菅義偉首相が自身を首相にした一番の功労者であり自民党内の「ナンバー2」である二階俊博幹事長を交代させる意向を固めたと、NHKが31日付で報じた。自民党総裁選・衆院選を控え、党の雰囲気を変えると同時に安倍晋三前首相の意も汲んだという観測が流れている。
菅首相は先月30日に二階幹事長と会い、人事問題に関して自分の意思を伝えた。これに対し二階幹事長は「すでに5年以上にわたって幹事長の職を務めている。遠慮なく人事をやってほしい」と述べるなど、事実上交代を受け入れることを明らかにしたという。近く幹事長を含む自民党執行部の人事が行われる予定だ。
菅首相が「二階交代」のカードを切り出したのは、世論の支持率が低迷し続けている上、党内でも求心点が揺らぎ、選挙を控えて刷新が必要と判断したためとみられる。毎日新聞は、菅首相が続投するには幹事長の交代が避けられないと判断したものと分析した。
党内では、安倍政権時代の2016年8月から5年間、ポストを守っていた二階幹事長を変えなければならないという声が絶えず出ていたが、菅首相は意に介さなかった。党を安定してまとめる能力も高く評価し、何よりも常にナンバー2だった菅首相が今の地位に就いたのは、彼の政治力が大きな役割を果たしたからだ。二階幹事長は菅首相の続投も積極的に支持している。
「二階揺さぶり」に直接乗り出したのは、自民党総裁選に出馬した岸田文雄前政調会長だ。岸田氏は26日、総裁選出馬記者会見で、党執行部役員の任期について、1期1年で連続3期まで可能にすると改革案を発表した。二階幹事長を狙ったものだという主張が優勢で、党内でも共感が広がっている。
岸田氏は、二階幹事長との関係がギクシャクしている安倍前首相にも積極的に支持を求めた。安倍氏は30日、自分の事務所を訪ねた岸田氏に「出馬記者会見の評価がいい」と声援を送ったと、日本のメディアが報じた。安倍前首相は、自身の所属する自民党最大派閥の細田派だけでなく、麻生太郎副首相ら保守派議員に影響力が大きい。自民党総裁になるためには、安倍前首相の支持が切実な状況だ。
安倍前首相は菅首相の続投を支持すると明らかにしているが、雰囲気は微妙だという評価が出ている。朝日新聞は「安倍氏が『黙認』しているとの見方も強まっている」とし、「首相周辺からは『裏切りだ』との声も出始めている」と伝えた。
菅首相に対する世論が芳しくないうえ、党内の若手議員を中心に衆院選を控えて「選挙の顔」を変えるべきだという動きがあり、安倍氏が積極的に乗り出すのは負担になっているようだ。日本経済新聞は「安倍、麻生両氏は首相を支持する考えを示しているものの、細田、麻生両派とも派閥の意向は明確にせず、党内の情勢を見極めている」と伝えた。
細田派所属で総裁に挑戦する意思を明らかにした下村博文政調会長は、出馬を断念した。下村氏は記者団に対し、「出馬するために政調会長を辞任するのは党の政策責任者として責任放棄になる」と述べた。
自民党総裁選は来月29日に行われ、衆議院解散・総選挙は10月17日が有力視されている。