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[インタビュー]「慰安婦被害者の心踏みにじる韓日友好は望まない」

登録:2017-02-20 04:56 修正:2017-02-20 07:19
在日同胞2世の金富子(キム・プジャ)東京外国語大学教授
金富子・東京外国語大学教授=東京/キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社

 昨年末、釜山(プサン)に設置された平和の少女像問題を在日同胞社会はどう見ているだろうか。日本軍「慰安婦」問題解決に向け、日本でさまざまな学問的・実践的活動をしてきた金富子(キム・プジャ)東京外国語大学教授(58)は今月11日、東京神保町のある喫茶店で記者と会ってこのように語った。「同胞社会内部にこの問題に対する様々な立場がありますが、民団と韓国大使館が韓日友好を希望する同胞たちの心を利用しています。私たちが差別されているからといって、被害者の女性たちが望んでいない解決を受け入れろと言うわけにはいかないでしょう」

「釜山少女像の撤去を同胞は望んでいる」という、 
民団団長発言に先月抗議文  
「撤去に同意しない同胞が大勢いる 
被害者が望まない解決を強要してはならない」 
 
1990年以降「慰安婦」問題解決のために活動 
若年層への正確な情報提供に尽力

 釜山少女像問題をめぐって在日同胞社会に大きな騒動が起きたのは先月12日、呉公太(オ・ゴンテ)在日本大韓民国民団(以下、民団)団長が民団中央新年会で「(少女像を)なくすべきと言うのが、私たち在日同胞たちの共通した切実な思い」と発言してからだった。

 「呉団長の発言を聞いてとても驚きました。私たちが最も驚いたのは『共通した切実な思い』という部分でした。同胞社会にもこの問題をめぐって様々な意見があります。撤去がいいという意見もあるかもしれないが、撤去してはならないという意見も多いです。だから、撤去を同胞の共通した意見だと断言してはいけません。民団が同胞たちを対象にアンケート調査をしたという話を聞いたこともないし、慰安婦問題の解決に向けて特別に活動をしたこともありません。この問題については何か言う資格も、代表性もないのです」

 民団の発言が出ると、日本のマスコミは「少女像撤去」が、同胞全体の意見を代弁するかのように、大々的な報道を続けた。金教授は発言直後、この発言に批判的見解を持った同胞たちとともに先月18日、民団本部と大使館に「抗議文」を送った。3日間にわたり賛成する人を募っただけなのに、100人を超える同胞が意を共にした。

 在日同胞2世の金教授が慰安婦運動に参加することになったきっかけは、1990年12月にさかのぼる。「その時ユン・ジョンオク挺身隊問題対策協議会(挺対協)共同代表(当時)が日本で講演をしました。『韓国の慰安婦被害者たちがなぜ故郷に帰ることができないのか。そこに韓国の家父長制の問題がある』とおっしゃいました。慰安婦問題についてもう一度考えてみるようになりました。それから、被害者と会って植民地朝鮮の女性史を研究するため大学院に入りました。慰安婦問題が私の人生を変えたわけです」

 講演後、金教授など同胞女性4人は、ユン元共同代表が1990年「ハンギョレ」に4回にわたり連載して話題になった慰安婦関連の企画記事を翻訳して「私たちは忘れない 朝鮮人従軍慰安婦―在日同胞女性からみた従軍慰安婦問題」という冊子を製作した。以降、『朝鮮人女性がみた「慰安婦問題」―明日をともに創るために 』(1992)という本も出版した。このような過程で「従軍慰安婦ウリヨソン(われわれ女性)ネットワーク」(女性ネット)という名前の同胞女性会が結成された。在日同胞社会は南北に分かれていたため、これを包括するために「ウリヨソン」という表現を使ったのだ。

 この頃、慰安婦問題に対する同胞社会の関心と熱気は非常に上がっていた。自分が慰安婦だったことを初めて公開した金学順(キム・ハクスン)ハルモニ(おばあさん)が1991年12月に東京で証言集会を開いた際は、150人で満員になる東京の韓国YMCA9階の講堂に450人が詰めかけた。

 金教授は1998年に元朝日新聞記者の故・松井やより氏、「『戦争と女性への暴力』リサーチ・アクションセンター」(VAWW RAC)の西野 瑠美子共同代表らとともに「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW― NETジャパン)を作った。この会が主体となって2000年に開いたのが「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」だった。VAWW― NETジャパンは2011年に現在の「VAWW RAC」体制に発展した。

 現在最も多く力を入れている活動は、日本社会に慰安婦制度と関連された正確な情報を提供することだ。「大学で教えてみると、インターネットの影響が大きいと感じます。学生たちが提出した質問紙を見ると、『慰安婦は捏造だ。売春婦だった。商行為だった』という内容が記されています」。このため、2013年8月、若者がインターネット上で慰安婦問題に対する正確な情報を検索できるように「ファイト・フォー・ジャスティス」(fightforjustice.info)という名前のサイトを作った。中央大学の吉見義明教授など、慰安婦問題の専門家たちが明確な史料による根拠を通じてさまざまな争点をわかりやすく説明している。韓国語、英語、中国語でも資料を読むことができる。

 彼女が再び強調したのは慰安婦問題の正しい解決だ。「慰安婦問題の解決のためには、謝罪と賠償が必要です。安倍首相は今まで一度も自分の言語で、公共の場で謝罪したことがありません。また、日本政府は10億円は『賠償ではない』とするが、賠償としてに被害者らに支払われなければなりません」。また「(慰安婦制度は日本の国家犯罪だったという)事実認定と記憶の継承のため、教科書に慰安婦問題を記述しなければならない」と話した。

 最後に彼女が強調したのは日韓の友好だったが、呉団長が主張する友好とは意味合いが大きく異なっていた。「日本には被害国である韓国国内に設置された記念施設の撤去を要求する権利がありません。むしろ少女像は日本に作らなければなりません。同胞らはもちろ韓日の友好を望んでいます。しかし、被害者の心を踏みにじってまで友好を求めたいわけではありません。この点を特に強調したいですね」

東京/キル・ユンヒョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/783276.html 韓国語原文入力:2017-02-19 19:02
訳H.J(2701字)

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