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ガザ戦争、6カ月間で死傷者11万人…AIが定めた「殺傷標的」

登録:2024-04-05 06:21 修正:2024-04-05 07:03
2日、イスラエル軍の戦車がガザ地区の境界で移動している/AFP・聯合ニュース

 イスラエル国防軍(IDF)がパレスチナの武装勢力ハマスの「撲滅」を目標に掲げ昨年10月7日に戦争を始めて以来、ガザ地区で11万人にのぼる死傷者が出た。勃発から6カ月を迎えるガザ戦争がこのように大規模な被害をもたらした背景には、イスラエル軍が初めて本格的に活用し始めた人工知能(AI)の標的システムがあると指摘されている。

 イスラエル軍のサイバー情報「8200部隊」の元将校で、サイバー企業「セントラ」の共同創立者のロン・ライター氏は「イスラエル軍は膨大なデータを分析して人々(標的)の位置を把握・攻撃するのに、AI標的システム『ハブソラ(Habsora)』(福音という意味のヘブライ語)を使っている」と、米国政治専門メディア「ポリティコ」に最近語った。ライター氏は、イスラエル軍が戦争でAIを本格的に使用することについて「パンドラの箱が開いた」と表現した。

 イスラエル軍はガザ戦争が勃発する2年半前の2021年5月、11日間にわたり繰り広げられたハマスとの武力衝突の時も、マシンラーニングと先端コンピューティングを使った「最初のAI戦争」を行ったと明らかにした。当時のイスラエル軍のAI活用が試験段階に近かったとすれば、今回のガザ戦争でハブソラはイスラエル軍最前線の中枢神経の役割を果たしている。

 イスラエル軍の標的算出能力はハブソラ活用以前には「1年に50個」ほどだったが、このAIシステムの導入後には「1日に100個」に急増した。英紙「ガーディアン」が報じた。

 ハブソラのこのような標的算出能力は「破壊標的生産工場」に喩えられ、ガザ地区の住民の死傷者が11万人余り発生した原因の一つに挙げられている。イスラエル軍のAI標的生成システムに各国の関心が集まっているが、実体はベールに包まれている。「殺傷標的」を設定する際、戦闘員と民間人を区分する能力があるかどうかも検証されていない。

 英国のシンクタンク「王立防衛安全保障研究所(RUSI)」が発表した「イスラエルのAI目標設定能力」に関する報告書によると、イスラエルは2019年、陸軍と空軍が戦争の時に使う標的を生産するために「標的管理局」を立ち上げた。以前の戦争では長い時間をかけて設けた標的が戦闘開始から数週間でなくなり、これを解決するために「標的銀行」を作る組織を設立するという計画だった。軍人数百人と分析家たちがドローン映像や傍受通信、監視データ、オープンソース情報、集団の動き、個人行動データなどを集めたが、限界があり、以後AIの力を借りた。

 だが、RUSIは同報告書で「イスラエル軍が説明するハブソラの役割は依然として曖昧で、システムがどのように標的を生成するのかなどについての説明がない」とし、「以前にもAIを利用して諜報を収集・処理するシステムがあったが、(ハブソラのように)攻撃可能な目標物を(機械が)出力することはなかった」と指摘した。

 「ガーディアン」は3日、イスラエルの情報筋の話を引用し、「イスラエル軍8200部隊が武装組織ハマスとの関連性をもとに、3万7000人に達する敵の戦闘員を潜在的標的として識別するAI基盤データベースを空爆の過程で使用した」とし、「このシステムは以前には公開されたことがない」と報じた。

 イスラエル側はAIを活用して「精密攻撃」をするため、戦争で民間人犠牲を減らすのにむしろ役立っていると主張するが、専門家たちは首をかしげる。サイバーセキュリティ企業「トレイル・オブ・ビッツ」のハイディ・クラフ取締役は「ポリティコ」に「まだAIシステムのエラーが多い点を考えると、現在の状況でAIを使って標的設定を自動化するのは無差別攻撃と変わらない」と批判した。イスラエル国家情報局長室でテロ対応を担当したアンドリュー・ボリン氏も「今のAI戦争は、実戦でどんなAI技術が作動し、(AIの活用に)どのようなルールが必要なのかを調べるための試験場に過ぎない」と懸念を表した。

 実際、ガザ戦争による被害状況は残酷だ。ガザ地区保健省の集計によると、4日基準で死亡者は3万3037人、負傷者は7万5668人だ。このような集計は民間人とハマスの戦闘員を区分していないが、国連人道問題調整事務所(OCHA)などは死亡者のうち女性9千人余り、子供1万3千人余りが含まれているとみている。事実上、民間人の犠牲を考慮しない無差別殺傷という批判が出ている理由だ。

 国際社会が注目していた大規模戦争が「武器の実験場」として利用されてきたのは、昨日今日のことではない。第2次世界大戦当時、米国が日本に落とした原爆をはじめ、米国などが湾岸戦争でステルス機や精密誘導弾などを実戦テストしたのが代表的な事例だ。2022年2月末に起きたロシアのウクライナ侵攻戦争で、AI技術が部分的に適用されたドローンや戦闘支援ロボット、自動運転軍用車などが実戦に投入された。顔認識が可能なAIで敵国の戦死者を確認した後、これを逆追跡して相手基地を打撃しており、小銃にイメージ追跡用AI装備を設置し、一度捕捉した敵を最後まで自動追跡する精密突撃照準鏡「スマッシュ」(SMASH)なども活用されている。

 だが、ガザ戦争におけるAIの活用は、これまで人間が統制する領域だった「殺傷標的」の選定までAIの領域に移っているという点で、これまでとは次元が異なる。ガザ戦争が以前とは全く違う性格の戦争と言われる理由でもある。アリゾナ州立大学のピーター・シンガー教授は先月24日、朝日新聞のインタビューで、「(ガザ戦争を通じて)AIは、市民生活と同様に意思決定の補助として戦場で使われている」とし、「米軍だけでなく、中国軍やロシア軍、自衛隊など主要国で、様々なタイプのAI兵器の開発・研究が行われている」と指摘した。

ホン・ソクチェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/1135241.html韓国語原文入力:2024-04-04 20:48
訳H.J

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