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ロシアで広がる「ゼノフォビア」…移民が標的、「テロ責任論」との分析も

登録:2024-03-28 07:56 修正:2024-03-28 09:07
モスクワテロ後、外国人への検問・規制強化案 
移住民を殴打、所有建物に放火 
労働力不足…移住労働者いなければ経済に打撃
顔に大きな傷を負った22日のモスクワでのテロの被告の1人が、モスクワの地方裁判所で行われた初審理に出廷している/EPA・聯合ニュース

 ロシアのモスクワ郊外のコンサート会場「クロカス・シティ・ホール」で少なくとも139人の犠牲者を出した「モスクワテロ」で、実行犯の疑いで起訴された4人の容疑者が中央アジアのタジキスタン出身者であることが確認されて以降、ロシアでは軽犯罪であっても外国人は追放すべきだと国会議員が主張するなど、「ゼノフォビア(外国人嫌悪)」が広がっている。

 ロシア大統領選挙にも出馬したウラジスラフ・ダワンコフ下院副議長は、モスクワテロ2日後の24日、テレグラムに「良心的に働きたがっている人だけでなく露骨な悪を望んでいる人でも、あまりに容易にロシアに来ることができる」とし、「軽犯罪であっても追放するなど、あらゆる範囲の措置が必要だ」と投稿した。

 ミハイル・シェレメト下院議員も先日、西側の情報機関が移住者を利用してロシア国内の状況を不安定にする恐れがあるとして、「移住を規制して国内の安全を守らなければならない」と主張した。

 ロシア政府もこのような動きに同調している。ロシア労働社会保障省は、移住労働者が事前に登録した勤務地とは異なる場所や会社で働いた場合、15日以内に強制出国させることを定めた法案の提出を準備している。ロシアの複数のメディアが伝えた。キルギスのメディア「タイム・オブ・セントラル・アジア」は、「ロシアの警察が移住民を含む外国人に対する検問を強化するために特別組織を立ち上げた」とし、「彼らは旅行用ホステル、一部の事業体など、移住民が主に集まる場所を集中的に点検する予定」だと報道した。

 平凡な移住民の日常は深刻に脅かされている。一部の地域では、ロシア人が移住民の所有物であるとの理由で建物に火をつけたり、路上でタジキスタン出身の移住民を無差別に殴ったりする事件も発生した。タジキスタン出身の移住者の一人は「今や彼ら(ロシア人)は私たちを呪われた人間であるかのように見ている」とし、「街を歩く時に安全だと感じることはできない」と語った。中央アジアとロシアのニュースを主に報じるインターネットメディア「ユーラシアネット」が伝えた。

 ロシア連邦のイゴール・クラスノフ検察総長は26日、「昨年のロシア国内の移民による犯罪は前年に比べ75%増加した」、「市民の安全の確保と外国人の労働力の活用にともなう経済的合理性のバランスを取る必要がある」として、外国人嫌悪をあおる発言をおこなった。ロシア政府が大規模テロ防止の失敗の責任を他に転嫁しようとしていると分析される。

 ロシアでのゼノフォビア拡大はウクライナ侵攻戦争を繰り広げているロシアの経済に打撃を与えるだろう、という分析も示されている。ロシア科学アカデミー経済研究所によると、昨年のロシアの労働力不足は480万人あまりにのぼる。戦時動員令で30万人以上の労働人口が招集されたほか、動員令を避けるためにロシアを離れた人々も少なくない。

 そのような中で足りない労働力を補う人々こそ、旧ソ連を構成する共和国だった中央アジアのイスラム諸国の出身者たちだ。ロシアにはタジキスタン出身の移住労働者だけでも150万人いる。彼らは主に建設、製造、物流分野などで働いており、ロシアの物価上昇を抑制する要因として作用している。イスラム教スンニ派の過激派武装団体「IS(イスラム国)」は、低賃金で働き、差別にさらされている中央アジア出身のムスリム移民を組織に引き入れるための活動を展開してきた。今回逮捕された4人のタジキスタン人は19歳から32歳の男性だった。英国ガーディアンによると、このうち19歳の男性はモスクワ郊外の理髪店で誠実に働いていた青年で、異常は感じられなかったと理髪店の所有者は述べたという。

ホン・ソクチェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1134050.html韓国語原文入力:2024-03-27 14:03
訳D.K

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