資の実際の金額は大きくなく、強制性も曖昧に見えることから、韓国も同様に交渉を終えることができるものと予想されている。

 カン・フンシク大統領秘書室長は28日の記者懇談会で、米国との関税・外交・安保交渉が「きちんと終わるまで続く継続的な交渉になるだろう」とし、このような方式の交渉が「ニューノーマルになるだろう」と述べた。さらに「(合意文が採択されず)戦術的に時間を取るのも悪くないという内部的判断があった」とし、「交渉が早く行われるのが有利だという根拠はない」と話した。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1217222.html韓国語原文入力:2025-09-05 17:44
訳H.J

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