昨年オーストラリア産石炭に対する禁輸措置を取った中国が、最近の深刻なエネルギー難により、一部のオーストラリア産石炭の通関を許可したことが分かった。しかし、今回の措置が全面的な禁輸の解除につながる可能性は、あまり高くなさそうだ。
船舶の売買やレンタルの仲介企業「ブレーマーACMシップブローキング(Braemar ACM Shipbroking)」のニック・リスティック氏は、非公式の禁輸措置が昨年発効して以降、中国の港の外で待機していたオーストラリア産の石炭45万トンが、先月入港して積み下ろされたと述べた。「フィナンシャル・タイムズ」が5日に報じた。
エネルギー調査機関「Kpler」も、港外で待機していた5隻の船が先月、オーストラリア産の石炭38万3000トンを中国の港で下ろしたと発表した。
専門家たちは、中国の税関当局がこれらの石炭の通関を認めるというシグナルを最近送ったことをあげ、今回陸揚げされた石炭が他国に転売された可能性はほとんどないとみている。
中国は昨年4月、オーストラリアのスコット・モリソン首相が中国に対し、新型コロナウイルスの起源についての独立的な調査を要求したことから、これに対する報復措置を取った。オーストラリア産牛肉の禁輸、ワインなどの農産物に対する関税率の大幅な引き上げに続き、エネルギー企業には口頭で「オーストラリア産の石炭を輸入しないように」と指示したという。
エネルギーに関するコンサルティング企業「ウッドマッケンジー(Wood Mackenzie)」によると、このような非公式の禁輸措置により、2019年には5000万トンに達していた中国によるオーストラリア産石炭の輸入は、昨年は3500万トンに減り、昨年11月以降は輸入量が実質的に「0」水準に落ち込んでいる。
しかし中国は最近、一部の地域で工場の稼動時間を制限するなどの深刻なエネルギー難に見舞われていることから、新規の輸入ではなく待機中のものではあるものの、ひそかにオーストラリア産石炭の陸揚げを認めたのだ。これは逆説的に、中国のエネルギー難がどれほど深刻かを示す象徴的な例と解釈される。
しかし、今回の措置が中国当局の全面的な政策転換のシグナルである可能性は高くないとの見方が多い。市場情報企業IHSマークイット(IHS Markit)のララ・ドゥーン氏は「政策緩和のシグナルに見えるが、オーストラリア産石炭の禁輸措置に大きな変化が起きることを意味するものではないと思う」と述べた。
中国は石炭の供給不足と価格上昇のせいで、深刻なエネルギー難に陥っている。中国が国慶節の連休に入る前の先月30日には、鄭州商品交易所で石炭は先月より75%高い1トン当たり393.60元(25万8000ウォン、約2万4000円)で取引された。
中国はオーストラリア産石炭の空白を埋めるために、それ以外の国からの輸入を増やしている。浙江省が6月と7月に米国から石炭を輸入しのに続き、4日には初めてカザフスタン産石炭を輸入している。最大の石炭輸入元であるインドネシア、ロシア、モンゴルなどからの石炭輸入を大幅に増やそうとも試みている。しかしロイターによると、インドネシアは雨期が重なったため追加の輸入量の確保が困難であり、ロシアとモンゴルも鉄道の輸送能力の不足で限界が見えているという。