米国のドナルド・トランプ政権が、激しさを増しているTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備に対する中国の報復には手を拱いたまま、韓国を矢面に立たせてTHAAD配備の加速化に乗り出している。
米政府が中国の対韓国報復処置と関連して公式立場を示したのは、今月2日、ハンギョレの要請に国務省報道官室の関係者が「(中国が)自衛的な防御処置を放棄するように韓国に圧力を加えたり、批判するのは不合理であり不適切だ」と述べたのが初めてだ。
中国の報復が可視化して以降、米政府の実名を明記した公式声明すらなかった。THAAD配備を「韓米の共同決定」と強調しながらも、中国との関係を意識して「ローキー」(low-key:低いレベルの対応)で行くことを意味するものと言える。
さらに、ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は6日(現地時間)、非公開の記者会見で「THAADの韓国配備と関連した中国の報復に対する米国の立場は」という記者の質問に、状況をよく把握できなかったのか「何に対する報復ですか?」と聞き返した。質問した人が「THAAD部隊に対する報復」と再度確認しても、「THAAD部隊ですって?」と、質問の趣旨を全く理解していない様子だった。結局、スパイサー報道官は「北朝鮮のミサイル発射は我々の友人である韓国を危険に陥れる」とし、「この問題を解決するため、韓国政府と協力していく」と全く無関係な答弁をした。THAAD配備と関連した韓国に対する中国の報復措置について、ドナルド・トランプ政権がどれほど無関心なのかを示す場面だった。
トランプ政権は、バラク・オバマ政権よりも頑なにTHAAD配備にこだわってきた。東北アジアで米中間の戦略的競争の手段としてTHAADを活用しようとする意図が、オバマ政府よりも強いからだ。また、朴槿恵(パク・クネ)政権の積極的なTHAAD誘致とともに、朝鮮半島周辺の緊張を高める北朝鮮の行為などが、その口実を提供してきた。米国政府の外交関係者たちは「THAADは韓米同盟の試金石」という言葉を繰り返してきた。“THAADを導入するか否か”が韓米同盟の基準という点を強調することで、韓国で進歩政権が誕生してもTHAAD配備は白紙化できないことを明確にしようとしたのだ。むしろTHAADの追加配備の話まで取りざたされた。
しかし、北朝鮮のミサイル防衛の概念を超えて、米中間の戦略的問題の側面が大きいTHAADをめぐって、責任ある対応ができない朴槿恵政権を矢面に立たせて米国がTHAAD配備を加速化するのは、度が過ぎる“私利私欲の追求”との批判の声も上がっている。THAAD問題によって、次期韓国政府との関係も最初からぎくしゃくする可能性がある。