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ゼレンスキー大統領からの辞任要求、総司令官が拒否…ウクライナで浮上する権力争い

登録:2024-02-01 10:48 修正:2024-02-01 21:17
ザルジニー総司令官、ゼレンスキー大統領の辞任要求を拒否 
国民的人気の高いザルジニー氏をけん制
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が29日、ワレリー・ザルジニー総司令官(左から2人目)に辞任を求めたが当人が拒否し、両者の権力闘争説が浮上している/ロイター・聯合ニュース

 ウクライナ戦争の戦況が悪化する中、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がワレリー・ザルジニー総司令官(50)に辞任を求め、ザルジニー総司令官はこれを拒否した。敵を目前にして2人の間の「権力闘争」が本格化する様相を呈している。

 ザルジニー司令官の支持者であるオレクシー・ホンチャレンコ議員は30日、英紙ガーディアンなどに「昨日、大統領がザルジニー氏に辞任を要求したが、彼が拒否した」と述べた。フィナンシャルタイムズも同日、4人の消息筋の話として、ゼレンスキー大統領が総司令官の交代を準備していると報じた。同紙は、ゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官に「国防顧問」という新しい職責を提案したが、拒否されたと伝えた。消息筋のうち2人は、「ゼレンスキー大統領は、ザルジニー総司令官が国防顧問職を受け入れるかどうかにかかわらず解任するだろう」と伝えた。消息筋によると、「ザルジニー氏を解任する決定は大統領府で下されたが、この事案がマスコミに公開されたため、しばらく先送りされるもの」とみられる。

 ザルジニー総司令官の解任説は、29日からウクライナのマスコミやソーシャルメディアなどを通じて急速に広がった。すると、ゼレンスキー大統領の報道官であるセルヒー・ニキフォロウ氏と国防省はこれの否定に回った。国防省はテレグラムに載せたメッセージで「尊敬するメディア関係者の方々へ、我々は直ちに答える。それは事実ではない」と述べた。

 政府の否定にもかかわらず、ザルジニー総司令官の解任は時間の問題だという評価が多い。後任にはゼレンスキー大統領の側近であるキリロ・ブダノフ軍事情報総局長やオレクサンドル・シルスキー陸軍司令官らが取りざたされている。

 両者の対立は昨年6月から始まり、ウクライナの反転攻勢が事実上失敗した昨年11月頃に深まったものとみられる。ゼレンスキー大統領側は、ザルジニー総司令官が11月1日におこなった英紙エコノミストとのインタビューで、戦況について「膠着」と発言し、反転攻勢の失敗を認めたことを問題視した。それから3日後の記者会見で「皆が苦労していていろいろな意見があるが、膠着状態ではない」とし、その後、軍の政治に対する関与を警告してきた。

 しかし、この事件以前にも昨年初頭からザルジニー総司令官に対する国民的な人気が上がり、ゼレンスキー大統領がこれを牽制してきたという指摘が相次いでいた。ホンチャレンコ議員は「両者の間に根本的な事案はないが、ゼレンスキーの大統領府はザルジニー氏が軍事的発言ではなく政治的発言をすることを懸念している」と伝えた。12月に発表されたウクライナのある世論調査によれば、回答者の88%がザルジニー総司令官を信頼すると答えた。ゼレンスキー大統領を信頼するという回答は62%にとどまった。現地メディア「キーウ・インディペンデント」の調査では、いま大統領選挙が行われた場合、ゼレンスキー大統領は決選投票でわずか2%の差でかろうじて勝つと示されたことが明らかになった。この調査は大統領府の依頼で進められ、結果は「対外秘」として処理されたが、マスコミにリークされた。

 ゼレンスキー大統領は戦争を理由に、3月に行わなければならない大統領選を延期することを望んでいるという。しかし、国内外では大統領選を日程通り行わなければならないとする圧力が高まっている。このような状況で浮き彫りになった両者の権力闘争は、反転攻勢の失敗と米国などの追加の援助が遅れている状況とあいまって、今後の戦況に決定的な悪影響を及ぼすものとみられる。

 2021年6月に総司令官に任命されたザルジニー氏は、ウクライナ戦争勃発後、首都キーウの防衛と2022年下半期の攻勢を成功させ、国民的英雄となった。ゼレンスキー大統領が完全な領土回復およびロシアとの妥協不可に固執する一方、ザルジニー氏はロシアとの政治的・軍事的妥協に対して柔軟だとされる。このため、昨年下半期には、ザルジニー氏がロシアのワレリー・ゲラシモフ参謀総長と軍事的妥協のための交渉をしていると報道されたこともある。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1126692.html韓国語原文入力:2024-02-0 07:31
訳C.M

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