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「尹錫悦政権の『大胆な構想』は、北に『わいろを与えるから核放棄せよ』というもの」

登録:2022-09-23 08:55 修正:2022-09-23 11:34
[インタビュー]ミヒール・ホーヘフェーン| 欧州議会議員・朝鮮半島関係代表団所属 
「対話の開始段階から『非核化』の結論を前面に出すのであれば、答えは出ない」 
米国バイデン政権の対北朝鮮政策も「間違った方向」 
国際社会の北朝鮮に対する経済制裁にも批判的な見方
19日、欧州議会の朝鮮半島関係代表団所属のミヒール・ホーヘフェーン議員が、ソウル麻浦区の延世大学金大中図書館で本紙のインタビュー後、写真撮影に応じている=ノ・ジウォン記者//ハンギョレ新聞社

 「『非核化』という結論を前面に出して交渉を始めるのであれば、北朝鮮が受け入れるはずがない。北朝鮮は事実上『核保有国』だという現実を受け入れなければならない」

 欧州議会の朝鮮半島関係団に所属するミヒール・ホーヘフェーン議員(Michiel Hoogeveen・33)が19日、ソウル麻浦区(マポグ)の延世大学金大中図書館で本紙の取材に応じ、現在完全に停止している「朝鮮半島非核化」をめぐる対話と北朝鮮の核保有に対する見解を明らかにした。同議員は「私は現実主義者」だとしたうえで、「『世界がどうあるべきか』ではなく『ありのまま』」にみる場合、そのような結論を下さざるをえないと述べた。

 30代初めのホーヘフェーン議員が欧州議会に入ったのは、「朝鮮半島平和プロセス」の火がまだ残っていた2019年のことだ。現在、経済通貨委員会の副議長を担当しており、国際貿易委員会や朝鮮半島関係代表団などで活動している。オランダの保守政党「JA21(解決策21)」出身だ。社会科学の研究者時代、「北朝鮮の経済がどのように変わるのかをみるために」2014年から3回にわたり、平壌(ピョンヤン)、元山(ウォンサン)、金剛山(クムガンサン)、馬息嶺(マシンニョン)スキー場など、北朝鮮の現地を見回った。同議員が北朝鮮に関心を持つことになったきっかけは、高校在学時代に北朝鮮をテーマにしたドキュメンタリーをみたことだった。大学で経営学、大学院で国際政治を勉強し、「貿易を通じて北朝鮮を変えることができるのだろうか」と考え始めた。金大中政権の太陽政策、開城(ケソン)工業団地などをテーマに研究もした。直接北朝鮮に行ってみることにしたきっかけになったのは、研究者時代にトルコのイスタンブールで行った発表だった。現場に来た北朝鮮の研究者と激しい討論を行った後、直接北朝鮮を訪問した。

 ホーヘフェーン議員は「北朝鮮はみずから朝鮮半島非核化を喜んでするという。しかし、非核化という最終目標を達成するためには、数十年の年月を要する」と述べた。米国などの西側が対話の開始段階から北朝鮮に先に非核化措置を要求するのは、現実的な解決策ではないだけでなく、北朝鮮との交渉の助けにならないという主張だ。北朝鮮はすでに核を保有しており、それを飛ばす様々な射程距離のミサイルを保有している。6回の核実験も行った事実上の「核保有国」に無条件に非核化を要求することは「非現実的」だというのが、ホーヘフェーン議員の考えだ。同議員は「北朝鮮は核実験を行い、核兵器を持っている。これを得るために数十億ドルを投資した」とし、「大統領、政策立案者、交渉家が絶えず犯す誤りは、北朝鮮との交渉を『非核化』という結論とともに始めることだ。北朝鮮が受け入れるはずがない」と述べた。

 ホーヘフェーン議員は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が非核化ロードマップで提案した「大胆な構想」(「北朝鮮が核開発を中断し実質的な非核化に転換すれば、その段階に合わせて北朝鮮の経済と国民の生活水準を画期的に改善する」)は、「李明博(イ・ミョンバク)大統領の『非核・開放3000』を思い出させる」と述べた。同議員は「(北朝鮮に)核兵器の保有数をみせてほしい、核兵器を放棄しなさい、そうすれば私たちが北朝鮮に『マクドナルド』を持ちこんで投資する、ということと変わらない」とし、「北朝鮮に言わせれば、これは『賄賂』を与えるから核を放棄せよということ」だと述べた。さらに、北朝鮮の立場としては、「米帝国主義」に屈服し賄賂を得ることと同然であり、絶対に受け入れられないもの」だと述べた。また、尹大統領が北朝鮮に「経済的投資をしたいといっていることは支持するが、結論を出して交渉を始めれば、絶対に北朝鮮との対話に成功できない。本当に北朝鮮の核兵器をなくしたいのであれば、もう核兵器の話をすべきではない」と指摘した。

 米国のバイデン政権に対しても辛辣な評価を下した。ホーヘフェーン議員は、米国が北朝鮮の核政策に対しては「オバマ政権のような『戦略的忍耐2.0』を行っている。間違った方向だ」と指摘した。

 さらに、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が任期(2011年12月)を始める2カ月前に、北大西洋条約機構(NATO)軍による空襲でリビアの国家元首ムアンマル・カダフィ大佐が死亡したこと、1994年に安全保障を対価に核を放棄したウクライナが現在はロシアに侵攻されている事例などをみても、北朝鮮が先制して核を放棄する可能性は極めて低いと述べた。

 国連安全保障理事会と米国の北朝鮮に対する経済制裁の効果に対しても、批判的な見方を示した。ホーヘフェーン議員は、北朝鮮に対する経済制裁の副作用について、「制裁が(当初の目標とは違い)政権ではなく元山の漁師や沙里院(サリウォン)の農家など一般の人々に被害を与えている」とし、これは政権に「米国などの西側のために北朝鮮が貧しくなっている」という名分を与えていると述べた。同議員は、北朝鮮の現地を見回った後、「制裁が想定外の人々に向けられていることを目の当たりにし、観点が大きく変わった」とし、「制裁が政権をより強めている」と述べた。それだけではなく、中国がいる限り、北朝鮮に対する制裁は十分に効果を発揮できないとしたうえで、「中国は緩衝地域としての北朝鮮を必要としている。そのため、国際社会の制裁に参加しても、北朝鮮にとっての生命線であり続けるだろう」と診断した。

 ホーヘフェーン議員は「『北朝鮮にマクドナルドが入ってくるようにする』という形式のアプローチではなく、開城工業団地のように合弁法人を設立する形式の事業から始めることができる」という代案を出した。「北朝鮮にいた時、そのような種類への投資には喜んで参加するだろうということを感じた」とし、それを通じて「信頼を構築」しなければならないと述べた。初めから非核化の約束を取りつけるよりは、「開城工業団地、金剛山観光、離散家族の再会など、文化や経済的な交流」から始めれば、南北、朝米間の信頼が生じ、それをもとに非核化交渉への推進力を得られるという結論だ。

ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1059498.html韓国語原文入力:2022-09-22 11:30
訳M.S

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