日本の安倍晋三内閣の支持率が、2012年末のスタート以来最低値に落ちた。閣僚の失言と右翼的政策の強行で批判に包まれ失脚した安倍1次内閣の危機が繰り返されるのだろうか。
読売新聞は今月7~9日に1088人を対象にした世論調査で、安倍内閣の支持率が36%となり、安倍2次内閣がスタートした2012年12月以来の最低値を記録したと10日報道した。先月17~18日の調査値より支持率が13%p急落した。朝日新聞が10日に実施した世論調査でも、安倍内閣の支持率は33%でやはり2次内閣スタート以来の最低であった。
最近まで鉄壁と見られていた安倍内閣の急な危機は、安倍首相が自身と近い人々に特典を与えた疑惑が濃厚な学園スキャンダル、閣僚の相次ぐ妄言と失言、共謀罪強行処理のような右派的政策の強行が複合的に作用した結果だ。安倍1次内閣が、2006年から2007年の1年間を満たせずに失脚した時と、多くの面で似ているように見える。
第一に、閣僚の失言と醜聞が相次いだ。1次内閣時の2007年、柳沢伯夫・当時厚生労働相は女性を「子どもを産む機械」と発言して波紋を起こした。松岡利勝・当時農林水産相は、政治資金不正疑惑で野党の追及を受け自殺した。最近の安倍内閣でも今村雅弘復興相が、2011年の東日本大震災が起きた場所が「東北で良かった」と発言して辞退した。稲田朋美防衛相は、選挙で自衛隊を政治的に利用する発言をして激しい批判を受けた。
第二に、右翼理念中心の政策に対する世論の反発だ。安倍首相は1次内閣の時、愛国心教育を強調することを骨格とする教育基本法改定、改憲のための国民投票法制定など「戦後体制からの脱却」に注力した。安倍首相の右翼的指向は昔も今もそのままだが、2次内閣スタート初期には理念的政策よりは「アベノミクス」に代表される経済政策に集中する姿を見せた。昨年の参議院選挙でも安倍首相は主に経済政策を強調した選挙戦を繰り広げた。だが、選挙で圧勝した以後、安倍首相は共謀罪法強行通過、2020年東京オリンピックまでに平和憲法改憲推進のような理念的性格が強い政策を集中的に推進し、逆風を迎えている。
だが、現在安倍内閣は1次内閣に比べて有利な政治的環境を享受している。現在の支持率36%は2007年辞任直前の29%よりは相当高い(読売調査基準)。決定的な違いは「代案の不在」だ。2007年9月の安倍首相辞任直前、NHKの調査では当時第一野党の民主党の支持率は24.5%で、自民党(27.4%)と大差なかった。だが、現在民主党を引き継いだ民進党の支持率は10%にもならず、自民党の代案にはならない。
小池百合子・東京都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が、東京都議会議員選挙で自民党批判票を吸収し圧勝したが、小池知事の中央政治進出が成功するか否かは未だ不透明だ。また右派的指向の小池知事が中央政治に復帰しても、安倍首相と連帯する可能性がある。また、小池知事が安倍を抜いて「ポスト安倍」になる状況が広がっても、右派政権の性格は変わらない可能性が高い。