米国のドナルド・トランプ大統領が、パレスチナのガザ地区から住民を移住させた後、ガザを所有するという主張を繰り返し、波紋が広がっている。
トランプ大統領は11日、訪米したヨルダン国王のアブドラ2世とホワイトハウスで会談した際、ガザについて「われわれが取り、維持し、大切にする」と繰り返し、米国がガザを所有すると繰り返し主張した。トランプ大統領は「ガザの住民たちは、あそこに留まりたがらない」として、「ヨルダンやエジプトなどの地に、彼らのために土地が用意され、新たな居住地でより安全で幸せに暮らすことになるだろう」と述べた。さらに、「最終交渉が終われば、全員が満足できる結果になるだろう」とも付け加えた。トランプ大統領は「そのような計画は民族浄化に当たるのではないか」との質問には、「200万人はそれほど大きな数字ではない」と一蹴した。
トランプ大統領は、4日のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談後の記者会見で、米国がガザを占領してリゾート開発を行うと、唐突かつ一方的に発表して以来、この主張を強めてきた。トランプ大統領は当初、米国のガザ所有と占領への米軍投入を示唆し、ガザ開発後にはパレスチナ住民の帰還も可能だと述べていた。しかし、トランプ大統領はその後の発言で、「戦争が終わればイスラエルはガザ地区を米国に引き渡すだろう」と述べ、米軍投入を否定し、イスラエルに軍事力の使用を求めた。パレスチナ住民のガザ帰還も認めないと強調した。ヨルダンやエジプトなどが、ガザのパレスチナ住民に住む場所を与えるべきだというのだ。トランプ大統領はまた、「ガザ地区を購入して所有することに専念している」と発言し、この日のアブドラ国王との会談では、米国がガザを占領する権限があると述べた。
ガザに関するトランプ大統領の主張は、イスラエルの軍事力を用いてガザを占領して住民を追い出せば、米国が譲り受け、サウジアラビアなどの投資を受け、リゾート開発などを行うというものだ。ガザのパレスチナ住民たちは、エジプトやヨルダンなどに定住すれば、ガザに戻る必要はないという主張だ。
トランプ大統領のこのような構想は、パレスチナ問題を、パレスチナ人を排除して消滅させることによって解決するというものだ。または、パレスチナ独立国家の建設という二国家解決案などのこれまでの枠組み自体を完全にひっくり返し、米国とイスラエルが一方的にパレスチナ問題を終結させるという意図によるものだ。
しかし、軍事力を動員してガザを占領して住民を追い出し、近隣諸国がガザの住民たちを受け入れる必要があるというこのような主張を、実現可能だと考える者はいない。ニューヨーク・タイムズのコラムニストである中東専門家のトーマス・フリードマン氏は「米国大統領が出した最もばかげていて危険な中東和平案だと、私は自信を持って言える」と断言した。
トランプ大統領が何かを言うときは、事実かどうかは重要ではない。トランプ大統領は本当の目標を言うのではなく、不動産交渉のときに最初に機先を制するために投げるような誇張した言動をする。別の目標を隠して混乱を引き起こすこともある。トランプ大統領が好むとされる狂気戦略だ。
トランプ政権内でこの提案を擁護する一部の人たちは、この提案が少なくともアラブ諸国にガザ再建のための安全保障と費用をカバーする計画案を出させる圧力になると述べた。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。実際、エジプトは27日に緊急でアラブ連盟加盟国による首脳会議を招集し、「パレスチナ問題における新たな危険な展開」を議論すると発表した。アブドラ国王も、エジプトが構想を出すまでは待とうと述べた。アラブ諸国は、米国やイスラエルが容認しないというハマスの復活防止など、今後のガザ再建への誠意を求められているのだ。
しかし、トランプ大統領の今回の主張は、狂気戦略だとしても度を越していると指摘されている。アラブ諸国は極度の失望と不快感で怒りに震えている。
むしろ、今回の提案は、ガザ戦争の休戦を望まないイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と彼の政権維持を助ける方向に向かっている。フリードマン氏は「トランプのチームの最大の問題の一つは、中東に関する全体の見解が、イスラエルの極右とキリスト教福音派のレンズを通じてフィルタリングされていること」だとして、「彼らはネタニヤフ首相の完全なるカモ」だと指摘した。
トランプ大統領は10日、ハマスがイスラエル人の人質を今月15日までに全員釈放しなければ、休戦は無効であり、ガザで地獄が繰り広げられることになると脅迫した。ネタニヤフ首相もトランプ大統領のこのような通告を繰り返し、イスラエル軍に戦闘再開の準備を求めた。今回の休戦合意では、ネタニヤフ首相が人質釈放後に最終的な休戦に至る2段階を遵守する意志があるのかについて疑いを持たれていた。ネタニヤフ首相の連立政権内では、極右のベザレル・スモトリッチ財務相が、人質釈放後に戦争を再開しない場合、連立政権から脱退すると脅している。これは、ネタニヤフ首相にとって連立政権の崩壊を意味し、政権喪失につながる。
ガザからパレスチナ住民を追い出すトランプ大統領の主張は、スモトリッチ財務相らイスラエルの極右の長年の希望だった。ネタニヤフ首相は、トランプ大統領が主張するガザ所有を積極的に支持し、これを機に極右と一蓮托生することになった。ガザ戦争を再開する名目を得て、これは自身の政権維持を意味する。
トランプ大統領のガザ所有の主張が、今後中東に引き起こす波紋は今も広がり続けている。