ロシアのウクライナ侵攻が長期化するにつれ、欧州連合(EU)加盟国の間でロシアに対する対応をめぐり見解の相違が表面化し始めた。フランスとドイツ首脳がロシアと対話を通じた事態の解決に乗り出したことに対し、東欧ではロシアの地位を強化させる動きという批判の声があがっている。
英国の経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は29日(現地時間)、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのオラフ・ショルツ首相が、前日にプーチン大統領と電話会談を行い、休戦とウクライナの穀物輸出再開案について話し合ったことを受け、エストニアなど東欧の指導者たちが公に不満を表したと報じた。
エストニア議会外交関係委員会のマルコ・ミケルソン委員長は、フェイスブックへの書き込みで「フランスとドイツの指導者が不注意にもロシアに新しい暴力行為の道を開こうとしていることに驚きを禁じ得ない。主な欧州諸国を相手に戦争をしているプーチン大統領が、約束を守ると考える理由は何か」と批判した。ミケルソン氏は「マクロンとショルツは電話を切って、急いでウクライナに向かう便を予約しなければならない」と付け加えた。ラトビアのアルティス・パブリクス副首相もツイッターに、フランスとドイツの首脳に向けて「政治現実からかけ離れ、自己卑下の必要性に捕らわれたいわゆる西側の指導者が多いようだ」という書き込みを残した。
旧ソ連から独立した東欧諸国のこのような反応は、一部のEU加盟国がウクライナに終戦のため領土を譲歩するよう圧力をかけているという疑念によるものだと、同紙は指摘した。リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相は、このような疑念を具体的に表現した。ランズベルギス氏は「領土の占領を認めるのは、同じことが他のところでもあり得ると伝えること」だと述べた。同氏は、「アジアなど全世界がウクライナを不安な目で見守っている」とし、ロシアを孤立させるべきだと主張した。
これに先立ち、英国の週刊誌「エコノミスト」は最近号で、戦争をいかに終結するかを巡り西側諸国がいわゆる「平和陣営」と「正義陣営」に分かれていると報じた。ブルガリアのシンクタンク「自由戦略センター」(CLS)のイヴァン・クラステフ会長は、「平和陣営」は戦闘の早期中止と交渉を望む一方、「正義陣営」はロシアが攻撃の対象を払うべきだと考えていると説明した。
「平和陣営」の代表的な国にはフランス、ドイツ、イタリアが挙げられ、「正義陣営」には英国、ポーランド、バルト3国があり、米国の態度はまだ明確ではないと、同誌は付け加えた。両者の見解の相違は、ロシアが占領した領土をめぐる議論を呼んでおり、戦争の長期化による費用やリスク、成果の問題、欧州の秩序におけるロシアの位置問題にまで広がっていると、同誌は指摘した。
当事者であるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、領土問題について折衷的な態度を示した。ゼレンスキー氏は28日、ある放送のインタビューで、「侵攻後、占領された土地をすべて取り戻すことができれば、ロシアが対話に同意すると思う」と述べ、戦闘を通じた占領地の回復に向けた意志をほのめかした。しかし「2014年にロシアが併合したクリミア半島まで武力で回復することはできないだろう」と付け加えた。