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新冷戦、核の脅威、インフレ…全世界を襲った「プーチン発のショック」

登録:2022-11-24 02:00 修正:2022-11-24 09:01
国際秩序を揺るがしたウクライナ戦争10カ月
22日(現地時間)、ウクライナの首都キーウのロシア正教会の修道院に対する捜索に乗り出したウクライナ保安局の要員たちが、訪問客の身分証を確認している=キーウ/AFP・聯合ニュース

 ロシアによるウクライナ侵攻で始まった戦争は、24日で10カ月目に入った。依然として収拾の見通しが見えないこの戦争によって、冷戦終結から30年あまりにわたって保たれてきた国際秩序は大きな変化の時を迎えた。

 この戦争が招いた最も大きな衝撃は、西欧と中ロが激しく対立した旧「陣営秩序」の復活だ。ロシアの侵攻と米中戦略競争の激化で、「2つの戦線」で中ロと対立することになった米国と欧州の焦りはピークに達している。北大西洋条約機構(NATO)は6月の「戦略概念」でロシアを「重大な脅威」、中国を「体制に対する挑戦」と規定し、米国も10月に「国家安保戦略(NSS)」で同じ認識を示した。ロシアの侵攻に驚愕したスウェーデンとフィンランドは、NATOに加盟するという戦略的決定を下し、戦後70年あまりにわたって平和主義を守ってきたドイツも本格的な軍備強化の道へと足を踏み入れた。

 中国は「戦争には反対する」という立場だが、対ロ経済制裁には参加せず、いくつかの国連決議にも「棄権」している。中国の習近平国家主席は9月の上海協力機構(SCO)首脳会議で、孤立したロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、米国に対抗する戦略的協力を強化していこうと言い、手を差し伸べた。この「巨大な分裂」によって、北朝鮮の核問題の解決のために団結すべき国連安保理は機能を停止し、緊急の様々な問題に共同対応すべき主要20カ国・地域(G20)会議なども無力化した。

 二つ目の大きな変化は「核の脅威の日常化」だ。ウクライナの強い抵抗に驚いたロシアは、開戦当初から「核による威嚇」を日常的に行ってきた。プーチン大統領は9月末、30万人の予備役に対する動員令を下した際に、「領土的統合が脅かされれば、我々はあらゆる手段を使う」と述べ、核の恐怖を決定的に高めた。核による威嚇の敷居が低くなったことに敏感に反応したのが北朝鮮だ。北朝鮮は9月初めに「核の先制使用」を可能にする法を制定したうえ、韓米を攻撃しうる様々な射程距離の弾道ミサイルを発射している。北朝鮮の核の脅威が日常化したことで、韓国では「独自の核武装論」が頭をもたげはじめ、日本は北朝鮮のミサイル基地を攻撃する「敵基地攻撃能力」(反撃能力)を確保する決断を年内に下す予定だ。

 もうひとつの影響は「相互依存の武器化」だ。戦争が始まる前の2020年には、欧州連合(EU)は天然ガス総使用量の41.1%をロシアから購入していた。ロシアの侵攻後に西欧が経済制裁を打ち出すと、ロシアは欧州へのガス供給を大幅に減らし、エネルギーを兵器のように用いた。欧州の一部の国々は石炭発電を一時的に延長するとともに、原子力発電に回帰するという決定を下さざるを得なかった。戦争の影響でエネルギー価格が暴騰したことにより、米国と欧州には40年ぶりのインフレが到来した。これに対応するために米国が相次いで金利を引き上げたことが、ドルの急騰を招いた。それに伴って日本円の価値が30年ぶりの低水準にまで暴落するなど、各所で混乱が相次いだ。

 冷戦後の世界秩序に複雑な衝撃を残したこの戦争がどのように収拾されるのかを予測するのは、極めて難しい。米軍部は今月に入って「対話の必要性」について公に言及しはじめたが、領土の6分の1を失ったウクライナは戦い続けるという意志を崩していない。結局のところ、短期的な戦況は米国がどのような兵器をどれだけ支援するかによって決まらざるを得ない。長期的にみて対話が再開されるためには、これ以上血を流すことは無意味だと両国が共感しうる軍事的こう着状態が作られなければならないだろう。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1068614.html韓国語原文入力:2022-11-23 20:18
訳D.K

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