「ショートトラックには3つのルールがある。第1に、新型コロナウイルスにかからないこと。第2に、転ばないこと(韓国はこれで失敗する)。第3に、ペナルティーを受けないこと」
今月7日、オランダのショートトラック選手スザンネ・シュルティング(25)が自分のインスタグラムアカウントに記した話だ。シュルティングのセンスある要約は、ショートトラックの複雑な断面を示している。1位で決勝ラインを通過することよりも、転倒と失格に気をつけることの方が重要だというのだ。1000分の1秒まで測定するレースだということを考慮したとしても、ショートトラックには特に調整と紛争が多い。1992年に五輪の正式種目として導入されて以来30年間、偏向判定、特定国家の優遇などの雑音が絶えたことがない。
分岐点は2002年のソルトレークシティ冬季五輪だ。いわゆる「アントン・オーノのハリウッドアクション」により、初代ショートトラック五輪チャンピオンの輩出国である韓国とショートトラックとの奇妙な愛憎関係が始まった年だ。男子1500メートル決勝戦の最後の1周のコーナーを回っていた時、先頭のキム・ドンソンをぴったり追っていたアントン・オーノ(米国)が両手を挙げて妨害を受けたというような動作を取り、これが競技直後にキム・ドンソンの反則と認められてキムは失格となった。
波紋は広がっていった。韓国選手団は閉会式の不参加まで取り上げて国際オリンピック委員会(IOC)と国際スケート連盟(ISU)に強く抗議し、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴したが、まもなく棄却された。続いて同大会の男子1000メートル決勝では、アン・ヒョンスとオーノ、李佳軍(中)がもつれて転倒したため、最も後ろで徐行していたスティーブン・ブラッドバリー(豪)が金メダルを獲得。5000メートルリレーではミン・リョンがラスティー・スミス(米)に押されて転倒し、失格となった。男子代表チームはショートトラック初の「ノーメダル」となった。
ソルトレークシティ大会の次の大会から、ショートトラックにはビデオ判定制度が導入された。より公正な判定のための措置だったが、むしろ混乱が拡大したという評価がある。「ニューヨーク・タイムズ」は2018年に「ショートトラックには2つのゴールラインがある。氷上のゴールラインと競技終了後のビデオ判定というゴールライン。いかなるスポーツも(ショートトラックのように)ビデオ判定をあのように長く、望むやり方で用いたりはしない」と報道している。ビデオ判定が試合結果を調整することが多くなり、主客転倒となってしまったということだ。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」も、ショートトラックの混合リレー、女子500メートル、男子1000メートルの予選が行われた5日だけで「23レースのうち4分の1以上がビデオ判定後、結果が修正された」と指摘している。2回目のショートトラックのメダルデーだった7日にも、男女競技の16のレースで、韓国のファン・デホンとイ・ジュンソを含めて15人がペナルティーやイエローカードを受けた。どんなに素晴らしい追い抜きを演じ、劇的にゴールインしたとしても、1人の審判のお眼鏡にかなわなければ脱落することになる。五輪の審判は通常、競技を見る審判長と補助審判2人、ビデオ審判1人の計4人からなる。ビデオを見直す状況になれば、主審とビデオ審判が共に映像を確認する。
ひとつの競技でも評価はまちまちだ。前回の平昌(ピョンチャン)冬季五輪女子3000メートルリレーでは、タッチ後に倒れたキム・アランの足に引っかかってカナダの選手が転倒したにもかかわらず、韓国には何のペナルティーも与えられなかったとの批判が外国メディア中心に提起された。一方、韓国では当時、范可新(中国)がゴール直前にチェ・ミンジョンを腕でおさえつけている動作を見れば、中国の失格こそ正当だという意見が多数だ。ニューヨーク・タイムズは「確定的な状況はまれなため、ビデオ判定は論争を鎮めることができない。ルールは主観的で、論争は頻繁に起きる」と述べている。