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「五輪の価値、連帯を語る前にまずマスク着用を」

登録:2021-07-30 02:15 修正:2021-07-30 07:18
五輪は治外法権? 見かけだけの防疫指針に危うい東京五輪
28日に東京の日本武道館で行われた柔道競技で、関係者がマスクを外して応援している。すぐ後ろではボランティアがマスクの着用を呼びかけるプラカードを掲げている=東京/五輪写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は23日、東京の国立競技場で行われた2020東京五輪開会式の演説で「連帯(Solidarity)」を14回、「共に(Together)」を12回使用した。日本国内の五輪反対世論に対抗し、五輪の価値を前面に掲げているように思われた。

 バッハ会長の言葉とは裏腹に、同日の開会式を見た日本国民の憤りはさらに強まった。一部の選手団がマスクをつけずに堂々と入場する姿がテレビで全世界に生中継されたからだ。「連帯を語る前に、まずちゃんとマスクをしろ」という不満が噴出した。翌日には東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の関係者が深刻な防疫規則違反に対しては制裁すると述べたものの、反対世論はむしろ沸騰した。29日現在、日本の新型コロナウイルス感染症の1日の新規感染者は1万人を超え、これまでで最多を記録した。

 開幕から7日が過ぎた現在、五輪の現場での防疫は抜け殻のみが残っている。28日にフェンシング男子サーブル団体で韓国が金メダルを取った千葉の幕張メッセBホールでも、多くの逸脱が見られた。同日の3位決定戦に出場したハンガリー代表チームの関係者たちは、観客席でマスクを外して競技中ずっと大声で叫んでいた。プレイブックに規定されている防疫規則に違反しているが、何の制裁もなかった。

 一部の選手も防疫指針を守っていない。選手村内からは不安を訴える声が漏れ出ている。最近では、一部の選手が授賞式でのマスク着用ルールを無視するので、結局、組織委員会は30秒間のノーマスク撮影を許可することを決めた。もちろん、今は30秒の時間制限も、互いに接触してはならないという規定も無視されている。

 記者が集まる東京のプレスセンターはマスク未着用者が溢れている。これに対し数回にわたって措置を要求したが、組織委は「良い意見に感謝している。措置を取る」と言うのみ。組織委の放置の中で、防疫規則の違反例は程度や頻度が増していっている。結局、28日には海外メディア関係者の中からも2人の感染者が出た。

28日に東京の日本武道館で行われた柔道競技で、外国人選手団の関係者がマスクを外して大声で叫んでいる=東京/五輪写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 韓国の射撃のエース、チン・ジョンオも韓国に戻り、「防疫がほとんど行われていない」と組織委を批判した。チン・ジョンオは今大会で「眼鏡が曇るなどの不便さがある」としながらも、これを受け入れて競技中にマスクをすると宣言していた。しかし、組織委員会の方がむしろ「決勝ではマスクを外さなければならない」としてこれを止めた。どうやらテレビ中継を意識した決定のようだった。

 ここまで来ると、バッハ会長の言う連帯の対象とは誰なのか、問わざるを得ない。東京五輪が連帯する人々とは、コロナと戦う平凡な人々なのだろうか。今のところ、五輪中継で利益を得る大手テレビ局と、今大会に政治的命運をかけている日本政府の立場のみを考えているように見える。組織委員会は、真に人々と共に歩もうと考えるのなら、まず定められた規則がきちんと守られるよう、実質的な措置を取るべきだ。

 選手をはじめとする参加者も、個人の防疫規則を徹底して守るべきだ。今回の五輪で選手が技量を発揮できるのは、自分の意思であれ他人の意思であれ、五輪のために大きな犠牲を払っている現地の日本人たちのおかげだ。しかし、競技場では彼らとの連帯どころか、尊重すらなかなか感じられない。

 五輪がスポーツ選手にとってどれほど大きな意味を持つのか、この舞台の表彰台に上がるということがどのような意味を持つのか、私には推し量ることは難しい。ただしメダルを首にかけてマスクをした写真を見ながら、こう言うことはできないのだろうか。「これこそまさに五輪精神だ。自分にとっての不便さを受け入れてでも、人と連帯する心。私たちはあなたと共にある」

東京/イ・ジュンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/sports/sportstemp/1005708.html韓国語原文入力:2021-07-29 14:59
訳D.K

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