気候政策の先導地域である欧州で、積極的な炭素排出削減政策が有権者を極右勢力への支持に向かわせているという分析が出た。
ワシントン・ポスト紙は、最近SAGEジャーナルに掲載された報告書「エネルギー転換と右翼支持:オランダの事例」を引用し、エネルギー費用の高騰で困難を強いられているオランダの家庭で、極右政党支持率が5~6%増えたと、1日(現地時間)付で報道した。
オランダは約10年前から炭素排出を減らすための政策を着実に進めてきた。天然ガスに課する税金を引き上げ、そのお金で太陽光パネル設置の補助金を支援してきた。この政策が概ね効果を上げ、オランダで太陽光パネルを設置した家庭は2013年の2%から20%に大幅に増えた。
しかし、このような炭素排出削減ドライブは、政治的に逆風を招いた。天然ガス価格がほぼ50%も上昇し、これに伴い暖房費高騰に見舞われた有権者たちが、極右政治家たちの扇動に耳を傾け始めたのだ。
このような反作用は、欧州のほぼすべての地域で現れている。ドイツでは家に効率の高いヒートポンプの設置を求める法律が制定されたことで、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を集めている。フランスの農民たちは最近、欧州連合(EU)の環境規制に反発し、トラクターを運転してパリに押し寄せており、イタリアと英国ではガソリンを多く消費する大型乗用車の都心への出入り規制に対し、市民が反発を強めている。
極右政党が浮上しているのは、これらの勢力が政府の気候変動への対応に対抗する政治的立場を明確にしているためだ。欧州の極右政党は当初、移民およびグローバル化への反対から出発したが、今やエネルギー費用を増やす気候政策に対する反対も政綱政策に取り入れている。
10年前までは、オランダの極右自由党は再生可能エネルギー政策に反対しない立場を示してきた。しかし、2021年に出た政綱政策は「エネルギーは基礎必需品だが、横暴な気候政策によりエネルギーが高価な贅沢品と化している」として、批判的な論調を展開している。今回の報告書の作成に参加した米ジョージタウン大学のエリック・ボーテン教授は「気候政策が極右連合政治を拡大させている」と指摘した。
このような政治的環境は、欧州が進めてきた炭素排出削減政策の現住所と関連があるものとみられる。欧州は全体として電力の60%を再生可能エネルギーや原発で賄っている。このため、欧州の炭素排出削減対象は電力以外の他の対象、例えば交通、建設、農業などに広がっている。問題は、電力生産を再生エネルギーに変える時はそれほど注目していなかった人たちが、気候政策の対象が普段運転する車や家の暖房などに変わり、日常生活に影響を及ぼし始めたこと受け、不満を表して反発している点にある。
研究機関「プロジェクトテンポ」の戦略責任者であるルーク・ショア氏は「(エネルギー)転換のスピードが速くなるにつれ、人々の日常も影響を受け始めた」とし、「(国の政策より)もう少し個人的な問題になったため、人々がより政治的に敏感になった」と語った。問題は消費者がエネルギー転換の費用を政府や企業ではなく自分たちが背負っていると感じ、それは公正ではないと考えることだと、専門家たちは口をそろえて述べている。
このような現象は、米国でも例外ではない。プリンストン大学のアレクサンダー・ガズマーラリアン氏の研究によると、伝統的に民主党支持の強い石炭共同体では、石炭産業の斜陽化によって職を失ったことで、共和党支持が5%増えた。このような現象には気候変動に対する否定論と化石燃料関連の誤った情報が決定的な役割を果たしているが、多くの有権者が自分の直面した財政状況によって選択を強いられている側面もある。カズマラリアン氏は「彼らは選択肢があまりない経済的状況に置かれている」と述べた。