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開発途上国に莫大な借金残した中国の一帯一路、「融資帝国主義」のワナだったのか

登録:2021-10-19 10:01 修正:2021-10-19 11:33
中国発の債務危機に直面した低所得国家 
中国、アジア・アフリカ・欧州などに 
基盤施設の建設支援する事業を実施 
 
一帯一路事業に参加した途上国 
事業費の大半を中国銀行から融資受け 
約40カ国がGDPの10%の債務抱える
中国の一帯一路参加国の地図(左)と中国に対して隠れた「政府債務」を過度に抱えている国//ハンギョレ新聞社

 世界の金融市場を恐怖に陥れた中国の不動産会社「恒大集団」の債務とは比べものにならないほどの波及力を持つ、もう一つの中国発の「借金の恐怖」が浮上している。中国がアジアやアフリカなどの開発途上国でこの20年間進めてきたインフラ事業で、これらの国が抱えることになった莫大な借金だ。この債務がコロナ禍で困難に陥った開発途上国を深刻な外債危機に陥れる「時限爆弾」になる可能性があるという懸念の声があがっている。

 米国「ウィリアム・アンド・メアリー・カレッジ」所属の国際開発研究チームである「エイドデータ」は、2000~2017年に承認され今年までに執行された中国の海外支援事業1万3427件を分析した報告書をまとめた。中国は2013年、21世紀型シルクロードを通じてアジアや欧州、アフリカなどを包括する経済圏を構築するという「一帯一路」事業を公式宣言したが、それ以前から開発途上国で多くの開発事業を進めてきた。

 同報告書はこの18年間に中国が世界165カ国で推進した事業は8430億ドル規模に達しており、これまで公開されなかった「政府債務」3850億ドルを新たに確認したと明らかにした。報告書は、中・低所得国の場合、中国への債務が国内総生産(GDP)の10%水準に達し、このうち60%はこれまで公開されていなかった債務だと説明した。研究チームの責任者のブラッド・パークス氏は、英国のフィナンシャル・タイムズ紙に「隠れていた債務3850億ドルを初めて確認したとき、私は息が詰まるほど驚いた」と述べた。「こうした債務の大半は開発途上国政府の公式会計に含まれないが、直接・間接的な形で政府が支払いを保証したもの」だとし、「このため公的債務と民間債務の区別が曖昧になった」と説明した。名目上、民間部門が中国政府や金融機関から借りた資金であっても、結局政府が債務を背負う恐れがあるうえ、その金額がいくらなのかも透明に公開されていないという指摘だ。

 同報告書は、隠れた債務の代表事例として、中国の昆明とラオスの首都ビエンチャンの間の高速鉄道事業を取り上げた。この事業には、ラオスの年間国内総生産(GDP)の3分の1に当たる59億ドルがかかっており、このうち60%に当たる35億ドルは事業主体である「ラオス-中国鉄道」(LCRC)が中国輸出入銀行から融資を受けた。この融資には、同社が収益を上げられない場合、ラオス政府が肩代わりするという条件がついている。さらに、ラオス政府はこれとは別に、中国輸出入銀行から4億8千万ドルを借り、同社に資本金として投資した。

 「ラオス-中国鉄道」の持ち株の70%は中国国営企業3社が保有しているが、これら企業は債務未償還の責任を負わない構造で法人が構成されている。ラオス政府は、今年営業に入った同社が6年目の2027年までには黒字転換が可能だと楽観視しているが、主な収入源となる中国-タイ間の貨物・旅客事業の見通しは不透明だと報告書は指摘した。

ラオスの首都ビエンチャンの高速鉄道駅で2人の女性が今月16日(現地時間)、新たに導入された電車の前で記念写真を撮っている/新華・聯合ニュース

 このように、これまで隠れていたラオスの債務はGDPの35%にのぼる。トルクメニスタン(23%)、トンガ(21%)、カザフスタン(16%)、ブルネイ(14%)、アンゴラ、モザンビーク、ナミビア(いずれも12%)、コンゴ民主共和国とパプアニューギニア(11%)も隠れた債務負担が大きい国に挙げられる。

 同研究チームは、2000年以降、中国の国際開発資金の提供額は年平均850億ドルで、米国(年平均370億ドル)の2.3倍に達すると集計した。このうち、純粋な支援金は全体の3%程度にとどまり、残りの大半は金融機関が提供した融資金だ。「一帯一路」など中国の海外事業は、開発途上国への支援というよりも、商業融資の性格がはるかに強いということだ。同報告書の指摘によると、中国が一帯一路事業を拡大し、国有の商業銀行が提供する資金の割合が高まったことで、途上国の担保提供の負担もさらに重くなった。中国の銀行は資金の未回収リスクを減らすため、開発途上国の未来原材料輸出契約などを担保に取ることが多く、金利も6%水準とかなり高い。全体融資金のうち担保融資の割合が高い国としては、ベネズエラ(92.5%)、ペルー(90.0%)、トルクメニスタン(88.6%)、赤道ギニア(80.3%)、ロシア(76.6%)が挙げられる。

 中国は、海外事業の初期には主に政府機関に資金を支援したが、徐々に国営企業や民間へと融資対象を切り替えてきた。このため、国営企業や銀行、特殊目的法人、合弁企業、民間企業などに提供された資金が全体の70%にのぼる。こうした融資対象の変化は、政府会計に現れない「隠れ債務」が雪だるま式に増えた要因に挙げられる。さらに、多くの事業が施行過程で少なからぬ社会問題も起こした。全体事業の35%が不正腐敗や労働基準違反、環境破壊をめぐる議論を呼んだり、住民の抗議デモを触発し、事業に支障をきたしたと報告書は伝えた。同研究チームは「中国はこの20年間で自国を低・中所得国家が真っ先に依存する投資家として地位を固めたが、中国の事業推進内訳はこれまで秘密のベールに包まれていた」と指摘した。

 開発途上国の負債が争点に浮上している中、米国が対応に乗り出した。米国は今月初め、経済協力開発機構(OECD)とともに健全なインフラ事業を目標にした「コネクティング・ザ・ドッツ」計画を発表した。同計画は、開発途上国の開発事業などで頻繁に起きている不正を撲滅し、高品質な基盤施設の構築を支援することに注目している。米国務省によると、この計画は中国の一帯一路事業に対する代案として、米国、オーストラリア、日本が2019年に提案した「ブルー・ドット・ネットワーク」を補完する性格を帯びる。アントニー・ブリンケン国務長官は「外国労働力に依存し、資源を搾取して借金だらけになる方式の事業を(開発途上国に)推進する国がある状況で、我々は他のアプローチを擁護するために集まった」と述べ、中国を間接的に批判した。さらに「我々は志を共にする各国政府や民間企業、市民社会の協力者とともに、持続可能な高品質の基盤施設の構築への努力を促進する」と付け加えた。

 香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙は、米国など西側の商業金融機関がアフリカなどの低開発国を危険な投資対象に分類して融資を避けてきたことで、中国が事業領域を拡張する余地を残したと指摘した。こうした状況で、米国の最近の動きは「健全な国際基準」に合致する事業を認証することで、主要7カ国(G7)などの投資を促進しようとするものだと分析した。これに先立ち、6月にはG7が2035年までに開発途上国に必要な40兆ドル規模の投資に協力する構想(B3W)を発表した。

 英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのクリス・オールデン教授(国際関係学)は「ブリンケン長官の宣言は、中国の一帯一路事業が支配するインフラ投資市場、特にアフリカ市場のシェアを回復しようという協調の試みに基づいたもの」と説明した。同志社大学のセイフディン・アデム教授(グローバル・スタディーズ)も「米国の試みは中国の政策と動きへの対応」だとし、このような発想は2016年に安倍晋三元首相も言及したことがあると指摘した。このため、米国と中国がアフリカなどをめぐって対決する様相へと事態が展開する可能性もあるものとみられる。

 しかし、米国と中国が互いを排除する競争にこだわらず、事業を推進する余地はいくらでもあるという指摘もある。ジョージ・ワシントン大学のデイビッド・シン教授(国際関係学)は「G7と中国の計画はその性格に違いがあり、あえて互いを排除する方式で進める必要はない」とし、「両者が互いに距離を置くほど、より望ましい結果が得られるだろう」と指摘した。

シン・ギソプ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1015685.html韓国語原文入力:2021-10-1904:59
訳H.J

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