ディーゼル車の窒素酸化物低減装置(SCR)に使用される尿素水の供給難は、なかなか解決の糸口を見出せずにいる。ややもするとディーゼル貨物車の運行が難しくなり、物流に大きな支障を来たす恐れがあるため心配だ。今回の事態は、韓国が産業用尿素の輸入量の大半を依存してきた中国が、自国内の肥料供給に支障が出ていることを理由に、突然輸出制限措置を取ったことから始まった。2019年7月の日本の半導体素材輸出規制の際にも確認したが、特定品目の輸入を一国に全面的に依存することの危険性を、今回の事態は改めて浮き彫りにしている。
中国関税庁は先月11日、尿素を含めた29の化学肥料関連品目に対し、輸出検査を実施するよう指針を下した。このため、産業用尿素の97%を中国から輸入してきた韓国は、尿素水の原料である尿素をほとんど輸入できずにいる。中国は、米中対立の渦中に米国の側に立ったオーストラリアからの石炭輸入の中止後、石炭不足と電力難が重なり、化学肥料の生産に支障を来たしたことから、このような措置を取った。
尿素水供給難に対応して、大統領府は5日、アン・イルファン経済首席を中心とするタスクフォース(TF)を設置した。まず、中国との積極的な外交協議で問題解決を模索しなければならない。中国は輸出規制ではないと主張しているのだから、迅速な通関を積極的に要請する必要がある。産業用を車両用として使えるかどうかなどの代案も速やかに検討し、国内需要者に伝えるべきだ。不安は買い占め心理を膨らませ、品不足をさらに悪化させるからだ。
特定国家に大きく依存してきた素材や部品の供給難により、完成品製造企業と消費者が困難に直面することが年々多くなってきている。最近、欧州はロシアの供給制限で天然ガス価格が急騰し、苦境に立たされている。中国が電力難のせいでマグネシウム製錬所を閉鎖したため、欧州の完成車メーカーは車体を軽量化するための素材であるマグネシウムの供給不足で困難を強いられている。日本は2019年に韓国への半導体素材の輸出を規制し、中国は2010年に日本へのレアアース輸出を規制している。
特定の素材や部品の生産と供給をいくつかの国が独占するようになったのは、自由貿易が拡大したことで「特化」が実現した結果だ。ところが米中対立をはじめとする国家間の貿易摩擦が頻発しており、それが素材や部品を輸入する国にとっては新たなリスクになっている。一朝一夕に実現することではないが、主要素材・部品の「輸入先多角化」を真剣に模索すべきだ。