米国下院は、ロシアとの「恒久的な正常貿易関係」の断絶を規定した法案を、賛成424票、反対8票という圧倒的な票差で可決した。この表決は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が動画で米国の上下両院の議員に支援を訴えた翌日に行われた。
「正常貿易関係」とは、米国がかつて最恵国待遇と呼んでいた関係で、特定国との貿易関係において他国に付与したのと同じ地位を付与するものだ。米国は、この関係から除外された場合、世界貿易機関(WTO)非加盟国に相当する関税率を自動的に適用するようにしている。法案は、ジョー・バイデン大統領にロシア産商品に高率の関税を課す権限も付与した。米国は、ロシアから石油以外には主に金属などの天然資源を輸入している。ロシア産アルミニウム、合板、肥料などが新たな貿易制裁の対象になるものとみられる。
バイデン大統領は最近、正常貿易関係の清算を推進すると明らかにし、ロシア産商品に高率の関税を課すと予告したことがある。当時バイデン大統領は、ロシア産ウォッカ、海産物、ダイヤモンドに対する輸入禁止も発表した。今回の法案は、ロシアだけではなく、その「兄弟国」のベラルーシも対象にしている。
今回の法案には、人権侵害に関係したロシアの官僚に対する制裁を容易にする内容も含まれている。通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は、「WTOにおける米国の発言権と影響力を利用し」、他の国々もロシアに対する貿易上の恩恵を撤回し、ベラルーシのWTO加盟を防ぐよう努力しなければならないという内容も含まれた。
下院で反対票を投じた共和党議員8人は、ロシアに対する圧力の増大に反対するというより、バイデン大統領に過度な権限が与えられている点を反対理由に挙げた。上院も同様の法案の迅速な処理方針を明らかにしており、同法律は早期に施行されるとみられる。
米国はすでにロシア産の石油と天然ガスの輸入を中断しているため、この法律の経済的な影響は大きくないだろうという見通しも出ている。しかし、他の主要7カ国(G7)加盟国も似た動きを示しており、ロシアはいっそう経済的圧力を受けることになると予想される。