世界の新型コロナウイルス大流行が徐々に安定に向かっているのとは対照的に、ロシアの状況は日増しに悪化している。独自開発したワクチンはあるものの、国民のワクチン接種率は低く、政府が経済状況を気にしているため防疫統制が弱く、事態は沈静化していない。
ロシア国内のコロナによる死者の数は16日(現地時間)に1002人を記録し、昨年初めの流行開始以降、1日当たりで最も多くの犠牲者数となった。ロイター通信などが報じた。感染者も3万3208人確認され、5日連続で最高値を記録した。これに伴い、ロシアの公式累計感染者数は795万8384人、死者は22万2315人となった。累計死者数は米国、ブラジル、インド、メキシコに続き、世界で5番目に多い。
ロシアのコロナ禍の状況は、昨年5月の第1次危機、12月の第2次危機、今年7月初めの第3次危機を経て沈静化の兆しを見せていたが、9月初めから再び悪化している。特に死者は今年6月末以降増え続けている。世界保健機関(WHO)に報告された政府の公式集計によると、7月初めには1日の死者数は670人程度だったが、8月初め以降は800人に迫り、10月に入ってからは再び急増している。
ロイター通信によると、ロシア統計庁が別途集計しているコロナによる死者数は、政府発表値の2倍近い。統計庁の今月9日の発表によると、8月だけで4万9389人がコロナ感染によって死亡した。昨年4月から8月までの累計死者数は41万8000人だった。
2つの統計に大きな差が見られるのは、政府はその日に報告された死者数のみを集計し、追加検証を行っていないのに対し、統計庁は月単位で死者数を検証して集計しているためだ。一部の学者は、平時の死者数の平均値を超える部分、すなわち「超過死亡」を基準としなければ犠牲者の正確な規模は把握できないと指摘する。ロイター通信は、2015~2019年のロシアの平均死亡率をもとに超過死者数を計算すると、昨年4月から今年8月までの死者は約57万5000人と推計されると伝えた。
ロシアのコロナ禍の状況が日増しに悪化する最大の原因としては、ワクチン接種率の低さが挙げられる。国際統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、15日現在のロシアの人口に対する1次接種率は34.4%で、接種完了率は31.3%。欧州大陸の平均(1次58%、完了54%)はもちろん、世界平均(1次47%、完了36%)にも満たない。ロシアは「スプートニクV」などのワクチンを早期に開発して輸出も行っているが、国民のワクチン不安の解消には失敗しているわけだ。
このような状況にもかかわらず、政府と議会は経済への打撃を懸念して統制強化を避けている。上院に当たるロシア連邦院のワレンチナ・マトヴィエンコ議長は「状況は容易ではないが、連邦レベルの封鎖を取る根拠はない」と述べたと、国営のタス通信が伝えた。代わりに当局は、国民のワクチン忌避ばかりを言及している。政府報道官は「感染者が増えている状況では、ワクチン接種を説得し続けなければならない」とし「ワクチンを接種しないのは本当に無責任な行動」と述べた。
英国BBCの報道によると、政府は医療システムは増加する入院患者に十分対応できるとしているが、ミハイル・ムラシュコ保健相は仕事をやめた医師たちに現場復帰を求めているという。