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[インタビュー]「韓日の長期的な『戦略共有』が『認識共有』を可能にする」

登録:2020-08-14 07:07 修正:2020-08-14 08:27
小此木政夫・慶応大学名誉教授 
「輸出規制と強制動員問題、同時に解決すべき」 
両国の「ミドルパワー」としての戦略共有が重要 
「一世代後の人びとのために『戦略共有』の努力を」
小此木政夫慶応大学名誉教授=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 「戦略の共有が認識共有を可能にするだろう」

 日本の代表的な朝鮮半島地域専門家である慶応大学の小此木政夫名誉教授は、最高裁判所(大法院)の強制動員被害賠償判決と関連した韓日の対立解消のためには、根本的な認識の違いを埋めるよりも、韓日が外交戦略を共有することから始める必要があると見極めた。1970年代に韓国に留学して以来、長い間朝鮮半島研究に邁進してきた小此木教授は、根本的な認識の対立を争うよりも解決策を探すことが重要という文在寅大統領の発言が問題解決に向けた正しいアプローチだと話した。インタビューは11日、電子メールを通じて行われた。

-韓日関係は国交正常化以降最悪という評価が出ている。現在の韓日関係をどのように評価するか。

 「最悪というのは誇張ではない。ただし、『最も深刻』と表現すべきだろう。金大中(キム・デジュン)拉致事件当時も、1965年以来の日韓条約体制そのものが問われることはなかった。慰安婦問題も深刻化したが、当初から請求権協定の枠外にあった。しかし、徴用工問題では基本条約や請求権協定の解釈が問われている。しかも、安倍政権にとっては、朴政権との慰安婦合意を反故にされたことがトラウマになっている。そのために、対韓輸出管理の厳格化という異例の強硬手段に出たのだろう」

-現金化が実現すれば、韓日関係はどの段階に移行すると思うか。

 「韓国政府は『三権分立』を掲げて、行政府の不介入を正当化してきたが、日本政府は韓国の司法府と行政府が連携して、日韓請求権協定を骨抜きにすることを警戒している。現金化が実行されれば、三権間の『チェック・アンド・バランス』が機能停止して、『国際法違反』の状態が出現したと考えるだろう。『65年体制』の中心部分が壊滅するのだから、大使召還を含めて、あらゆる対抗手段が想定される。韓国側も対抗措置を取り、それこそ、日韓関係は『最悪』の状態に移行するだろう」

-輸出管理の厳格化と徴用工問題の同時解決が可能だ思うか。

 「二つの問題が政治的にリンケージされているので、それ以外の方法はさらに難しい。韓国側が日本企業に被害を与えない形で徴用工問題を処理すれば、日本側も対韓輸出管理を緩和できるだろう。そうなれば、様々な分野での協力が再開する。昨年12月の中国・成都での安倍首相との会談で、文在寅大統領は本質をめぐって論争するよりも、解決方法を探すことが重要だと語った。正しいアプローチだ。米国で開催されるG7会合やソウルでの日中韓サミットの機会に、二人でそれを具体化してほしい。いまこそ、知恵を絞るべきときだ」

ー韓日が合意して財団を作り、被害者を包括的に救済しなければならないという提案もある。この問題に対する望ましい解決策はあるか。

 「日韓双方が自らの問題を処理しなければいけない。徴用工問題で日本政府が受け入れられないのは、日本企業が法律的に資金提供を強制される事態である。韓国政府や企業が財団を組織し、日本企業や国民が人道的救済の観点からそれに自発的に協力することは妨げない。しかし、日本企業に損害を与えないためには、裁判所の命令によって現金化される株券を韓国政府が買い取って返却するなど、一時的な『立替払い』が必要になる。それが最も現実的な解決方法だろう。

-韓国と日本は対北朝鮮政策、そして対中国政策に対する観点で根本的な相違があり、これからも金大中・小渕宣言当時のような協力基調を回復するのは難しいだろうという見方もある。

 「そのように固定的に考える必要はない。金大中・小渕宣言は冷戦終結後の国際協調や歴史和解の潮流を反映していた。朴槿恵(パク・クネ)や文在寅政権の対日外交は中国の大国化という東アジアの構造変動を反映している。しかし、そのような情勢も再び急速に変化しつつある。大国化しすぎた中国と米国の間の体制競争が拡大しつつあるからだ。米国が過去の対中関与政策の失敗を明確に認めて、半導体や情報産業に見られるように、技術や市場の米中デカップリング(分断)政策を強化すれば、日本と韓国は相互に協力せざるを得なくなるだろう。ミドルパワーとしての戦略共有こそ、日韓が進むべき道だ」

-これからの南北関係と朝米関係をどのように見通すか。

 「シンガポールとハノイで、トランプ大統領と金正恩委員長は完全な非核化と北朝鮮の体制保証を交換しようとした。韓国にとって、それは平和体制構築のための絶好の機会であった。しかし、最近の金与正(キム・ヨジョン)第一副部長の複数の談話に明らかなように、北朝鮮はそれらの交渉が成功したとは考えていない。事実、トランプ大統領の交渉意欲は大統領選挙後にも持続するだろうか。バイデン大統領は積極的な関与政策を支持するだろうか。米朝関係に進展がなければ、北朝鮮は南への依存を危険視するだろう。米大統領選挙の結果にかかわらず、米朝・南北間の「機会の窓」は閉じつつあるように思う」

-韓国政府と日本政府に言いたい提言はあるか。

 「現在、日本と韓国は多くの基本的な外交目標や利益を共有している。しかし、隣国を併合するという20世紀前半の異常で不適切な歴史の記憶が、相変わらず日韓関係を引き裂いている。韓国の友人たちは歴史認識を共有しなければ外交戦略を共有することはできないと主張する。しかし、それは逆である。日韓の長期的な『戦略共有』がやがて相互の信頼を醸成して『認識共有』を可能にするだろう。だから、両国政府は一世代後の国民のために『戦略共有』の努力を怠ってはいけない」

チョ・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/957763.html韓国語原文入力: 2020-08-14 04:59

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