欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が、加盟国に対し、種類を問わずウクライナにできるだけ迅速な兵器支援を行うよう求めた。オラフ・ショルツ首相率いるドイツは、ロシアを刺激しうる戦車など大型兵器を支援すべきかどうかをめぐり、頭を悩ませている。
フォンデアライエン委員長は17日付のドイツの「ビルト」とのインタビューで、「(兵器支援が可能な)加盟国は迅速に(ウクライナに兵器を)渡すべきだ。なぜなら、これがウクライナがロシアとの防衛闘争で生き残る唯一の道であるからだ」と述べた。フォンデアライエン委員長は8日、外国の首脳の中で初めて、ロシア軍が民間人を大量虐殺したという疑惑が浮上したウクライナのブチャを訪問した。そして「私はこの(ブチャ)訪問で、ロシアの残忍で不当な侵攻を阻止するために、可能な限りのことをしようと改めて決意した」と述べた。
フォンデアライエン委員長は、「ウクライナに重火器を提供することに賛成するという意味か」という質問に対し、「私は重火器と軽化器を区分しない。ウクライナが自国の防衛に必要で、扱えるものなら、何でも必要だ」と答えた。また、最悪の場合、戦争が数年間続く可能性があるとし、欧州連合(EU)の6度目の制裁案としてロシア最大手銀行スベルバンクの制裁と石油禁輸措置も検討していると明らかにした。
ロシアが2月24日にウクライナを侵攻した後、米国が提供した携帯用対戦車ミサイル「ジャブリン」などはロシアの侵攻を防ぐ上で主要な役割を果たしてきた。ウクライナは平原の多い東部攻撃に集中して戦力を再整備しているロシアに対抗するためには、戦車や装甲車などの大型兵器が必要だとし、支援を要請している。チェコは今月初め、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の中で初めてウクライナに旧ソ連時代に開発されたT72M戦車を、スロバキアはウクライナの防空網を強化するため地対空ミサイルS300を支援した。米国も今月13日、ヘリや装甲車などの大型装備の支援を公言した。
「ビルト」によると、ウクライナ政府は最近、ドイツ連邦軍の自走砲PzH2000の支援を要請したが、ドイツは2024年までにこれに代わる新しい自走砲を支給できないとの理由で、慎重な態度を示した。ウクライナはレオパルト戦車やマルダー装甲車、ゲパルト自走対空砲の支援も要請したが、ドイツはまだ決定を下せずにいる。ドイツはロシアの侵攻前にヘルメット5000個を支援し、ウクライナから「次は枕を提供するのか」と非難された。
ドイツが攻撃用大型兵器支援に踏み切れない根本的な理由は、ロシアとの直接的な軍事衝突を懸念しているためだ。ワシントン・ポストは12日付で、ロシアが米国に「(ウクライナの武装化は)地域と国際安保に予測不可能な結果を意味する」とし、ウクライナに対するNATOの兵器支援の中止を求める外交文書を送ったと報じた。ショルツ首相が属する社会民主党は、大型兵器を支援するためには「NATOの統一的見解が必要だ」と主張している。ドイツ独自の判断ではなく、NATOレベルの決定に基づくべきという立場だ。
こうした慎重論について、連立政権に参加している緑の党のアントン・ホーフライター議員は14日、「首相がウクライナの状況を悪化させるだけでなく、欧州と世界でドイツの評判を貶めている」と批判した。ショルツ政権は翌日の15日、ウクライナに対する国外軍事援助予算を20億ユーロに増やすと発表した。ドイツのマルコ・ブッシュマン司法相は16日、「ビルト」とのインタビューで、戦車のような大型兵器を提供しても、ウクライナが防御的用途に使用する限り、国際法上ロシアとドイツが戦争に突入することはないと述べ、支援の可能性を残した。