「毎晩、国際ニュースを隅々まで読みます。(パレスチナの)実家の近くにロケットが落ちたこともありましたから。午前5時になると、すぐに家族にショートメールを送ります。ある時は返信が来ますが、ある時は既読メッセージだけが表示されます。それでもかまいません。とにかく生きているということですから。実はすぐにでも家族のそばに行きたいです。でも、叔母は『そんなバカなこと言わないで。あなた一人でも生き残らなければ。私たちが皆死んだら、あなたが生き延びて私たちの話を伝えなければならないじゃない』と言います。そんなことを言われると、もっと怖くなり、不安になります」
ナリマンさんはパレスチナのヨルダン川西岸地区出身の留学生だ。韓国の俳優パク・シネのファンだ。韓国の歴史にも関心がある。日帝強占期(日本による植民地時代)を経験した韓国が、自国のパレスチナと似ていると思った。「日帝強占期を経験したが、植民統治から抜け出した韓国をロールモデルにしたかった」と語った。2023年8月、韓国政府招待奨学生に選ばれた時は、飛び上がるほど嬉しかった。ところが、ナリマンさんが韓国に滞在している間にガザ戦争が始まった。
■韓国、イスラエルに80億ウォン以上の武器を輸出
パレスチナのガザ地区出身の留学生マリヤムさんもいる。大学で機械自動車工学を専攻した。現代自動車など製造大手の多い韓国でもっと勉強したかった。2021年9月、韓国政府招待奨学生として韓国に来て修士号まで取得した。ところが、戦争がすべてを変えてしまった。ガザに住んでいた家族は避難することになった。 マリヤムさんは毎日気をもみながら日々を過ごしている。
「テント村にいる家族に毎日連絡しています。無事なのか、体調は悪くないのか、生きているのか…。(ショートメールを送ってから)半日が過ぎたのに返事が来ないと、もう気が気ではありません。待っている時間がとても辛いです」
ガザ戦争は2023年10月7日に開戦した。その後420日以上の間、4万人以上のガザ地区住民が死亡し、10万人以上が負傷した。ナリマンさんとマリヤムさんだけでなく全世界がイスラエル軍の攻撃を糾弾するが、この攻撃に韓国製の武器が使われるという事実はあまり知られていない。ハンギョレ21の単独取材の結果、韓国が2024年にイスラエルに武器を輸出した金額は少なくとも80億ウォン(約8億5千万円)以上であることが確認された。イタリアとカナダなどがイスラエルを糾弾し武器輸出を中断する方針を明らかにしたが、韓国は輸出という名の「紛争商売」を手放していない。
■銃砲・弾薬などが武器として使われたのか
もう少し詳しく見てみよう。2024年1月から8月まで韓国がイスラエルに輸出した武器取引の総額は計599万9942ドル(約8億9700万円)。市民団体「参与連帯」平和軍縮センターが最近、秘密裏に入手した数値だ。2023年にも韓国の対イスラエル武器輸出額は1620万166ドル(約24億2100万円)に達した。
具体的にどのような武器を売ったのか、詳しい状況は分からない。ただ、これまで主に報道された「武器・銃砲弾とこれらの部分品と付属品」(関税コードHS93)がかなりの部分を占めると推定される。主に陸戦に使われる火器、爆薬、銃器、地雷、弾薬、銃砲弾、刀、槍、ミサイルとその部品が網羅されている。
このような武器の存在一つひとつが、ガザ地区の危機に密接に関わる。「私のいとこの夫はパンを買いに出かけて、銃で撃たれて右手が丸ごと吹っ飛んでしまいました。マリヤムの17歳のいとこも銃撃で亡くなりましたし。たった銃一挺、弾薬一つですって? その弾薬一発で人が死に、怪我をし、家庭が丸ごと崩壊してもですか」。ナリマンさんは語った。
(2に続く)