ウクライナ人もロシア人も脱出…プーチンのせいで「すべてを捨てた」
ロシア国境、脱出の車列が15キロ…徴集から逃れ19万人が去る
ロシアがウクライナ領の併合を試みるなど、超強硬なウクライナ侵攻作戦を推し進めていることで、ウクライナとロシアでは「決死の脱出」が繰り広げられている。ロシアによる領土併合が差し迫っているウクライナのヘルソンなどでは住民が最後の脱出を急いでおり、戦争に連れていかれること心配するロシア人たちはジョージアなど隣国との国境に集まっている。
ロイターは28日（現地時間）、ウクライナ南部のヘルソン州とザポリージャ州のロシア占領地域で、多くの住民がこれまで住んでいた地を去りつつあると報じた。ザポリージャ州ザポリージャ市に設置された国連難民支援センター前で待機していたウクライナ住民リュボミール・ボイコさん（43）は、「多くの人がすべてを捨てて家を去っている。捨てられた村があちこちにある」と語った。
ヘルソン州中西部のホラプリスタンから妻と2人の子供と共に400キロほど離れたザポリージャまでやって来たボイコさんは「ロシア占領地の境界で2日間待っていたのだが、ロシア軍があるとき突如として検問所の通過を許可した」と語った。
ヘルソンとザポリージャの占領地から脱出した住民たちは、現在のところロシア軍が通過を認めている検問所は1カ所のみだとし、その検問所もいつまで開いているのかは分からないと述べる。住民たちが最も心配しているのは、徴集可能年齢の男性も脱出できるのかどうかだとボイコさんは語った。
ザポリージャ州に近いヘルソン州北東部のベリカレペティカから脱出してきたタチアナ・ゴロベツさん（46）は「検問所で兵士たちに『なぜロシアを離れるのか』と尋ねられたので、（ウクライナ西部の）リビウにいる子どもたちに会いに行くと言った。他に何が言えるのか」と話した。ゴロベツさんは、夫と共に着替えを何着か持っただけで出てきた、野外で3日3晩待ってようやくウクライナの支配地域にやって来られたと語った。
ゴロベツさんの家族と共に脱出してきたリュドミラ・サフロノフさん（48）は「圧迫感を感じて去ることを決心した」とし、ヘルソンの学校は来月からロシアの教育課程が導入され、授業もロシア語で行われる予定だと語った。サフロノフさんは、自分の息子にはそのような学校には戻ってほしくないと付け加えた。
ヘルソン州北部のベリスラフで農業をしていたという30代の男性は「ロシアとの合併のための住民投票のせいで、住民の70％程度が村を去った。電気とガスの供給が途絶え、仕事もできない中で、突然投票が実施された」と述べた。彼は、占領地を脱出しようとする車列の端が見えないと付け加えた。
ロシアはウクライナ東部ドンバスのドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリージャの4州で、23日から5日間にわたってロシアとの領土併合に向けた住民投票を実施し、領土併合が圧倒的な支持を得たと主張している。
ロシアでも徴集を逃れて故郷を去る人々が相次いでいる。AP通信は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が21日に予備役動員令を下して1週間が過ぎた28日になっても、ジョージアなどの隣国へと脱出するロシア人が絶えないと報道した。ジョージアと国境を接するロシアの北オセチア地域では、国境を越えようとする車が15キロほど列をなし、深刻な交通渋滞が起きている。SNSには、ロシア国境管理所が国境通過基準を緩和したことで、歩いて国境を越えようと長い列を作って待機する人々の写真が掲載されている。
北オセチア共和国は警戒令を発令するとともに、国境を越えるために待機している人々に提供する水や食糧などの救援物資の支援が必要だと発表した。ジョージア側ではボランティアたちが国境を越えてやって来た人々に水や毛布などを提供しているとAPは伝えた。カザフスタンとロシアの国境の町オラルでも、講堂として使われている4つの建物を空けてロシア人に寝食を提供している。
ジョージアは先週から自国に入ってきたロシア人の数が5万3000人であることを明らかにしており、カザフスタンに入国したロシア人もこれまでに9万8000人にのぼる。旧ソ連から分離独立した両国は、ロシア人に対しビザなし入国を許可している。陸路で先週末以降にフィンランドに入ったロシア人は4万3000人で、これまでに脱出した住民は19万4000人あまりだ。
訳D.K
