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[ルポ]軍事要塞に転落した日本最南端の島…「ミサイルでは平和作り出せない」

登録:2022-05-18 06:29 修正:2022-05-18 18:11
現場|宮古島を行く 

台湾近隣の新冷戦の最前線 
米日の中国牽制戦略に基づき 
自衛隊のミサイル・レーダー基地を設置 

国土の0.6%の沖縄に 
米軍基地70%が集中 
南西諸島4カ所にミサイル防衛網 
中国、空母動員し軍事演習を強化 

住民たち「安全保障を名分に掲げ、犠牲を強要」 
部隊前で1649回にわたり抗議活動 
「力対力の対決では平和作り出せない」
ミサイル部隊がある日本の陸上自衛隊の宮古島駐屯地は、宮古空港から車で10分の距離で、島の中央に位置している。駐屯地正門の様子=キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 日本最南端の沖縄から飛行機でさらに1時間飛ぶと、美しい砂浜で有名な「宮古島」がある。6つの島で構成された宮古島は全体面積が203.5平方キロメートル、韓国の江華島(カンファド、302.6平方キロメートル)より小さい。「宮古ブルー」と呼ばれるほど海が美しく、年間約100万人(2019年基準)以上の観光客が訪れる。

 平和だった島に緊張感が漂い始めたのは、米中葛藤が激しさを増していった2010年代初めからだった。島は沖縄本島と台湾の間に位置しており、中日が激しい領土紛争を繰り広げている尖閣諸島(中国名・釣魚島)からはたったの160キロメートルの距離だ。2019~2020年に自衛隊の「ミサイル部隊」が入ってきて以来、島は名実共に米中対立の最前線となった。15日で本土復帰50周年を迎えた沖縄と宮古島の人々は、このような現実をどう受け止めているのだろうか。

軍事基地化する南西諸島 //ハンギョレ新聞社

 11日、本紙の取材陣が訪れた宮古島は梅雨で一日中雨が降ったり止んだりを繰り返していた。ミサイル部隊がある日本の陸上自衛隊宮古島駐屯地は、宮古空港から車で10分ほどの島の中央に位置している。22万平方メートルの敷地にベージュやオレンジ色の建物が並ぶ基地は、一見リゾートを思わせる。車両整備場や警護所、弾薬庫、官舎などがある部隊には自衛隊員約700人が滞在している。

 基地に近づいて鉄製のフェンスの中を覗いてみると、ロマンチックに見える外観とは裏腹に「03式中距離地対空誘導弾」の発射車両など多くの兵器が並んでいた。宮古島駐屯地は2019年3月に開設され、ミサイル部隊は2020年3月に配備された。同日、外郭で訓練があったのか、軍用車両が列をなして部隊に入る姿が目立った。

メロンとサトウキビ農業を営む仲里成繁さん(68)のビニールハウスは、ミサイル部隊からわずか5メートルの距離にある。後ろに日本陸上自衛隊宮古島駐屯地の建物が見える= キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 部隊の前で会った仲里成繁さん(68)は「ミサイル基地を見るたびにとても腹が立つ」と話した。「政府は安全保障を名分に掲げ、島の住民に犠牲を強いています。また沖縄なんですね」。仲里さんは一瞬感情がこみ上げたのか、しばらく言葉を詰まらせた。彼の怒りのこもった叫びから、本土に復帰してから半世紀が過ぎたが、依然として癒やされない沖縄の傷が垣間見えた。

 日本は1945年4月から6月にかけ、本土を守るため沖縄を盾に米軍を相手に無謀な戦闘を繰り広げた。 この戦闘でおよそ20万人が死亡した。日本本土は1952年4月、米国の占領統治から解放されたが、「軍事的重要性」が大きい沖縄は依然として米国の手中に残された。この時期、日本本土にあった米軍基地が続々と沖縄に移転され、1972年5月の本土復帰後もこの構造は変わっていない。現在、日本国土の0.6%にすぎない沖縄に米軍基地施設の約70%が集中している。沖縄の人々はこれを「差別」とみている。

 メロンとサトウキビを栽培している仲里さんのビニールハウスは、部隊からわずか5メートルの距離にある。「私たちは阿呆ではありません。戦争が起きたら、どこが真先に攻撃を受けるでしょうか。ミサイル部隊のあるまさにここです」。宮古島で生まれ育ち、結婚後、夫婦で農業を営んでいる彼は「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の代表を務めている。「私にはとても大事な故郷を、平和な状態に残しておきたいです。私たちはここでずっと暮らしていくつもりです。安心して暮らしたいから、ミサイル基地に反対しているんです」。仲里さんの農家の入口には「自衛隊は宮古住民を守れない」などの横断幕が掲げられていた。

 ミサイル部隊から北東に目を向けると、高さ100メートルの丘の上に約700メートルにわたって様々なアンテナとドーム状の建物が見える。宮古島のもう一つの核心軍事施設である航空自衛隊のレーダー基地だ。この基地には2017年、最先端の警戒管制装置の「FPS7」レーダー2台が配備されている。中国の動きを監視するためだ。宮古島南東沖近くの保良地区には、弾薬庫と射撃訓練場が新たに建設された。

 弾薬庫からわずか200メートル離れた付近に民家があり、住民たちは事故の危険性があるとして反発している。「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子事務局長は「ミサイル部隊が建設され、島全体が軍事要塞化している」とし、「海上保安庁の巡視船がある港湾や滑走路が大きい下地島空港など、島にある主要施設が軍事用に転用される可能性が高い」と語った。

ミサイル部隊から北東に目を向けると、高さ100メートルの丘の上に約700メートルにわたって様々なアンテナとドーム状の建物が見える。宮古島のもう一つの核心軍事施設である航空自衛隊のレーダー基地=キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 島の住民たちは2015年にミサイル基地建設計画が発表された時から反対闘争を続けてきた。毎週水曜日の午後5~6時には市内で、木曜日の午前9~10時にはミサイル部隊前で抗議活動を繰り広げる。尾毛佳靖子さん(76)は「力と力の対決では平和を作り出せないことを、私たちはすでに沖縄戦で学んだ」とし、「宮古島が軍事基地化されれば、戦争にさらに近づくことになる」と話した。

 腰痛でコルセットまでつけて参加した田畑増男さん(84)も「宮古島は山も川もないほとんどが平野地帯だ。戦争が起きれば逃げる所がない」とし、「率直に言って中国より目の前にあるミサイル基地の方が苦痛で恐ろしい」と訴えた。参加者の中で最も若いシバハラ・シンさん(61)はショッピングモールを駆け回りながら宣伝物を配った。彼は「高齢で体調も良くないのに参加している方々を見ると、知らんぷりできない」として、「この島がどうなるか心配だ」とため息をついた。

 住民の反対にもかかわらず、島にミサイル部隊が建設されたのは、日本政府がここを安保上の要衝地と判断したためだ。中国が軍事的に浮上し、東シナ海と南シナ海で大きな脅威になったことを受け、日本政府は2010年の防衛計画大綱で初めて「南西シフト」に言及した。その後、南西諸島に兵力と兵器を配置するなど、ここに事実上の軍事拠点を作り始めた。

 南西諸島は九州の最南端である鹿児島から台湾を結ぶ海域に一列に位置する長さ1200キロメートルの島嶼群だ。中国が太平洋へと進む通り道に位置している。2010年代半ばから西太平洋への進出を試みる中国と、これを牽制する米日同盟の間で熾烈な駆け引きが行われる「新冷戦の最前線」だ。

 東アジア地域に対する米国の軍事的関与を阻止しようとする中国の軍事戦略「接近阻止・領域拒否」(A2・AD)の中核である第1列島線とぴったり重なる。中国は米空母などの戦略資産が第1列島線内にむやみに接近できないようミサイル戦力を強化する一方、さらに同線を越えた西太平洋まで活動の半径を広げようとしている。今月3~8日にも、中国初の空母「遼寧」が沖縄本土と宮古島の間を通過して太平洋に南下した後、艦載機と艦載ヘリコプターが100回も離着陸する厳しい訓練を行った。

 これに対抗して、日本政府は南西諸島に対する軍備を強化してきた。鹿児島県の奄美大島、沖縄県の宮古島にミサイル部隊を配置し、来年石垣島と沖縄本島(うるま市)にミサイル部隊を新たに設置する予定だ。こうなれば、南西地域4カ所で中国を牽制する「ミサイル防衛システム」が完成する。これらの島に「03式中距離地対空誘導弾」と「12式地対艦誘導弾」を配備し、米軍と合同演習を行うなど、協力を強化していく予定だ。防衛省はまた、来年末までに台湾と最も近い与那国島に電子戦部隊を常駐させ、鹿児島県馬毛島にも自衛隊基地の建設を推進している。

島の住民たちは2015年にミサイル基地建設計画が発表された時から反対活動を続けている。毎週水曜日午後5~6時には市内で、木曜日午前9~10時にはミサイル部隊前で抗議行動を行っている。今月11日、市内の抗議行動の様子=キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 台湾の有事など万一の事態が発生すれば、この地域に配置された兵力とレーダー・ミサイル網が中国を狙うことになる。逆に中国が台湾に対する軍事行動を決断すれば、それに先立ち同基地を先制攻撃することも考えられる。岸信夫防衛相は3月29日の記者会見で「南西方面の防衛態勢の強化は極めて重要な課題」だとし、今後南西シフトを続ける計画を明らかにした。米国はこの計画を積極的に支援している。

 12日午前9時、陸上自衛隊ミサイル部隊正門前で宮古島住民による抗議活動がいつも通り始まった。すでに1649回目。73歳の清水事務局長は「私たちの力で今の状況を大きく変えるのは難しいかもしれないが、小さな声でも最後まで守ることが大切だ」と語った。住民たちは拡声器を持って叫んだ。「宮古島にミサイル基地はいらない。私たちは平和を望む!」

宮古島/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1043151.html韓国語原文入力:2022-05-1711:22
訳H.J

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