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[インタビュー]西野教授「岸田総裁、日韓関係を悪化させることはないだろう」

登録:2021-10-04 06:37 修正:2021-10-09 12:49
西野純也慶応義塾大学教授 
「中途半端な合意より持続可能な日韓関係を考えるべき」 
国際情勢の変化で両国が協力する領域も拡大
西野純也慶応義塾大学教授が今月1日、慶応義塾大学で岸田文雄政権における韓日関係の見通しについて語っている=東京/キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 西野純也慶応義塾大学教授(政治学・現代韓国研究センター長)は、4日に公式発足する岸田文雄政権における韓日関係について、「韓国は大統領選挙、日本は総選挙を控えているこの時期に、何か中途半端な合意をしようとするのは望ましくない」とし、「持続可能な日韓関係のために協力できる部分を広げていくことが重要だ」と述べた。今月1日、東京都港区にある慶応義塾大学で行われた本紙とのインタビューで、西野教授は「岸田(自民党)総裁は、これ以上日韓関係を悪化させることなく、長期的に改善しようとする努力はするだろう」と見通した。一方で「日韓関係だけに焦点が当てられすぎると、できることが少なくなる。両国の外交安保政策の枠組みの中で相手国をどう位置づけるべきか、考えなければならない」と助言した。

-岸田総裁を語る際、彼が率いている「宏池会」(現在の岸田派)は欠かせないだろう。

 「伝統的に宏池会がアジア外交に力点を置いてきたのは事実だ。派閥の性格や岸田総裁の個人的性向も重要だ。しかし、それとともに構造的要因、周辺環境をよく見なければならない。米中戦略競争があまりにも激化している。はたして日中関係の改善を目指すことができるだろうか。日韓関係も2015年の外相を務めた当時、『慰安婦』合意を行っており、どれほど難しいかはよく知っているはずだ。短期的に関係改善は容易ではないかもしれない。ただし、これ以上関係を悪化させることなく、長期的に改善しようとする努力はするだろう。彼は著書『岸田ビジョン 分断から協調へ』で、北朝鮮など日本の安保のために韓国と協力すべきという点を明らかにしている。外交や安保だけでなく、経済政策など岸田政権が成功するためには『岸田カラー』を出せるかどうかがカギになるだろう」

-安倍政権時代、最悪の状況に突き進んだ韓日関係は、菅政権で事実上固着化した。首脳会談は実現せず、日本の外相は駐日韓国大使に会っていない。

 「日韓関係は歴史問題という懸案もあるが、両国首脳がどのようにシグナルを送るのか、どのような意志を示すかが非常に重要だ。韓国国民は安倍前首相に失望しているのではないか。岸田総裁はスタイルが違う。言動に気を配り、慎重である。実質的な進展は期待できない状況でも、対話を模索するだろう。しかし、衆院選のため、自民党や世論を意識せざるを得ない。持続可能な日韓関係を考えると、この時期に中途半端に何か合意するのは望ましくないだろう。(合意はしたが、問題が解決しなかった)2015年の『慰安婦』合意経験を照らしてみるとそうだ。協力できる部分を広げていくことが重要だ」

-それでも2019年に行われた韓国に対する日本の輸出規制措置は歴史問題と切り離して解決できるのではないか。

 「早く解決した方がいい。韓国政府は昨年、政策対話、人員拡充など日本が要求した事案を改善したと発表した。(強制動員被害をめぐる韓国最高裁の判決などとの関連で)日韓が直接解決するのが難しいなら、日米韓など他の枠組みを通じて経済安保の観点で解決するのも一つの手だ。今年の韓米首脳会談、主要7カ国(G7)+3を見ると、韓国政府もサプライチェーンの再編などが韓国の利益につながっているとして重要視している。岸田総裁も経済安保をかなり強調している。輸出規制問題は経済安保レベルで韓日が共に協力すべき課題として実用的にアプローチできると思う」

-北朝鮮核問題をめぐる足並みの乱れも韓日の大きな対立要素と思われる。日本は「CVID」(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を強調するなど強硬な姿勢を見せている。

 「日韓関係は歴史問題ばかりが注目されているが、遠心力として作用するのが北朝鮮政策とインド太平洋戦略だ。2018年に朝鮮半島平和プロセスが稼動した当時、日韓は足並みがそろわなかったが、ドナルド・トランプ米大統領は調整や協調に努力を全くしなかった。ジョー・バイデン政権は違う。日韓の声を聞き、一つの枠組みに収めようと努力している。協力可能な空間があると思う。日韓、日米韓が歩調を合わせていくためには、次の3つがカギとなるだろう。非核化の方法、北朝鮮の核の脅威に対する抑止面での防衛力のレベル、そして今後浮上する可能性が高い人権問題だ。広島が政治的基盤である岸田総裁は、核問題や人権に強硬な態度を示してきた。足並みが乱れないよう、緊密に調整していかなければならない」

岸田文雄自民党総裁が先月29日、党総裁選挙の勝利後、東京で記者会見を行っている様子。岸田総裁は4日、日本の首相に就任する=東京/新華社通信・聯合ニュース

-持続可能な韓日関係の側面で、米中対立に対する協力も重要に思える。

 「日韓が互いをちゃんと見ることが必要だ。日本は、韓国が中国に近づこうとしていると思っている。このような認識が強いため、韓国が中国について頭を悩ませていることや韓国の反中感情、(ASEAN諸国との協力強化が盛り込まれた)新南方政策などを見ようとしない。一方、韓国も、日本は常に米国寄りだと判断する。中国は日本の最大の貿易相手国だ。米国が中国に対して強硬な態度を取ると、日本も困る部分がある。日韓は米中対立局面で同じ悩みを抱えている。それが見え始めたら、協力できる領域も広がるだろう」

-日本軍「慰安婦」や強制動員被害者など、歴史問題が退路もなく行き詰っている感じだ。

 「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今年、(歴史問題と関連して)次の3つを述べた。『2015年の韓日慰安婦合意は両国の公式合意だ』『日本政府の損害賠償を認めた今年1月の慰安婦に関する判決には困惑している』最後に『(強制動員被害に対する韓国最高裁の判決を受けた)現金化は望ましくない』という内容だ。日本社会は韓国の立場の変化として受け止めている。大統領の言葉なので、(次は)行動や政策が伴うことを期待して見守っている。もちろん、韓国が一方的な行動をするわけにはいかないだろう。こうした方向性を持って日韓が協議して作り上げていくのが、今の状況では最善だと思う」

-韓国は大統領選挙、日本は近く衆議院選挙を控えている。

 「岸田総裁が衆院選と来年7月の参院選に勝ってこそ、安定的に政権運営ができる基盤ができる。特に、韓国でも大統領選挙があるため、次期政権が発足するまでは、関係改善よりも管理局面に進むだろう。ただし、国際秩序が急速に変化している点は変化の要因になるかもしれない。米中関係、米国のインド太平洋戦略がダイナミックに動いている。日米韓の協力とか、インド太平洋戦略で日韓がどのように歩調を合わせるのかについて、(岸田総裁も)悩むだろう」

-日本も新しい政権が発足し、韓国も来年に大統領が変わる。

 「日韓関係だけに焦点が当てられすぎると、できることが少なくなる。両国の外交安保政策の枠組みの中で、相手国をどのように位置づけるべきかを考えなければならない。日本はこの地域の安定と繁栄、北朝鮮の核やインド太平洋戦略の実現のためには韓国が必要だ。今の国際秩序がそれを求めている。韓国も同じだ。朝鮮半島平和体制の定着は日本の協力なしには難しい」

東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1013709.html韓国語原文入力:2021-10-04 02:05
訳H.J

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