国連の200人あまりの元高官が、ウクライナ戦争への対応の努力不足で国連の存立が脅かされていると批判し、アントニオ・グテーレス事務総長に積極的な役割を果たすよう求める書簡を送った。
「ガーディアン」は19日、国連のジェフリー・フェルトマン元事務次長、ホセ・オカンポ元事務次長、アンドリュー・ギルモア元事務次長補らが、ウクライナ戦争に対するグテーレス事務総長の消極的な態度を批判し、「行動」を求める書簡を同氏に送ったと報道した。
彼らは、国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアがウクライナに侵攻したことで、国連が存在論的脅威に直面しているとし、「我々はウクライナ危機に対する重要な人道的対応に加え、国連の政治的存在と大衆的関与が見たい」と述べた。また、臨時休戦をはじめとする、平和を取り戻すための国連の「明確な戦略」が必要だと述べた。彼らはグテーレス事務総長に対し「この大きな危機に真っ向から立ち向かうという国連の決意を示すために」戦争被害地域を訪問したり、双方の当事者と対話したりなどの努力が必要だと指摘した。 平和交渉に積極的に関与するために、国連事務総長の執務室を臨時に欧州に移転しようとも提案した。
グテーレス事務総長は、戦争を起こしたロシアを強く批判しており、ロシアを糾弾するための国連総会の開催などに関与してきた。しかし現場は訪問しておらず、事態解決のための実質的な仲裁の役割も示せていない。同紙は、1961年の米国とソ連による「キューバ危機」や、1991年の湾岸戦争の際には、当時の国連事務総長が積極的な仲裁に努めたと指摘した。2003年に米国がイラクに侵攻した際には、バグダッドに派遣された国連事務総長の特使がテロ攻撃で死亡してもいる。
書簡の作成者たちは、事務総長に積極的な役割を果たすよう注文しているのは「今回のような歴史的段階において、国連が実存的挑戦に直面していると懸念しているから」だと述べた。また「国連は徐々に無意味化しており、前身の国際連盟が経験した運命に屈服しつつある」と指摘した。国際連盟は第1次世界大戦後に世界平和を担保するために設立されたものの、米国が参加しない中、欧州諸国同士の対立の場へと変質し、無気力の中で第2次世界大戦を防ぐこともできなかった。
国連の元高官たちが、国連(国際連合)が国際連盟の轍を踏んでいるとまで指摘したのは、今月5日のウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領による国連安保理でのオンライン演説と関係がある。ゼレンスキー大統領は、国連憲章と国連安保理があるにもかかわらず、ロシア軍の侵略と戦争犯罪にはなす術を持たないとし、「こんな有様なら国連を解体しよう」と述べている。
いっぽう、グテーレス事務総長は復活祭週間を迎えるにあたってロシアとウクライナの双方に4日間の休戦を提案した。