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ガザ戦争6カ月…米国が主導する自由主義の国際秩序が壊れた

登録:2024-04-05 08:42 修正:2024-04-05 09:13
3日、イスラエル軍の攻撃で廃虚と化したパレスチナのガザ地区最大の病院アル・シファ病院病院の周辺で、一人の男性が自転車を引きながら歩いている/AFP・聯合ニュース

 今月7日(現地時間)、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区の武装勢力ハマスの「撲滅」を目標にガザ戦争を始めてから、6カ月目をむかえる。3万3000人を超えるガザ地区の住民が犠牲となったこの戦争は、終わる兆しがみえず、イスラエルを支援する米国主導の国際秩序の亀裂をあらわにした。

 ガザ戦争は、中東の地政学の構図の錯綜のなかで生じた。戦争はハマスが昨年10月7日にイスラエルを奇襲攻撃し、1200人を超える死者が出たことから始まった。ハマスの奇襲攻撃の背景には、米国が推進した「アブラハム協定」があるという分析が多い。米国は、ドナルド・トランプ政権期の2020年9月、アラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルの外交関係正常化を仲裁して成功させた。湾岸地域のアラブ諸国では初めての事例であり、バーレーンとスーダン、モロッコも後に続いてイスラエルと国交樹立した。ユダヤ人の先祖であるイサクとアラブ人の先祖であるイシュマエが、1人の父親である「アブラハム」の子孫であることを確認し、両国が今後平和に共存することを約束したアブラハム協定の最終目標は、イスラエルとイスラム・スンニ派の盟主サウジアラビアとの国交樹立だった。これを通じて、親西側のスンニ派の連帯強化を試みた。しかし、ハマスの政治部門の指導者、イスマイル・ハニヤ氏はガザ戦争勃発の翌日、「抵抗勢力から自分を保護することもできない対象(イスラエル)は誰も保護できないということを、アラブ圏の兄弟国を含む全世界に伝える」とし、「この対象と結んだすべての関係正常化の合意は、パレスチナ紛争の解決策にはなりえない」と述べた。サウジとイスラエルの国交樹立は当面は破談となり、イスラエルのガザ侵攻は、アラブ圏だけでなく西側でもイスラエルに対する批判を過去にない水準にまで高めた。

 米国は前例のないジレンマに陥った。一つ目に、2022年2月末のロシアのウクライナ侵攻後、ウクライナ戦争にとらわれていた米国の外交力と戦力は、ふたたび中東に分散した。主戦ラインにしようとしていた対中国戦線に集中できずにいる。二つ目に、ガザ戦争でイスラエルに対する無条件支持以外には選択肢がなく、中東における外交安全保障の危険要素が、手のほどこしようもないほど増幅された。三つ目に、イスラエルはガザ戦争を激化させ、米国の足を引っ張っている。

 こうしたことは、シリアとイラクに駐留する米軍に対する反米武装勢力の攻撃や、紅海でイエメンのフーシ派の商船攻撃などとして表れている。特にイエメンのフーシ派は、変化した中東の地政秩序を象徴する。イエメン内戦に介入してフーシ派と戦うサウジアラビアが、最近はフーシ派の紅海での商船攻撃を放置しているが、これはイランとの妥協だと解釈する余地もある。米国と英国は2月にフーシ派の本拠地を空爆したが、完全に根絶することはできずにいる。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は、米国からの休戦圧力にもかかわらず、大規模な民間人被害を引き起こすガザ地区への攻撃を続けている。米国の引き止めにもかかわらず、ガザ地区の人口230万人の半数以上にあたる140万人が集中している最南部のラファに対する本格的な攻撃計画も止めずにいる。

 イスラエルにとってのガザ戦争は、イランとの「影の戦争」の一環だ。1979年のイラン・イスラム革命後に中東での最大の敵国となった両国は、代理戦争やサボタージュ(破壊工作)を通じて対立してきた。イスラエルはガザ戦争勃発後、レバノンのシーア派武装勢力「ヒスボラ」だけでなく、イランのイスラム革命防衛隊を直接攻撃している。今月1日には、シリアのダマスカスにあるイラン領事館が空襲され、イスラム革命防衛隊コッズ部隊のモハメド・レザ・ザヘディ司令官(63)ら7人が死亡したが、シリア政府とイラン政府はイスラエル軍の仕業だと明らかにした。ザヘディ司令官はイスラエルの攻撃で死亡したイラン革命守備隊の指揮官のなかでは最高位の幹部であり、ガザ戦争の拡大への懸念が高まっている。影の戦争が熱戦に飛び火する可能性はまだ低いが、イスラエルは攻撃的に対応する意志を示している。イスラエルのネタニヤフ極右政権が対決を激化させる理由は、戦争が政権維持の役に立つためだとみられる。米国はイスラエルのこのような暴走を制御できず、サウジアラビアなどのアラブ諸国に対する外交的な影響力も弱まっている。

 サウジアラビアの悩みも深まっている。サウジアラビアは昨年3月、中国の仲裁でイランと関係正常化したのに続き、イスラエルとの和解によって中東における安全保障と影響力を保証しようとしたが、その戦略に支障をきたした。

 国際社会は米国の役割を今でも期待しているが、米国はこの紛争を外交的に解決する力のなさを露呈させている。主導勢力の不在は、中東で既存の同盟、友邦、敵対関係を乱し、個々に躍進する様相につながっている。

 ウクライナ戦争に続くガザ戦争は、米国の覇権に頼る自由主義の国際秩序の亀裂がどのような形で表れるのかを、中東で示している。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/1135292.html韓国語原文入力:2024-04-04 20:50
訳M.S

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