朝米対話が突破口を見出せない状況で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とドナルド・トランプ米大統領の“親書外交”が再稼動された。危機の度に両指導者を結びつけてきた親書が、再び膠着状況を突破する起爆剤になるかに注目が集まっている。
トランプ大統領が7日(現地時間)、専用機で記者団に「金委員長の手紙が昨日、国境で渡された」と述べたことから、親書は板門店(パンムンジョム)で朝米間ラインを通じて伝達されたものと推定される。6日(韓国時間7日)、板門店で戦死者の遺骨の追加発掘問題を話し合うために開かれた朝米将官級会談で手渡された可能性もある。ただし、インド・パキスタン歴訪を終えて7日、米国に復帰したマイク・ポンペオ国務長官が親書をどこでどのように受け取り、持ち帰ったかは定かではない。米国務省のある関係者は8日、金委員長がトランプ大統領に送った親書をポンペオ長官が受け取ったと、CNNなどに確認した。
トランプ大統領は金委員長の親書について、「肯定的な手紙だと思う」という期待感と共に金委員長に対する親密感を示すのも忘れなかった。彼は「我々は(平和)プロセスを始めなければならない」とし、「北朝鮮とは大荒れの状態から始まったが、人質たち(北朝鮮に抑留された米国人)が帰還しており、私が100回は繰り返したように、ミサイルやロケット、核の実験がなかった」と述べた。また、「金委員長が(文在寅大統領の対北朝鮮特使団に)『私はトランプ大統領を尊敬する。トランプ大統領の(1期目の)任期内に取引(ディール)をして非核化を成し遂げたい』と話した」とし、「(これから)何が起こるか見てみよう」と述べた。金委員長の非核化の意志をひとまず肯定的に評価し、対話を続ける意向を示したものと見られる。
金委員長の親書の伝達は、先月24日にポンペオ長官の訪朝中止など、朝米間の非核化や終戦宣言交渉が停滞に陥った状況で、文大統領の特使団が5日に平壌(ピョンヤン)を訪問したことによって、対話のムードが作られている中で行われたものだ。金委員長は特使団に伝えたように、今回の親書でもトランプ大統領に対する「変わらぬ信頼」と、「トランプ大統領の(1期目の)任期内の非核化」への意志を強調したものとみられる。さらに、非核化や朝米関係正常化のロードマップなどを議論するための2回目の朝米首脳会談を提案し、ポンペオ長官の4度目の訪朝を再推進することを要請した可能性もある。
トランプ大統領と金委員長の間の親書は、これまで双方の内部の悲観・強硬論や対話の膠着を乗り越える「トップダウン」(上から下への)外交手段として作動してきた。今回を含め、金委員長はトランプ大統領宛にこれまで4通の親書を送ってきた。今年5月24日にトランプ大統領が6・12シンガポール朝米首脳会談の取り消しを発表した後、金委員長は6月1日に金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長兼統一戦線部長をホワイトハウスに派遣し、親書を送った。これは首脳会談を復活させる契機となった。7月のポンペオ長官の三度目の訪朝の際も、金委員長はポンペオ長官と直接協議する代わりに、トランプ大統領宛の親書を渡した。先月初め、朝鮮戦争で戦死した米軍人の遺骨を送還する際も、金委員長は親書を送った。トランプ大統領はその度に(親書伝達の)事実を公開し、金委員長に謝意を表した。