獄中で死亡したロシアの野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏の遺体を家族が確認できておらず、死因の隠ぺいが懸念されている。ロシア連邦捜査官らがシベリア北部の病院に安置された彼の遺体の調査に乗り出し、遺体からあざの跡を発見したという。
ラトビアで発行されるロシア独立メディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」は18日(現地時間)、ナワリヌイ氏の遺体が一般的に刑務所収監者の遺体が安置される安置所ではなく、シベリアのヤマロ・ネネツ自治区の中心都市、サレハルトの病院に安置されていると報道した。氏は同自治区にある第3刑務所で16日に突然死亡した。
同メディアはナワリヌイ氏の遺体が刑務所から36キロメートル離れた村に移されてから、再びサレハルトの病院に送られたと報じた。サレハルトのある救急隊員は「ナワリヌイ氏の遺体にあざの跡があるという話を聞いた」とし、「伝え聞いたあざの形から見ると、強いけいれんを起こした時、隣で人々が捕まえてできたものと考えられる」と語った。さらに「間接心臓マッサージをした場合にできるようなあざが胸にもあったという話を聞いた」とし、「人々が彼を蘇生させようと試みており、おそらく心臓麻痺で亡くなったようだ」と伝えた。彼は遺体の解剖はまだ行われていないと付け加えた。
同メディアは、他の消息筋の話として、ロシア連邦捜査委員会(ICRF)と連邦矯正当局の関係者らが同病院に到着し、死因の調査などに着手したと報道した。消息筋は「今からナワリヌイ氏の遺体と関連した問題、専門家の検視、死因究明などはすべてこれら調査官が処理するだろう」と語った。
この消息筋は、これから重要な問題は、誰をナワリヌイ氏死亡の「スケープゴート」にするかだとし、第3刑務所長のバディム・カリニン大佐と連邦矯正当局の現地責任者、イゴール・ラチキン氏が最も有力な人物として考えられると語った。
連邦捜査委員会が調査に着手したことで、当分の間、遺体は家族に引き渡されないものとみられる。ロシアの人権団体「OVDインフォ」所属の弁護士は、連邦捜査委員会がナワリヌイ氏の遺体に対する「手続き的検討」を始めたとし、これに伴い法的に最大30日間遺体を家族に引き渡さないこともありうると話した。
ナワリヌイ氏の家族と側近たちは死因の隠ぺいを懸念するとともに、迅速な遺体引き渡しを求めている。ナワリヌイ氏の報道担当者のキラ・ヤルミッシュ氏は「彼らは嘘をついており、遺体を引き渡さないためあらゆる努力をしている」と主張した。人権団体「OVDインフォ」はナワリヌイ氏の遺体を家族に引き渡すことを連邦捜査委員会に要請するのに1万2千人以上が参加したと明らかにした。同団体は「昨日から請願署名を始め、24時間も経たないうちに署名した人が1万2千人を越えた」と説明した。