文在寅(ムン・ジェイン)大統領(68)は23日、妻の金正淑(キム・ジョンスク)女史(67)とともに、アストラゼネカの新型コロナワクチンを公開で接種した。今年6月に主要7カ国(G7)首脳会議への出席を控えている文大統領は、65歳以上に対するワクチン接種が始まったその日午前、ソウル鍾路区(チョンノグ)の保健所で半袖のワイシャツの左袖を少しまくりあげ、ワクチンを接種した。国際行事への出席に向けた事前準備だが、「高齢層への効果」問題や「血栓副作用」問題などで傷ついたアストラゼネカのワクチンの信頼度を高める意図も込められている。文大統領だけでなく、各国首脳のワクチン接種は人々の主な関心事だが、各国のコロナ状況やワクチンをめぐる状況、指導者の性向によって接種のあり方も様々だ。
「私がどのワクチンを接種したのかは公開するな」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(69)もこの日、ワクチンを接種したが、通常の指導者たちとは異なり、接種の場面は公開しなかった。クレムリンは、「プーチン大統領はこれまでにワクチン接種を頻繁に広報してきたため、ワクチンに対する信頼を高めるためにワクチン接種の場面を公開する必要はない」と説明した。
プーチン大統領はさらに、ロシアで作られたワクチンを接種したと説明するだけで、どのワクチンを接種したのかは公開していない。ロシアは、スプートニクV、エピバクコロナ、コビバックの3種のコロナワクチンを開発している。クレムリンは、プーチン大統領が3種のうちどれを接種したのかを公開すれば、不必要に他のワクチンの信頼度が低下しうるとの理由を挙げている。
プーチン大統領は昨年、スプートニクVが承認された直後、同ワクチンの安全性を強調しつつも本人は接種せず、物議を醸した。「国家元首が安全性の確認されていないワクチンを接種することはできない」との理由からだが、このためロシア内外からダブルスタンダードだと指摘された。
「不安? では私が先に」
昨年3月、世界の首脳で初めてコロナに感染した英国のボリス・ジョンソン首相(56)は、19日にアストラゼネカのワクチンを接種した。ジョンソン首相のワクチン接種は、自国の製薬会社と大学が開発したワクチンの安全性を証明するためという側面が強い。自らが自国のワクチンの宣伝モデルとなったわけだ。ジョンソン首相がワクチンを接種した日は、欧州医薬品庁(EMA)が「アストラゼネカのワクチンは血栓副作用とは関係ない」と発表した翌日で、同首相はワクチン接種後「非常に良い。非常に速かった」という言葉を残した。
アストラゼネカのワクチンの血栓副作用を懸念して、同ワクチンの接種をしばらく中断していた他の欧州諸国の指導者も、同ワクチンの接種に合流した。フランスのジャン・カステックス首相が1回目の接種を終えたほか、イタリアのマリオ・ドラギ首相とドイツのアンゲラ・メルケル首相もアストラゼネカのワクチンの接種を約束している。
一方、米国のジョー・バイデン大統領も、就任前の昨年12月21日、生中継のカメラの前で米ファイザーのコロナワクチンを接種した。ワクチンの安全性と効果に対する国民の信頼を高めるためのイベントだ。米国はこれより10日前の11日にコロナワクチンの接種を開始している。
「まだ接種してない?」
世界でワクチンの生産量が最も多い中国の習近平国家主席は、まだワクチンを接種していないという。中国はシノバック、シノファーム、カンシノの3種のワクチンを開発し、全世界のワクチン生産量の3分の1にのぼる1億6940万回分のワクチンを生産している。今年初めには、自国製ワクチンの信頼度を高めるために習主席ら党幹部がまず接種すべきだという主張がなされている。
「ワクチンは我々の敵!」
東アフリカ・タンザニアのジョン・マグフリ前大統領は「コロナは悪魔であり、ワクチンは西欧が企てる陰謀」と主張し、ワクチンの導入と接種を拒否してきた。再選1年目のマグフリ大統領は、17日に突然の死去が報じられた。タンザニア政府は死因を心臓疾患と発表しているものの、西欧メディアなどはマグフリ大統領がコロナに感染して死亡したのではないかと疑っている。
週に2、3回は国営放送に登場していたマグフリ大統領は、先月に入って登場回数が顕著に減っていた。同氏がコロナに感染して重体に陥り、治療のために外国に行ったといううわさが流れてもいた。マグフリ大統領は、生姜で作った強壮剤がコロナの予防に役立つと主張したほか、昨年4月以降はコロナの感染者と死者の集計を中止するなど、コロナ防除を事実上放棄していた。