米政府が、崔竜海(チェ・リョンヘ)労働党中央委員会副委員長ら北朝鮮政権の中心人物3人を人権蹂躙の責任者に挙げ、制裁対象に指定した。朝米対話が膠着した状況で行われた米国の対北朝鮮制裁が、双方の交渉にどのような影響を及ぼすのかが注目される。
米財務省は10日(現地時間)、「北朝鮮政権の持続的かつ深刻な人権侵害と検閲に対応し、3人を制裁対象に指定した」と発表した。対象者は崔竜海副委員長兼組職指導部長やチョン・ギョンテク国家保衛相、パク・グァンホ労働党副委員長兼宣伝扇動部長だ。
財務部は崔副委員長について、「党・政・軍を指揮する“ナンバー2(Number Two)”とみられる」とし、彼が首長を務める組織指導部を検閲政策を履行する強力な機構と説明した。
財務部はチョン国家保衛相については「国家保衛省が履行する検閲活動と人権蹂躙を指示する役割を担っている」と説明した。また、パク副委員長については、思想の純粋性の維持や総括的な検閲活動、抑圧的な情報統制、人民教化などの役割を果たす宣伝煽動部を率いていると説明した。
スティーブン・ムニューシン財務長官は「財務省は北朝鮮住民を抑圧し統制するために残忍な検閲や人権侵害と蹂躙を犯す部署を指揮する高官らを制裁している」とし、「今回の制裁は表現の自由に対する持続的な支持、そして検閲と人権侵害に対する反対を示している」と述べた。
特に、財務省は、今回の制裁が2016年に北朝鮮に抑留され、帰還後に死亡した米大学生オットー・ワームビア氏に対する北朝鮮の残忍な待遇を想起させると明らかにした。
今回の制裁は国務省の「北朝鮮の深刻な人権蹂躙と検閲に関する報告書」の発表に合わせて行われた。国務省は同報告書を連邦議会に提出した。2016年2月に施行された対北朝鮮制裁強化法(H.R.757)は、国務長官が北朝鮮の人権蹂躙と内部検閲に責任ある北朝鮮関係者と具体的な行為を把握し、180日ごとに議会に報告するよう定めている。今回の報告書は、昨年10月末の3回目の報告書以来、約1年2カ月ぶりに提出された。
米国が人権蹂躙を問題視して北朝鮮関係者を制裁したのは、今回が4回目だ。米国は2016年7月、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長をはじめとする個人15人と機関8カ所をはじめ、昨年1月には金委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長を、同年10月にはチョン・ヨンス労働相らを制裁対象リストに加えた。これで、米国の北朝鮮人権関連制裁対象は個人32人、機関13カ所に増えた。米国の制裁対象になると、米国内の資産が凍結され、米国人や米国企業と取引できない。しかし、朝米交流がないため、実質的で直接的な制裁効果よりも、象徴的な意味を帯びる。
今回の制裁は定例報告を義務づけた法手続きに則り、「世界人権の日」に合わせて行われた。しかし、朝米が非核化と朝鮮半島の平和に向けた対話努力が膠着状況に陥った中で出た措置である点で、その背景と影響に関心が集まっている。北朝鮮の非核化行動前までは、対北朝鮮制裁が堅固に持続することを強調し、北朝鮮を対話テーブルに誘引しようとする意図があるものと見られる。しかし、米政府が故オットー・ワームビア氏の死亡について言及し、「人権」を理由に崔竜海副委員長ら要人らを制裁したため、北朝鮮がどのような反応を示すかが注目される。
一部では、米政府が北朝鮮の人権状況を強調する議会などの圧迫を意識し、検閲関連機構の責任者の実名を制裁対象に加えたという分析もある。