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分裂と紛争だけを残し…米国を引き裂いて退いたトランプ氏

登録:2021-01-21 10:05 修正:2021-01-21 14:31
ドナルド・トランプ米大統領が2019年8月15日(現地時間)、遊説先のニューハンプシャー州マンチェスターで演説を行っている/AFP・聯合ニュース

 米国のドナルド・トランプ前大統領は20日(現地時間)、4年の任期を終えホワイトハウスを離れたが、退任後も米国と世界に長く残る深い痕跡を残した。これは「米国の帰還」を掲げたジョー・バイデン新大統領が解決しなければならない課題でもある。

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裁判所の保守化、白人至上主義で分裂極大化、コロナ対処失敗

 トランプ氏が残した最大の遺産は、米司法府の保守化だ。彼は4年間で連邦最高裁判事をニール・ゴーサッチ、ブレット・カバノー、エイミー・コニー・バレットと3人も任命し、最高裁の理念的な傾向を「保守6、進歩3」で保守絶対優位の構図に固定させた。最高裁判所のすぐ下級である13の連邦控訴裁判所の判事も54人を任命した。前任の大統領たちが8年間で任命した控訴裁判所判事数の50~60人台とほぼ同じ水準だ。

 経済分野でトランプ氏は法人税を35%から21%に引き下げ、80件の環境・保健規制を緩和した。企業に親和的な政策などに支えられ堅調に見えた米国経済は、昨年春、新型コロナウイルス感染症に襲われて悪化した。トランプ氏は新型コロナ初期から「インフルエンザのようなもの」として軽く見なし、マスク着用も拒否して事態を大きくした。昨年10月には、大統領選挙を1カ月後に控え、本人が新型コロナに感染した。新型コロナ対処の失敗は、トランプ氏の再選失敗の主要な原因に挙げられる。これまで米国の新型コロナによる累積死亡者は40万人を超える。新型コロナで米国の失業率と財政赤字は過去最高を記録した。

 トランプ氏は白人優越主義的態度で米国社会の分裂を極大化した。2017年8月にバージニア州シャーロッツビルで起こった流血事件で白人至上主義者を非難せず、昨年5月に警察の暴力で死亡した黒人のジョージ・フロイド事件に抗議する全米のデモに対しては、「法と秩序」を掲げた強硬対応基調を取り続けた。このような態度は、一部のムスリム国家に対する米国入国制限措置などの強力な反移民政策にもつながる。トランプ氏はメキシコとの国境地帯で不法移民の親と子どもを分離する無寛容政策を展開した。メキシコ国境の壁の建設は、トランプ氏の大統領選挙の主要公約だった。彼は国境地帯の建設費用をメキシコが負担すると述べていたが、米国防総省の予算から調達しなければならなかった。

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「米国第一主義」を掲げ同盟を軽視、多国間主義を一蹴

 トランプ氏は「米国第一主義」の旗印を掲げて同盟関係を悪化させ、多国間主義を一蹴した。韓国、日本や欧州の北大西洋条約機構(NATO)などの同盟に米軍を撤退させると脅迫し、防衛費分担金の大幅引き上げを要求した。またパリ条約とイラン核合意から一方的に脱退し、リーダー国家であることを放棄し、国際保健機関(WHO)と国連人権理事会(UNHRC)も脱退した。

 米中関係は史上最悪へと突き進んだ。トランプ氏が中国と行った貿易戦争のため、米国人は3700億ドルの関税を負担することになった。貿易戦争は昨年1月の第1段階合意で休戦に入ったが、米国は香港・台湾・南シナ海問題や華為(ファーウェイ)などの技術分野に至るまで、中国と激しく対立した。トランプ氏は新型コロナを「中国ウイルス」と呼び、最後まで刺激した。トランプ氏はまた、米大統領の中で初めて北朝鮮の指導者・金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に3回も会い、北朝鮮の地(板門店北方地域)を踏むというマイルストーンを立てたが、実質的な非核化と朝鮮半島の平和の進展には至らなかった。

 トランプ氏は、対外政策の主な成果としてイスラム主要指導者の排除を挙げる。米国は2020年1月、イランイスラム革命防衛隊(IRGC)ゴドス部隊のガセム・ソレイマニ司令官を無人機で空爆・殺害した。これに先立ち、2019年10月にはイスラム教スンニ派の過激武装組織イスラム国(IS)の指導者のアブ・バクル・アル・バグダディ氏を殺害した。トランプ氏は中東で継続して親イスラエル・反イラン政策を推し進めてきた。2018年、エルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館もテルアビブからエルサレムに移し、パレスチナなどアラブ圏の反発を買った。任期末の昨年には、イスラエルと親米アラブ国であるアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、スーダンの関係正常化協定を仲裁した。

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大統領選挙不服と支持者の議事堂乱入で民主主義を破壊

 トランプ氏は分裂と嫌悪の統治を行いながらも、昨年11月3日の大統領選挙で実に約7422万票(バイデン氏約8128万票)を得て、米国史上2番目の最多得票を記録した。このようにトランピズムの威力をあらわにしたことも、彼が米国の歴史に残した事跡だ。同時にトランプ氏は、米史上11人目、1992年のジョージ・H・W・ブッシュ氏以来28年ぶりに再選に失敗した大統領として記録された。彼は大統領選挙前から暗示していたように、根拠もなく敗北を認めず、結果を覆すことを試み、米国の民主主義を全世界の嘲弄の種にした。

 アトランティック・カウンシルのシニア研究員のエマ・アッシュフォード氏は今月初め、「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿で、「自国内で民主主義が十分に作動しないのに、米国がどうして他国に民主主義を広めたり、模範国のように行動できるのか」と指摘した。

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7400万人の支持者とトランピズムはバイデン・共和党・米国の課題

 トランプ氏がいかに政策の成果を主張しようと、彼の最後の姿は大統領選挙不服と支持者たちの議事堂乱入事件、そして米史上初めて下院で二度弾劾訴追された大統領というものだ。トランプ氏は南北戦争以来最悪に分裂した米国を残して退場した。有権者の半分近くが支持したトランピズムは、バイデン大統領と米国全体の課題だ。共和党も、トランピズムから抜け出しながらも、トランプ支持層を包摂しなければならないという難題を抱えている。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/979600.html韓国語原文入力:2021-01-20 17:26
訳C.M

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