エジプトに難民を押し付けガザ占領の疑惑
イスラエルはパレスチナのガザ地区を統治するハマスとの戦争でガザ地区を南北で分断し、住民をエジプトのシナイ半島に追い出そうとする意図があるのではないかという疑惑が強まっている。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は5日、「イスラエル軍が（ガザ市の）沿岸に到達し、湾岸線を掌握した」としたうえで、「今日から北部ガザと南部ガザが存在する」と述べた。ハガリ報道官はまた、北部の住民が南部に待避できる人道回廊はまだ開かれているとした。イスラエル軍は先月12日深夜12時頃から、ガザ地区最大の都市であるガザ市を含む北部地域の住民は南部に待避するよう、繰り返し要求していた。イスラエルによる退避の圧力で数十万の北部住民が南部に避難したが、今もなお相当数は北部に留まっている。
イスラエルは、ガザ地区の北部住民は南部に退避するよう圧力を続けている。イスラエル国防相のジョナサン・コンリクス報道官は6日にも「昨日と今日、事前告示と警告により、数時間のあいだ主な戦闘地域である北部ガザの特定地域の砲撃を中断した」としたうえで、「我々はパレスチナの住民に南部に移動するよう要求する」と述べた。
イスラエルがガザ地区の住民を南部に追い出すのは、南部に集まった住民をエジプトのシナイ半島地域に追放しようとする意図があるのではないかという疑惑も提起されている。
米国ニューヨーク・タイムズは5日、「6人の外国の高位の外交官によると、イスラエルはこの数週間、ガザ地区の数十万の住民を戦争期間中にエジプトに移送するため国際的な支持をひそかに組織している」と報道した。
駐米大使の経験がある与党リクードのダニー・アヤロン議員は、ガザでの地上戦の間、イスラエルに作戦空間を作るための住民疎開という名目で、「私たちはエジプトだけでなく国際社会全体がガザの住民たちを支援して受けいれる真の努力を期待する」と述べた。
ガザ地区に接する唯一の外国であるエジプトは、パレスチナ難民の流入を極度に警戒している。エジプトのアブドゥルファッターハ・エル・シーシ大統領は先月12日、「すでにエジプトは、スーダン・シリア・イエメン・リビア出身の難民900万人を受け入れている」とし、「パレスチナ国民は自分たちの土地に留まらなければならない」と釘を刺した。
しかし、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権の極右政治家らは、ガザ地区の住民をガザ地区の外に永久に追放する案を露骨に支持している。リクードのアリエル・カルナー議員は、1948年のイスラエル建国の際にパレスチナ住民を大々的に自分たちの土地から追い出した「ナクバ」を圧倒するような大量追放を要求した。カルナー議員はハマスの奇襲攻撃の翌日の先月8日、「今の一つの目的はナクバだ！ガザでナクバを」と述べた。イスラエルのアミハイ・エリヤフ文化遺産担当相は1日、ガザ地区の土地は、ガザ地区で戦った兵士やイスラエルがガザ地区から撤収する前にいたユダヤ人入植者に与えなければならないとまで主張した。ニューヨーク・タイムズによると、イスラエル軍の将校がガザ地区の再占領を主張し、兵士たちが呼応する動画も出回っている。イスラエルは、1967年の第3次中東戦争の際、ガザ地区を占領してユダヤ人入植地も建設したが、2005年に軍隊と入植地を撤収した。
イスラエル政府は、公式にはガザ地区の再占領とは一線を画している。しかし内部では、ガザ北部占領→南部に住民移動→エジプトのシナイ半島に住民を追い出すというシナリオを構想した政府の内部文章が13日に暴露されたりもした。
イスラエルがガザ地区を占領した後の有力な代案は、当面は治安を国連平和維持軍に任せ、インフラと住宅地を復旧した後、パレスチナ自治政府（PA）にガザの統治を任せる案だ。しかし、現在、ヨルダン川西岸を統治するパレスチナ自治政府は、イスラエルがヨルダン川西岸とガザ地区にパレスチナ独立国家を建設することを容認しないのであれば、ガザ地区の統治は引き受けないと主張している。さらに、パレスチナ自治政府は、ヨルダン川西岸でも支持が貧弱な状態であるため、ガザ地区でハマスに代わる勢力として受け入れられるという考えは非現実的であり期待できない。
このような背景から、イスラエルはガザ地区北部に対する攻撃で同地域をほぼ無人地帯にし、南部に追い込んだ難民をエジプトのシナイ半島などの外部に追い出すことを考えていると思われる。
訳M.S
