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[寄稿]ドイツがイスラエルを支持する本当の理由

登録:2024-03-18 07:12 修正:2024-03-18 08:54
スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授
昨年6月、ドイツのシュレースヴィヒ航空基地で、兵士がIRIS-Tミサイルを眺めている/AFP・聯合ニュース

 今年のベルリン映画祭のドキュメンタリー映画賞は、ヨルダン川西岸地区のパレスチナの村が焦土化する過程を扱った映画『ノー・アザー・ランド』に与えられた。授賞台に上がった共同演出者でパレスチナの活動家のバセル・アドラとイスラエルのジャーナリストであるユバル・エイブラハムは、パレスチナ人虐殺に言及し、ドイツはイスラエルに対する兵器供給を中断しなければならないと求めた。

映画『ノー・アザー・ランド』のポスター//ハンギョレ新聞社

 ドイツ政界はこれを大問題とみなした。ベルリン市長のカイ・ウェグナーは「イスラエルとガザ地区の苦痛に対する責任は全面的にハマスにある」として、「(監督が)容認できない相対化を犯した」と非難し、自由民主党のある政治家は、ベルリン映画祭への国庫支援を撤回しなければならないと主張した。監督の発言に拍手して厳しい批判を受けた文化・メディア担当相のクラウディア・ロートは、自分はパレスチナであるアドラではなくイスラエル人であるエイブラハムに拍手したと釈明した。ときにパレスチナ人の苦痛に「懸念」を示す自由主義者でさえ、イスラエルを無条件支持する保守主義者が反発すれば、自身の行動に対してただちに釈明しなければならないという状況は、ドイツの現状をよく示している。

 ドイツの基準に従えば、英国のデビッド・キャメロン外相も反ユダヤ主義者とみなせる。彼は最近、パレスチナを国家として公認する案を考慮していることを明らかにした。同様に昨年、「イスラエルは、パレスチナが自分たちの国家を持つことで初めて安全保障を確保できる。したがって、二国家解決案を支持するパレスチナの指導者、マルワーン・バルグースィーを釈放しなければならない」と主張したシンベト(イスラエル情報機関)のアミ・アヤロン元局長も反ユダヤ主義者になりうる。

 ドイツのイスラエルに対する全面支持は、イスラエル内部にも影響を及ぼす。歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは、イスラエルで「愛国主義勢力とユダヤ人優越主義勢力の間の闘争」が繰り広げられていると指摘する。不幸にも、ドイツはこの闘争に対して中立ではない。ドイツの意図が何であろうとも、ドイツの立場はユダヤ人優越主義勢力に確実に力を与えている。

 一例をあげてみよう。数年前、ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地のある学校で、ラビ(ユダヤ教における指導者)が生徒たちに「ユダヤ人虐殺を除けば、ヒトラーの人種主義は正しかった」と述べ、イスラエルを建国したシオニストはパレスチナ人を対象にナチズムを行っていると教えたことが判明し、問題になったことがある。こうした極端な立場はイスラエルでも少数の者だけが公言する内容だが、現在のイスラエルがパレスチナ人に行う「国家暴力」の基本となる前提をよく示している(ベンヤミン・ネタニヤフ首相とベザレル・スモトリッチ財務相は、この事件後もこの学校を訪問して演説した)。

 哲学者のセイラ・ベンハビブが主張するように、現在のイスラエル政府を作り上げている者たちは、ファシズムの遺産を直接継承した人物たちだ。イスラエル建国当時の右翼勢力は、組織、方法論、政治哲学、社会的訴求力の側面でナチとファシスト政党に類似した政党ヘルートを結成したが、その後裔が、まさに現在イスラエルの権力を掌握している右派政党のリクードだ。

 ユダヤ人は優れているというこれらの勢力の信念は、ナチズムと直接的な連続線上にある。そして、まさにこれこそ、ドイツがイスラエルを無条件に支持する深層的な理由だ。ならば、私たちがすべきことは何だろうか。英国の政治評論家、オーウェン・ジョーンズは、逆さまになった形態のナチズムを続けさせるドイツを拒否すべきだと提案し、「ドイツは国家次元で反パレスチナ的な人種主義を容認しており、しかも、パレスチナを支持するユダヤ人をも反ユダヤ主義者として追いやっている」と指摘する。過去にドイツ人がユダヤ人を脅し、良いユダヤ人と悪いユダヤ人に区別した場面が浮び上がる。ドイツはナチズムと歴史的に結びついたイスラエルの暗い勢力を全面支援し、今でもユダヤ人に対して侮辱と処罰を続けている。

//ハンギョレ新聞社

スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1132623.html韓国語原文入力;2024-03-17 18:40
訳M.S

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