ウクライナに対する西側の支援に反発してきたロシアは21日、ウクライナ国境近くで戦術核兵器の演習を始めた。
ロシア国防省はこの日、ロシア南部軍管区で「演習の第一段階が始まった」として、1分30秒にわたる映像も公開した。ロストフナドヌー地域に本部を置く南部軍管区は、ウクライナと国境を接しているロシア南部地域と共に、2014年に強制併合したクリミア半島、そして2022年2月末にウクライナ全面侵攻後に占領したウクライナのドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソン地域を管轄する。ロシア国防省は正確な作戦の位置は公開しなかった。
3段階に分けて進められる予定の今回の演習には、核弾頭を搭載できる短距離戦術ミサイル「イスカンデル」や極超音速ミサイル「キンジャール」などが投入された。ロシア国防省は「ミサイル編隊員がイスカンデル戦術ミサイルシステムに特殊弾頭を載せ、発射台にミサイルを装着し、指定された発射地域に隠密に前進する演習を行った」と発表した。ロシアが公開した映像には、軍用車両が木の生い茂る道を移動する姿と共に、弾頭の形がぼやけて見える移動式イスカンデル戦術ミサイルシステムが発射場に入る場面が映っている。飛行場で核弾頭を搭載する爆撃機を準備する軍の姿もみられる。
ロシア軍はこれまで、戦略核兵器の演習は定期的に公開してきたが、戦術核兵器の演習計画を公開したのは異例のことだ。戦略核兵器は都市全体など広範囲な地域を破壊できる核兵器であり、戦術核兵器は戦略核兵器よりは限られた地域を破壊する核兵器を指す。しかし、戦術核兵器といっても、通常兵器とは比較にならないほど破壊力が強く、戦略核兵器よりは使用の敷居が低い。
ロシアは保有する戦術核兵器の数など具体的な内容を公開したことはないが、米国の科学者たちは1558機ほど保有していると推定する。戦略核兵器は米ロ軍縮協定の対象だったが、戦術核兵器はそれに含まれなかった。ロシアの戦術核兵器は米国を狙った戦略核兵器とは異なり、欧州とアジアの戦場で使われる目的で作られたと西側はみている。
今回のロシアの戦術核兵器演習の公開は、西側に対する警告とみられる。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、2日に公開された英国週刊誌「エコノミスト」のインタビューで、ロシア軍がウクライナ軍の戦線を突破し、ウクライナの要請があれば、フランス軍の派遣もあり得ると述べた。4日後の6日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はロシア軍に戦術核兵器の演習を命令しており、ロシア国防省はこの事実を公開した。ロシアが戦術核兵器の演習計画を公開したのはこれまでなかった。そしてプーチン大統領は9日の戦勝記念日の閲兵式でも「われわれの戦略軍は常に戦闘準備態勢を整えている」と述べ、閲兵式後には「ロシアとベラルーシ軍が戦術核兵器の演習に向けた共同準備を始めた」と明らかにした。
国立外交院のイ・テリム教授はハンギョレに「英国とフランスがウクライナ戦争の概念を変えるほどの強硬な姿勢を見せたことを受け、ロシアも力を見せつけなければ西側で新しい団結の気流が生まれかねないという懸念から、実際に戦術核兵器の使用を想定した演習まで進んだものとみられる」と語った。